コロナ禍で進行する各種の依存症 違法薬物の流通増とも

違法薬物への依存がコロナ禍によって加速か 厚労省担当記者は「依存症」の兆候増とも

記事まとめ

  • タバコ、睡眠薬、精神安定剤、違法薬物への依存がコロナ禍によって加速しているという
  • コロナ禍の前後で「依存症」の兆候を示す患者の数が増加している、と厚労省担当記者
  • かつて薬物売買に関与した「半グレ」幹部は「明らかに増えて、薬物の単価も上昇」とも

コロナ禍で進行する各種の依存症 違法薬物の流通増とも

コロナ禍で進行する各種の依存症 違法薬物の流通増とも

外出自粛で住宅街では酒などの空き缶ゴミが通常の倍以上に増えた(時事通信フォト)

 緊急事態宣言の解除がすすめられ、毎日、報道される新型コロナウイルスの新規感染者数も減少している。そのことで、もうすぐ苦しい自粛生活から脱出できると考える人が多いだろうが、この疫病によって傷つけられた人々の心は、すぐに元通りとはいかないようだ。ライターの森鷹久氏が、タバコ、睡眠薬、精神安定剤、はては違法薬物への依存がコロナ禍によって加速している様子をレポートする。

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「テレワークが続き、ずっと自宅から出られないストレスから、結局またタバコを吸い始めてしまったんですよ。10年前に禁煙して、以降は一本も吸っていなかったのに……」

 苦笑いでこう打ち明けたのは、都内の大手テレビ局勤務のニュースディレクター・野原祐一郎さん(仮名・45才)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会社の喫煙所は多くが閉鎖され、それをきっかけに禁煙にチャレンジするという同僚が少なくない中、野原さんは逆戻り。4月中旬、コンビニでなんとなく手にとってしまったタバコは、今では1日半箱ほどを吸ってしまうという。

 都内の通信系企業に勤める堀川達也さん(仮名・30代)は、仕事のリモート化による家ごもりが一ヶ月以上続き、酒量は以前の三倍近くまで増えたと話す。

「仕事が終わった瞬間に缶チューハイを開けてしまう。仕事の時間と家の時間の線引きが曖昧なんで、酒を飲むと仕事が終わった、という気になるからでしょうか……。以前は、飲んでも500ミリリットル缶3〜4本だったのが、今では多い時で10本近く飲んでしまう。話し相手もおらず、寝るまでダラダラして。体調は明らかにおかしくなってきていますが、他にストレス解消の方法がない」(堀川さん)

「コロナのせい」といえば責任転嫁に聞こえるかもしれないが、コロナがきっかけで、再び「舞い戻ってしまった」という笑えない状況に追い込まれている人々がいる。都内在住の通信会社勤務の契約社員・伊藤百合奈さん(仮名・30代)は、二十代の頃に陥った睡眠薬依存が、コロナ禍を期に再発した。

「システムエンジニアをしていたのですが、3月ごろから契約社員が解雇されるという噂が飛び交い、4月からはリモートワークになりました。残業もなくなり収入は減るし、このまま職を失ったらどうしようと不安になって、眠れなくなったんです。ゴールデンウィーク前にかつて通っていた心療内科に行き、一週間分の処方箋を四日で飲んでしまいました」(伊藤さん)

 5月いっぱいは「リモート勤務」を命じられているが、それ以降も仕事があるかわからないという不安は日に日に増大化し、伊藤さんに重くのしかかる。そして薬の量も増え続けていると話す。

「多忙だと忘れてしまうのですが、ヒマができるとマイナスなことばかり考えて眠れなくなる。かつて睡眠薬依存になったのは、うまくいかない就職活動が原因でした。せっかく仕事も順調だったのに……。不安定な状態が続くようなら、向精神薬にも頼らざるを得ない。それは避けたいんですが」(伊藤さん)

 大手紙の厚労省担当記者は、都内の一部の病院ではコロナ禍の前後で「依存症」の兆候を示す患者の数が「目に見えて増えている」と話す。特に顕著なのは、再診の患者数だという。

「コロナに対する不安から、眠れない、気分が沈むという一般の方もいますが、もともと依存症にかかっていた人たちの回帰が、一部のクリニックで起きている。医師によれば、ほとんどは軽微な症状ではあるものの、かつて睡眠薬や向精神薬に依存していたような患者さんが、再び訪れてくるパターンが目立つといいます。仕事が減った不安を覚せい剤や大麻など、違法薬物を用いて処理しようとして検挙されたパターンも確認されています。常習者というわけではなく、何年もやめていたのに、です。アルコールの摂りすぎをやめられず、相談してくる患者もじわじわ増えている。全てがコロナのせい、とは断言はできませんが、遠因になっていることは確かです」(大手紙の厚労省担当記者)

 都内のメンタルクリニックに通院する神奈川県在住の自営業・シュウさん(40代・仮名)も、コロナ禍の影響で収入が激減。自宅でぼんやり過ごす日々が増えたところ「魔が差し」そうになることは、一度や二度ではない。

「不安でしょうがない、時間は有り余っているし自宅から出られないとなると、考えてしまうのはやはり薬物のこと。かつて覚せい剤とコカインを使用して捕まった経験があるんですが、もう10年以上、まったくやっていません。いわゆる『フラッシュバック』が起きたのは、今回が初めてです。以前は散歩に出なさい、趣味に没頭しなさいと先生に言われていたんですが、コロナでそれもできない。不安になって診てもらいにきたのです」(シュウさん)

 実際に「違法薬物」の流通量は増えているのか。かつて薬物売買に関与していた半グレグループ幹部・U氏が説明する。

「明らかに増えて、薬物の単価まで上がっています。末端価格が一グラム7000円だった大麻は、今は1万円でも買い手がつくほど。海外では、青空の下で大麻を吸ってパーティーをやったりしますが、日本における違法薬物の消費は、摘発から逃れるため家の中でこっそり行われます。薬物は思わぬ巣篭もり需要というわけです」(U氏)

 また、2000年代後半以降の違法薬物の流通は、大部分がネット上で行われてきた。ネット上で注文し、運んできた売人から購入したり、宅配便で届けてもらうパターンであるが、今脚光を浴びている飲食物などの「宅配システム」そのものだ。

「売人の数も足りなくなって、ネットを通じて運び屋が集められています。ウーバーイーツみたいに、飲食店の出前を装い、朝から晩まで堂々と薬を運びまくっている奴もいます」(U氏)

 我が国における新型コロナウイルス感染は、少なくとも一定の「押さえ込み段階」に入ったと見られてはいる。だが、コロナをきっかけに墜落してしまった人、再び泥沼に足を救われた人たちは、コロナ後の世界でどう生きてゆくのか。

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