創価学会離反や神社本庁分裂… 宗教団体の「安倍政権離れ」

創価学会離反や神社本庁分裂… 宗教団体の「安倍政権離れ」

神社本庁は大切な支持基盤だが…(時事通信フォト)

 新型コロナ経済対策では、公明党が安倍晋三・首相の方針をひっくり返す場面が目立っている。山口那津男・代表が安倍首相と直談判して国民一律10万円給付を飲ませたのを皮切りに、中小企業や自営業者への持続化給付金をめぐる経産省の委託業者の“中抜き”疑惑が発覚すると、公明党の赤羽一嘉・国土交通相は国民に旅行クーポンなどを配布する観光振興(Go Toキャンペーン)で、官邸が決めた発注方法を見直すといち早く表明した。

 公明党を動かしたのが“下からの突き上げ”だ。元公明党代議士の二見伸明・元運輸相が語る。

「創価学会の活動を支える熱心な学会員には商店主や自営業者などが多く、今回のコロナ自粛で経営や生活を直撃されている層に重なる。特別給付金や持続化給付金がなかなか届かない政府の対応に非常に不満が強い。そのため学会員たちが、特別給付金は国民一律でなければ困ると学会の上層部を突き上げたわけです。

 すると山口代表が安倍総理に迫って10万円支給が実現した。末端の学会員たちは自分たちで政治を動かせるとわかったんです」

 公称827万世帯の創価学会員たちが「安倍離れ」を起こし、“安倍べったり”だった公明党執行部や創価学会上層部は安倍政権に強い姿勢を取らざるを得なくなった。

◆有力神社が相次ぎ離脱

 さらに、安倍首相にとって「最強の支持基盤」が伊勢神宮を本宗とし、全国8万社の神社を傘下に置く包括宗教法人・神社本庁だろう。田中恆清(つねきよ)・総長は保守系団体「日本会議」の副会長を務め、安倍首相の憲法改正路線を強く支持してきた人物で、首相自身、神社本庁の関連団体である神道政治連盟国会議員懇談会会長を長く務めている。

 この団体には、安倍政権の現閣僚20人のうち16人が所属しており、国会議員では295人が所属している。各議員が選挙区に張りめぐらせた“神社ネットワーク”が選挙を下支えしている。

「田中総長は2016年の正月には初詣で賑わう各神社に署名簿を置かせ、日本会議などが中心になった憲法改正1000万人署名活動への協力を主導しています」(政治ジャーナリスト・伊藤博敏氏)

 その神社本庁が揺れている。6月12日には、傘下の有力な神社である香川県琴平町の金刀比羅宮、通称“こんぴらさん”が神社本庁からの離脱を表明した。昨年11月に行なわれた天皇の皇位継承の重要祭祀「大嘗祭」に合わせて神社本庁傘下の神社が行なった当日祭にあたって、本庁から届けられるはずのお供えが金刀比羅宮にだけ届けられず、「神社本庁は天皇陛下に不敬だ」という理由だ。

 神社本庁では本庁幹部職員が絡む不透明な不動産取引などの不祥事に傘下の神社から批判があがっており、金刀比羅宮も批判派だった背景がある。離脱したのは金刀比羅宮だけではない。2013年には京都の梨木神社、2017年には東京の富岡八幡宮、昨年は京都の建勲神社など田中総長体制になってから有力神社の離脱が続いている。神社本庁を2010年に離脱した石川県の気多大社の三井孝秀・宮司が語る。

「神社本庁の設立の経緯は、戦後、国家神道を廃止したGHQから、地域社会に根ざしていたもともとの神社への信仰を守るためのもの。包括宗教法人となって政治から距離を置き、時の政権の思惑に左右されないようにするためでした」

 しかし気多神社が離脱し、安倍政権になった後、神社本庁幹部が政治に近くなりすぎたという。

「各神社で憲法改正の署名を集めたり、選挙になると神社本庁が推す候補を応援することを指示するようになった。そうした現在の神社本庁の姿勢に疑問を覚えている神社もある。いろんな政党を支持する地域の人が来るのが神社ですから。今でも私のところに離脱について相談があります」

◆「三たび、与党を支持しない」

 安倍首相の改憲路線をバックアップする日本会議の設立には、「生長の家」の信者が大きく関わってきたことが知られている。同団体は41万人の信者を抱え、政治団体を作って自民党に組織内議員を送り出すなど、長年にわたって憲法改正運動を支えてきた。

 その生長の家が、2016年7月の参院選前に「与党とその候補者を支持しない」という方針を全国の信徒に向かって発表し、安倍政治との“決別”を表明した。

 その理由としてあげたのが、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行したエネルギー政策と、「集団的自衛権」を行使できるという憲法解釈の変更を行なったことだった。

 その後も生長の家は、翌2017年の総選挙で「再び、与党とその候補者を支持しない」という方針を発表し、昨年の参院選前にも「三たび、与党とその候補者を支持しない」という方針を発表している。宗教学者の島田裕巳氏が語る。

「創価学会をはじめ、宗教票は国政選挙のたびに減ってきている。その理由はイデオロギーの前に、熱心な信者の高齢化によって活動が低下している部分が大きい。生長の家には昔からの保守的な人がまだ残っていると思うが、社会的な活動からはほとんど姿を消そうとしている。

 神社本庁は、全国の神社から上納金を吸い上げて回すシステムが過疎化などでうまくいかなくなった。それが離脱問題の背景にもある」

 縁の切れ目が票の切れ目。ここでも“政権の土台”がぐらついている。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号

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