緊急事態解除には「無作為1万人抗体検査で実態把握を」提言

緊急事態解除には「無作為1万人抗体検査で実態把握を」提言

宣言中は人手が激減(時事通信フォト)

 5月31日まで延長された緊急事態宣言。安倍晋三首相は14日を目途に解除可否の基準を示すとしたものの、遅きに失した感は否めない。

 論理的かつ具体的な“ゴール”が示されなければ、国民は疲弊するばかりだ。国が適切な“出口戦略”を示すのが遅れたために、吉村洋文・大阪府知事のように“独自の解除基準(大阪モデル)”を示す自治体も出た。それを受けて大慌てで安倍首相が基準の公表に言及したのも、国民が「ゴールの明示」を強く求めていることを痛感したからだろう。

 吉村府知事は「新規の感染経路不明者数10人未満(直近7日間の平均値)」「陽性率7%未満(直近7日間の平均値)」「重症者病床の使用率60%未満」の3つの基準を7日連続で満たせば段階的に解除としたが、各分野の専門家はどんな条件が適当と考えるのか。

 現在発表されている感染者数は一部に過ぎず、実際はもっと多くの人が感染している可能性もある。

 PCR検査で陽性反応が出た人以外にも、感染したが無症状・軽症のまま日常生活を送っている人が存在し、そうした人は「公表された感染者数に含まれない」ことに注意が必要だ。そのため、検査の「母数」を条件に挙げる意見もある。

 慶應大病院が“新型コロナ以外の患者”にPCR検査を行なったところ、5.97%が陽性だったとする結果も出ており、感染は水面下で拡大していることを示唆している。

 無自覚の感染者の把握に有効と考えられているのが「抗体検査」だ。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が言う。

「PCR検査は『いま感染している人』を割り出しますが、現在の体制では無自覚の感染者は検査対象になりづらいうえ、PCR検査数を増やすにも限界があります。

 一方、抗体検査は血液を採取して、検査キットに垂らすと約15分で結果が出るため、無症状の人も含めた多くの国民に実施しやすい。イギリスでは2万世帯に抗体検査を実施し、今後30万世帯まで増やす目標を発表しました。PCR検査だけでは分からない“実際の感染者数”を調べるために、少なくとも東京や大阪などの感染者が多い都市ごとに、無作為に抽出した1万人を対象に抗体検査を実施すべきです」

 注意が必要なのは、抗体検査は「精度」の検証が不十分だという点だ。日本感染症学会評議員で、グローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師(輸入感染症)が語る。

「感染していないのに陽性(感染した=抗体がある)の結果が出る『偽陽性』や、その逆の『偽陰性』が出る可能性があります。結果、“自分は抗体があるから大丈夫”と考えた人が感染を拡大させる恐れがあります。新型コロナに一度かかり抗体を持った人が、再び感染しないとも限りません。WHO(世界保健機関)も、感染者の再発に警鐘を鳴らしています」

 留意点を踏まえ、前出・上医師が指摘する。

「抗体検査の結果を受けて“陽性だったから自分はもう安心”と考えるのは早計ですが、抗体の有無を参考にして国民1人1人が行動を見直す指針にすることはできます。PCR検査に加えて、無作為の抗体検査で得られたデータを分析することは有益だと考えます」

※週刊ポスト2020年5月22・29日号

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