小池都知事のアラート解除、コロナ収束“錯覚”させる危険性

小池都知事のアラート解除、コロナ収束“錯覚”させる危険性

「東京アラート」解除には疑問が残る(時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、「東京アラート」解除と都が公表する感染者数の信憑性について。

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 都民に感染拡大への警戒を呼びかける「東京アラート」が6月11日、あっさり解除された。アラート発令に合わせて赤くライトアップされていたレインボーブリッジと都庁舎も、解除に合わせて虹色に元通り。都が独自に定めた3つの発動基準(直近1週間の平均で、1日あたりの新規感染者20人未満、新規感染者に占める感染経路不明の割合が50%未満、週単位の感染者増加比1未満)と照らし合わせれば発動するのは遅かったが、解除するにはまだ早く、矛盾だらけだ。

 発動から解除まで9日間、少しは何らかの対策や変化があるのかと思ったが、変わったことは何もなかった。小池百合子都知事が都内事業者に示したロードマップは「ステップ2」のまま。やったことと言えば、「夜の街」関連の感染者増加を受け、都知事が新宿の夜の街を名指しし、東京都や区の職員や医師会の人たちによって歌舞伎町の見回りが行われたぐらいしか記憶にない。

 いったい何のためのアラートだったのか。いや、何のために設けられた発動基準だったのか?ここ数日の感染者数が落ち着き、医療体制が確保されているからというのが解除理由だが、「解除する方向で検討」という情報がメディアに流れた時は、基準の「週単位の感染者の増加比1未満」をわずかに上回っていた。

 東京都の感染者数は6月7日が14人、8日13人、9日12人、10日18人、11日が22人。公表された数値を見ていると、直近1週間の平均で1日あたりの感染者数20人未満という基準は確かに下回っている。小池都知事の「よく数値を見ながら分析したい」という発言を聞いていると、公表の数値は確かなものだと確信しているのだろう。

 しかし、そこに「真実性の錯覚」はないのだろうか。ふとそんな疑問を感じた。真実性の錯覚とは、同じような情報を繰り返し聞くことによって、それが間違っていようとも正しいと思い込むことを指す。こちらも、「公表される感染者数は本当に信用できるのか」と頭のどこかで思いながらも、発表される低い数値を毎日見ていると、いつの間にか正しい数値のような錯覚に陥り、コロナが本当に収束向かっているような気さえしてくるから不思議だ。1日も早く、日常を、経済活動を取り戻したいという願望もこの思い込みを後押しする。

 真実性の錯覚を裏打ちするような情報も出た。ソフトバンクグループが10日、グループの社員や医療従事者ら4万4066人を対象に行った新型コロナウイスルの抗体検査の結果を公表したのだ。陽性と出たのは191人、陽性率は0.43%。某新聞によると、これは東京都などで実施された検査結果と同じレベルで、国内における感染者の割合は低いことが示されたという。

 ところがだ。陽性者191人中PCR検査を受けていたのは42人いたが、そのうちの29人は陰性。抗体検査で陽性だったということは、既にコロナに感染していたことをほぼ意味する。191人もの人が無症状で感染していたことだけでも驚きなのに、PCR検査を受けていなかった人が149人もいたのだ。

 だが、これについて詳しく報じているメディアはほとんどない。東京都が公表している感染者数も、あくまでPCR検査で陽性と判定された人の数でしかないことを考えると、数字が示す信憑性は乏しい。

 コロナ「第2波」への警戒が叫ばれる中、東京アラートは解除され、それに伴い休業要請などの緩和も「ステップ2」から「ステップ3」へと進めるという。だが、世界中が「コロナ・ストレス」下にある今、楽観的な判断が人々の「錯覚」を助長しかねないことを、小池都知事は今一度自問するべきだろう。

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