中国産食品違反相次ぐ一方で検査率は8.3%、監視員420人

中国産食品違反相次ぐ一方で検査率は8.3%、監視員420人

コロナウイルスが検出された北京の新発地市場(写真/共同通信社)

 日本では長年、「食の中国依存」が続いてきている。日本が中国に輸出した食料品の取引額は1年間(2019年)で1183億円だったが、中国から日本に輸入された食料品の取引額は8895億円に達した。

 だが、厚労省が公開する「輸入食品等の食品衛生法違反事例」によると、今年1月1日〜6月18日までに42件の中国産食品(食器などの器具を除く)が食品衛生法に違反していた実態がある(リスト参照)。

 輸入食料品のうち最も多いのが野菜で、総量(重量ベース)の約52%を占める。消費者問題研究所代表の垣田達哉氏が指摘する。

「野菜の中には、調整品という冷凍、加熱、味付け処理をした食品も含まれます。こうした中国産の食品はスーパーで販売されるだけでなく、コンビニやファストフードなど様々な店舗の弁当や総菜、またはレストランなどの外食産業で使われます」

 直接外食産業に回る中国産食品も多く、消費者が産地表示を確認しないまま注文しているケースも多い。その代表例が、野菜の輸入額で上位を占めるタマネギだ。

「中国のタマネギは、現地の加工工場で皮をむかれてから日本に輸送されて、外食産業に回ります。タマネギは安くて日持ちするうえ皮むきの手間が省けるので、外食産業から重宝されます」(同前)

 5月10日、中国産の生鮮タマネギから殺虫剤「チアメトキサム」が検出されている。この先も中国からの流入は急増していくとみられる。

 コロナの影響で食料品の対中輸入額は2月に前年比マイナス34%に落ち込んだが、3月にはプラス2.4%に戻した。

「中国の食品工場が本格再開し輸出量が回復すれば、さらに中国産食品が日本に流通するようになるでしょう」(同前)

 ある食品輸入会社の社長が語る。

「中国依存はやむを得ない部分も大きい。距離が近く、輸送に時間がかからない上、値段も安いので大量輸入しやすい」

◆検査率は1割以下

 汚染食品を水際で食い止める検疫体制の課題も浮き彫りになった。厚労省による検疫は、全国の港湾や空港の検疫所に配置されている420人の食品衛生監視員によって行なわれている。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が語る。

「過去に違反事例のあった食品会社の商品など一部の例外を除き、大半の輸入食品は『モニタリング検査』といって、無作為に一部を選んで検査するだけ。平成30年度の食品輸入件数は248万件で、検査件数は20万あまり。輸入食品の検査率は8.3%しかないのです。

 しかもモニタリング検査では、結果が判明する前に輸入が認められる。基本的に、輸入業者は検査結果が出るまで市場流通は控え、違反が発覚したら速やかに全量廃棄などの処置を取りますが、中には結果を待たずに取引先に卸してしまう業者もいる。過去にはモニタリング検査で残留農薬違反となった輸入タマネギ24トンがすでに国内流通しており、全量消費済みとなった事例があります」

 食品衛生監視員の人員不足も小倉氏は指摘する。

「年間240万件以上の輸入食品に対し、食品衛生監視員が420人ではどうしても検査できる数に限界がある。少なくとも3000人程度まで増員しなければ、十分な検査体制は維持できない」

 検疫で検査する農薬や添加物、細菌は品目ごとに限定されているため、「それ以外の違反農薬などが含まれていた場合は検知されない可能性がある」(垣田氏)という。

 そこに新型コロナの影響も加わった。

「とくに問題なのは、保健所に配属される食品衛生監視員です。国内に流通した食品の監視役である保健所は、これまでの予算カットで規模縮小が進み、19府県で専任の食品衛生監視員がいない状況です。そのような体制のなかでコロナが発生して保健所がてんてこ舞いになり、食品を監視するどころではなくなっています」(小倉氏)

 輸入時の検疫体制にもコロナは影響したようだ。

「緊急事態宣言が発令されて輸入量が減り、検疫所に家庭の都合で出勤できない職員もいた。検疫率は若干落ちていたと思われます」(厚労省担当者)

 様々な要素が絡み合い、中国産食品にまつわる問題はなくならない。今年、中国からの輸入食品に食品衛生法違反が発見された業者が言う。

「あまり扱っていない食品でいきなり違反が見つかって、すべて焼却処分しました。ウチの扱う食品は中国産がほとんどで、その他の国では量が少なく取引できません。リスクがあっても今後も中国頼みが続くでしょうね」

 コロナが収束に向かっても、中国産食品リスクは消えない。

※週刊ポスト2020年7月10・17日号

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