客引きを使って闇営業する居酒屋「プチぼったくり」の構図

【新型コロナウイルス】自粛のふりをし闇営業 高額な請求をするプチぼったくり店も

記事まとめ

  • ほとんどの店が夜の営業をとりやめる中、自粛のふりをし闇営業を続ける居酒屋も
  • キャッチに客を誘導させ、相場より高額な請求をしてくるという
  • 刺身が数切れで1500円など、目玉が出るほど高額ではない"プチぼったくり店"だという

客引きを使って闇営業する居酒屋「プチぼったくり」の構図

客引きを使って闇営業する居酒屋「プチぼったくり」の構図

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 新型コロナウイルスの感染拡大リスクが高いと言われる密閉空間、密集場所、密接場面、いわゆる「3密」を避けるために、夜の飲食店やナイトクラブ、パブの営業を控えるように各自治体が求めるようになって、1ヶ月以上が経った。ほとんどの店が夜の営業をとりやめるなか、看板も出さず照明も落として自粛のふりをし、キャッチに客を誘導させて相場より高額な請求をして闇営業を続ける確信犯の店がある。ライターの森鷹久氏が、確信犯的に闇営業をする居酒屋についてレポートする。

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 政府は5月4日、当初6日までとしていた「緊急事態宣言」を、5月いっぱいまで延長すると発表した。営業自粛を続けてきた自営業者などからは「すでに限界を超えている」という声が聞こえる一方、段階的に自粛要請を減らしていくなどと「基本対処方針」に示されており、残り一ヶ月をなんとか乗り切ろうといった前向きな声も聞こえ始めた。

 4月、筆者は自治体による自粛営業が続く中で「闇営業」せざるを得ない事業者の声を紹介した。あれから半月経ったが、実はほとんどの店がGW中は休んだり、営業していても少なくとも夜7時には店を閉めるなどしている。休業補償についてある程度目処が立ったり、金融機関からのつなぎ融資が決定したりといった理由があるようだが、それでもまだ、闇営業を続けている店は存在する。

 5月上旬、連休中にもかかわらず人通りもまばらな千葉県某市の繁華街に、いわゆる「キャッチ」と呼ばれる違法な客引きの姿があった。管轄の警察関係者が言う。

「休みに入り、ほとんどの店は営業を自粛したり、かなり時間を限定した営業を行なっていますが、中には昼間から深夜までフルオープンしている店がある。キャッチはそうした店に雇われていたり、店と契約している人間です。ほとんどの店は“ぼったくり店”と見られており、普段から目をつけられているような連中。どんなに注意しても営業もキャッチもやめることはない」(警察関係者)

 筆者がそばを通ると、キャッチが飛びつかんばかりの勢いでやってきて「1000円で2時間飲み放題」「うちは何時までも飲める」などといった誘い文句を矢つぎ早にまくし立ててきた。キャッチは「何人呼び込んでいくら」の完全歩合制であることが多く、客を一人も呼び込めなければ、報酬はゼロ。そもそも人が少ない中で、通る人全員に声をかけ食い下がっているのだ。

 キャッチが案内してきた店から出てきた、中年男性と若い派手な身なりの女性が、筆者の問いかけに応じる。

「ひどいぼったくりの店。ビールはほとんど炭酸水だし、刺身なんか数切れ皿にのったのが出てきて1500円。キャッチも一生懸命だったし、サービスもよかったけど。あれじゃ平時には誰も行かないね、今日は仕方なく行ったけど」(男性)

「今日は働いているお店(キャバクラ)の同伴出勤の前に、ご飯を食べていました。お店は自粛せず営業していますけど、コロナが怖いっていう女の子は休んでます。私は仕事がなくなったら明日食べるものもないから……。私も、この居酒屋も同じですよ」(若い女性)

 付近の商店街関係者によれば、こうした営業を続けている店は外看板も室内の電気までも消して、客は全てキャッチが連れてくるのだと言う。そして、ほとんどの店が質の劣る商品を通常より高いが、目玉が出るほど高額にはならない程度の割高で出す「プチぼったくり店」であることも明かした。

 同じくGW真っ只中の5月上旬、東京・錦糸町駅にほど近い飲食店も、やはり「キャッチ」を使った闇営業を行なっていた。店の関係者がそっと打ち明ける。

「正直コロナは怖いし、休業補償もある程度出るということで店は休みたい。この時期に店を開けていても、1日の売り上げが2千円の日もあるから、営業すればするほど赤字」(店の関係者)

 実はこの店、以前筆者が取材した際に、近隣店舗が「ぼったくり店」と名指しした悪名高き店で、背後には暴力団の存在もちらつく。周辺の同業者とも付き合いは一切なく、キャッチが一見客を捕まえてくることで成り立っていたのだ。同関係者に、そうした事情を踏まえた上で改めて問いなおすと……。

「そうなんですよ……ウチは上がうるさいんで……。休業補償ももらいたいから、表向きは休業しているように見せかけ、客はキャッチが引いてくる人だけ、店の前に来たら扉をこっそり開けるんです。何度か“休みたい”と行ったんですけど、それなら賠償金を払えと凄まれる。まともじゃない世界でやってきたという自覚はあるので、こういう時だけ人様と同じように休んで補償金が欲しいなんて、あんまり言いたくはないんですけどね。もうこれ以上喋れないんで、すいません」(店の関係者)

 一般人にも、そして反社勢力にも平等に押し寄せるコロナ禍の波。止むに止まれずの「闇営業」ではあるものの、後者に関して言えば、自身の生活のために、というよりは組織のために、といったところか。こうした緊急事態下でも「飲みに行く」人をターゲットに据えるのは、薬物の売人が薬物中毒者を常に探し続けているのと同様、古くはアメリカに「禁酒法」があった時代にも、同じような出来事が起きたと聞く。やはり人間は変わらない、そうした現実をコロナ禍が炙り出してゆくのだ。

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