「闇営業」する居酒屋 「我慢できないのは客の方」の声も

「闇営業」する居酒屋 「我慢できないのは客の方」の声も

行きつけの店で遅くまで楽しめる日はまだ先

「闇営業」という言葉を聞くと、法で禁じられた何かを、法外な価格で販売する商いを思い浮かべるだろう。ところが最近「闇営業」を自称する人たちのなかには、法律で禁じられてもいなければ適正価格で商売している人たちもいる。ライターの森鷹久氏が、「闇営業」する居酒屋と、そこに集う客についてレポートする。

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 新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、各自治体が飲食店などに休業や営業時間の短縮を要請する中、様々な事情から「闇営業」をせざるを得ない人々について取材を続けてきた。当初は、本当にごく一部の店舗がひっそりと営業していたのが、緊急事態宣言延長が決定したゴールデンウィーク明けに“客の要望に応え”店を再開する、という事例が出始めている。

「休業協力金が50万円でることもあり、店は4月の中旬から閉めていました。ただ、5月に入った頃から常連のお客さんから問い合わせが相次ぐようになり、ゴールデンウィーク後半から、夕方から19時まで店を開けるようになると、お客さんが殺到するようになりました」

 声を潜め筆者に答えたのは、東京都内で焼き鳥店を経営する・田原ユウトさん(仮名・40代)。田原さんの場合、店を閉めて休業協力金がもらえれば、黒字は出ないが赤字も出なくて済むという事情から、緊急事態宣言が続く状況での店の再開は考えていなかったという。しかし……。

「お客さんから、飲みに行く場所がない、我慢の限界と……こちらとしては嬉しいお声なんですけどもたくさん頂くようになって。クレームがくることも予想されるので、おおっぴらにはしていませんが、現在は22時まで営業を続けています」(田原さん)

 店の常連客が続ける。

「あと一ヶ月、全く飲みに行けないとなると、我慢できないのは客の方でしょ。店は営業したいけどできない、客は飲みに行きたいけど行けない、それなら互いがこっそり結託してやればいいだけ。もちろん店に来る前は体温を測るし、消毒もするし3密にならないよう、お互いに気をつけている。来なきゃ店がなくなる可能性がある。このお店がなくなると困るからね、客も協力してやってるんだよ」(常連客)

 同じく東京都内で居酒屋4店舗を経営する橋本健一郎さん(仮名・50代)は、入ってくるはずの休業協力金100万円では大赤字、頭を抱えていたところに、常連客からの後押しがあり、店の再開を決めた。ただしこちらもいわゆる「闇営業」だという。

「店の再開は告知しておらず、常連のお客さんが口コミでやってきてくれる、という状況です。店も限界、お客さんも限界だったんです。再開してからは、通常時の6割程度の入りですが、協力金がもらえるのなら、なんとか潰れないで済む程度の赤字で済む計算です」(橋本さん)

 やはりこちらでも、店の再開を促したのは、店側でなく我慢の限界を超えた客だった。同店を訪れていた常連客が、コップ酒を片手に力説する。

「国も都も、店だって俺たちサラリーマンでさえまともに助ける気がないわけでしょう。だったら自助努力で乗り切るしかない。テレビなんかでやってる“自粛警察”に睨まれたら店も俺たちもたまんないから、こっそり店に入ってきて、騒がない。SNSにあげるなんてもってのほか。それで誰かに“チクリ”を入れられ休業金が出なくなったら、俺たちで寄付でもして店を続けてもらう。まるで“隠れキリシタン”だと笑っているけどね(笑)」(常連客)

 緊縮財政が続くわが国では「官がやらないのなら民でやる」などというキーワードが取りざたされることも増えてはいたが、後手後手の政府支援策に、そして自身の欲求に逆らえない人々が、自ら街に戻りだしている。感染者数は一見横ばいにも見えるが、第二波、第三波の襲来も予想される中で、もはや民を“お願い”だけで制限することにも、限界がきているのではないかと思わせる。

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