テレビのリモート出演に学ぶオンライン会議での視覚効果

テレビのリモート出演に学ぶオンライン会議での視覚効果

オンライン会議で気をつけたいこととは?

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、テレビのリモート出演から学ぶ、オンライン会議やオンライン飲みの際の注意点について。

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 すっかり見慣れた感が出てきた、テレビ番組でのタレントやコメンテーターのリモート出演。最初の頃は違和感ばかりだったが、それもずいぶん解消されてきた。番組によっては、違和感どころか生出演しているのかと思うほど自然なところもあるが、まだ不自然さが残るケースもある。オンライン会議などを利用するとき、その不自然さをどう解消すればいいのか考えてみたいと思う。

 自然に見えるのは、もっぱらテレビ局の別室などを使ってリモート出演や収録をしている場合だ。やはりプロは違う。画面がクリアで、背景はセットにマッチ、モニターに映し出される出演者のサイズも妥当、スタジオにいる出演者とほとんど変わらず並んでいる。ところが、自宅からのリモート出演となるとこうはいかない。

 気になるのは「リップシンク」だ。リップシンクとは、映像やアニメで登場人物の口の動きにセリフを合わせることをいう。心理学でいうなら「音声口形マッチング」。このリップシンクがうまくいかないと、映像では口が動いているのに音声が少し遅れてくるため、コメントが長くなればなるほどその不一致がストレスになりやすい。通信環境のいい場所へ移動できればいいのだが、自宅ではそうもいかない。この不一致で相手をイライラさせそうなら、逆にマスクで口元を隠してしまうという方法もある。オンライン会議の場合、それが許されるならばだが。

 モニターに映る顔の大きさの違いもある。バラバラだとこれがけっこう気になってくる。これまでは並んで座る出演者の顔はもともとの大小の違いこそあれ、相対するサイズは同じで遠近感は変わらなかった。だが2人、3人とリモート出演の映像が並んで映し出されると、微妙な違いがストレスになってくる。遠近感が違うため焦点が合っているようで合わないような奇妙な感覚になり、見づらいのだ。

 大きく映し出されている人は、タレントやお笑い芸人より、コメンテーターに多い。大きい分だけ他の人より圧が強く、普段よりコメントのインパクトも強くなっているような印象だ。また日本人は欧米人と比較して、周りの人々の表情や反応を加味してその人のコメントや話を判断する傾向があるため、なんだかキャラが変わってる?という感じがする場合もある。また、視線の動きはスタジオ出演時よりはっきりとわかるため、目線がカメラから離れてあちこちへ動いたりするのが目についてしまう。

 さらに、カメラに近すぎてスマホの自撮りと同じで、顔の中心、鼻が大きく映っている出演者もいる。本人は気がついていないのだろうが、表情がうまく伝わらないし顔も違って見えてくる。ある研究ではスマホの自撮りだと、鼻が30%も大きく映ってしまうという報告もあるほどだ。オンライン会議やオンライン飲み会でも、同様のことが起こりやすい。カメラに近づきすぎると、顔が普段と違って見えてしまう。

 また、リモートだと細かな表情をリアルに捉えることは難しいが、それでも視線の動きは読み取れる。相手に向いていることを示すために、話すときはなるべくカメラ目線にすることだ。カメラからどれくらいの距離感が自然に映るのか、相手とお互いに試してみるといいだろう。

 カメラの位置と照明の関係もある。例えば、上から覗き込んでいるような映像になっている出演者がいる。これはいつもの習慣のままパソコンに向かっているからだ。そのため自然と顔が下を向いてしまう。加えて部屋の明かりだけに頼ると映像が全体的に暗く、上からの光が弱いため顔色が悪く見える。これを自然に見せるためには、パソコンやスマホを置く位置をいつもより高めに設定するのも一つだ。実際スタジオのテレビカメラは、出演者の顔より高い位置から撮影されている。

 背景にも気をつけたい。リモート出演では本棚を背景にしている人も多いが、視覚情報が多くなって映像としての見やすさは薄れてくる。まして日本人は欧米人に比べて、その人物のみに注目するより背景からくる情報に注意を向けやすい傾向があるという研究結果がある。自宅の部屋のディテールがそのまま背景に映し出されると、想像している以上にいらない情報が相手に伝わる可能性があるということを覚えておきたい。

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