駅中心に広がる「ビニール傘シェアリングサービス」の可能性

ビニール傘のシェアリングサービス「アイカサ」京急電鉄など鉄道と密接な関係

記事まとめ

  • 駅などを中心にサービスを拡大する傘シェアリングサービスについてレポート
  • ビニール傘のプラスチックは、ストローのプラスチック使用量の約200倍だという
  • 傘のシェアサービス「アイカサ」は京急電鉄、JR東日本、西武などで設置されている

駅中心に広がる「ビニール傘シェアリングサービス」の可能性

駅中心に広がる「ビニール傘シェアリングサービス」の可能性

西武鉄道本川越駅の自由通路に設置されたアイカサスポット

 いま、ここに●●があったら! と願うものの筆頭は、ではないだろうか。駅に着いたとたん、雨が降っていて途方に暮れたことのある人は多いだろう。そんなときに役立つ傘のシェアリングサービスが拡大している。ライターの小川裕夫氏が、駅を中心にサービスを拡大する傘シェアリングサービスについてレポートする。

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 コンビニやスーパーなど、買い物をした際にレジ袋は商品とともに無条件で渡されてきた。そうした当たり前の日常が変わり始めている。スターバックスや、バーミヤンやジョナサン、ガストなどのすかいらーくレストランツでは、お馴染みだったプラスチック製ストローが紙製へと切り替えられつつある。プラスチック製ストローも退潮傾向が鮮明になっている。

 ゴミ削減や環境意識の高まりを受け、政府は7月1日からレジ袋の有料化に踏み切る。有料化の開始前から、すでに有料化に着手している店も出てきている。

 近年、コンビニやスーパーなどで配られるレジ袋は海洋生分解性が意識され、また原材料もバイオマス素材に切り替えられている。そのため、決してレジ袋が非エコというわけではない。それでも、レジ袋の多くが使い捨てられているので、政府はゴミ減量化の観点から削減を呼びかけている。レジ袋の有料化は、そうした背景から始まろうとしている。

 プラスチック製ストローやレジ袋など、それぞれの削減効果は決して大きくない。微々たる効果しかないが、ひとつひとつを積み重ねることで環境改善の効果は大きくなる。

 プラスチック製ストロー、そしてレジ袋ときて、次なる削減課題としてビニール傘の使い捨てが問題視されるようになった。今般、100円ショップでも販売されているビニール傘は、安価であるがゆえに使い捨てされやすい。台風一過の翌朝、街のいたるところで散乱しているビニール傘を目にすることも珍しくない。

 いつの頃からか安価なビニール傘が出回り、本来だったら繰り返し使うはずの傘は使い捨てされるようになった。そこにはライフスタイルの変化や経済的な背景もある。しかし、傘の使い捨てはゴミ削減を目指す今般の社会情勢に反する。

「ビニール傘に使われるプラスチックは、ストローのプラスチック使用量の約200倍とも言われています。また、ビニール傘による年間CO2排出量はおよそ5万トンにも及びます」

 と話すのは、傘のシェアリングサービスを手がけるアイカサの広報担当者だ。アイカサは、スマホにダウンロードしたアプリから、24時間70円、1ヶ月使い放題は280円で傘を借り、返却する。自転車シェアリングサービスと同じように、借りた場所と違う場所へ返却することが可能だ。

 アイカサは東京・大阪・福岡といった大都市を中心に事業を展開する。大都市を中心に事業を展開しているのは、傘の貸し出しをする”アイカサスポット”が主に鉄道駅に設置されているからだ。

「サービス開始時は、渋谷の飲食店を中心に設置していました。そこからデパートや行政施設、マンションや鉄道沿線などに拡大していきました。その際、もっとも利用が多かったのが駅だったのです」

 そうした利用実態を踏まえ、アイカサは京浜急行電鉄が取り組む”第2期アクセラレータープログラム”に応募。優れたアイデアが認められ、アイカサは採択企業5社のうちの1社に選出された。

「京急電鉄のアクセラレータープログラムに採択されたことが縁となり、鉄道会社から声をかけてもらえるようになりました。そこから鉄道駅を中心にアイカサのスポットは増えていきました。現在、東京圏では京急のほかJR東日本・西武・小田急、大阪圏では阪神・神戸高速・神戸新交通・神戸市営地下鉄、福岡県では西鉄の駅にアイカサのスポットが設置されるようになりました」(同)

 外出先で急に雨に降られた際、駅売店やコンビニで傘を購入するしかない。ところが、帰る頃には雨が止んでしまい、せっかく購入した傘が邪魔になってしまう。一度や二度、誰もがこうした経験をしている。

 邪魔になっても、購入した傘をきちんと自宅に持って帰る人は多いだろう。しかし、なかには駅や電車内にそのまま“忘れていく”人もいる。

 本当に忘れたのか、それとも意図的に忘れられたのかはともかく、駅における忘れ物で、傘はもっとも多い。忘れられた傘の多くは一定期間保管されてリサイクルに回されるが、そのまま廃棄処分される傘もある。

 そうした廃棄される傘と、最期まで大事に使われた傘とを同列に論じることはできないが「突然の降雨によって、移動ができなくなる人は1日に100万人いるといわれています。そのうち、約15万人がビニール傘を仕方なく購入しています。また、ビニール傘は年間8000万本が消費されると試算されています。そこから考えると、使い捨てられるビニール傘は多く、それらを0に近づけるべくアイカサはスタートしたのです」(同)と、傘シェアリングへの意義を説く。

 アイカサで貸し出される傘は、素材にガラスファイバーを使用している。そのため、ビニール傘よりも強度があり、壊れにくい。ユーザー間で繰り返し使用されることで廃棄される傘の削減、ひいてはゴミの減量化にも結びつく。

「シェアリングでゴミを削減するだけではなく、傘の素材をエコ素材にするなどいろいろな角度から環境問題に取り組んでいきたいと思っています」(同)

 鉄道は、省エネかつCO2の排出量が少ないエコな交通機関と言われてきた。そうしエネルギー効率や環境面だけに満足するのではなく、昨今は鉄道会社が積極的に環境への取り組みを加速させている。

 例えば、使用済みきっぷをリサイクルし、それを駅トイレのトイレットペーパーとして再利用することや駅ホームのベンチの素材として活用されている。

 アイカサは鉄道会社が手がける事業ではないが、駅を中心に広まっていることや京急が事業の後押しをしたことなどから、鉄道と密接な関係にあるといえる。

 近年はカーシェアリングやUberなど、移動に関するモビリティサービスへの注目が高まっている。緒に就いたばかりだが、アイカサもモビリティサービスの一種といえる。さらに、シェアリングエコノミーやサブスクリプションがトレンドになる兆しも出ている。

 アイカサのそれらの要素を内包したサービスといえるだけに、今後も駅を中心に急拡大する可能性を秘めている。

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