緊急事態宣言は効果なかった? 感染収束ペースは変化なし

緊急事態宣言は効果なかった? 感染収束ペースは変化なし

PCR検査は足りるのか(時事通信フォト)

 世間の関心は新型コロナの「第2波」に移っている。東京都の新規感染者数が100人を超える日が続いた現状を不安に感じる人は多いはずだ。7月9日には過去最高の224人の感染が発表された。

 しかし経済的負担と我慢を強いられた自粛期間に戻りたくないのもまた事実。十分な補償や緻密な検証もないまま自粛を受け入れられないという声は多い。そうした意見は暴論、我が儘か、それとも正論、本音か──真剣に考えなければならない。

「1日あたりの感染者数」が増えると感染が再び拡大し始めたように思えるが、東京都で1日3ケタの新規感染者が続いたことをもとに判断するのは早計だという。秋葉原駅クリニックの大和田潔医師が指摘する。

「現在、報道されるのは感染者数ばかりですが、同時に『検査数』を見なければいけません。たとえば、緊急事態宣言が発令された4月7日の東京都の新規患者は87人で、検査数は934件でした。それに対して7月3日の患者数は124人でしたが、検査数は2865件です。検査数という前提が異なっているので、新規患者数だけを見て流行が拡大しているとは言えないのです」

 7月に入って感染は収束に向かっていると示す科学的データも出ている。そのデータを「K値」という。考案者で、大阪府の専門家会議に参加した大阪大学核物理研究センター長の中野貴志教授が語る。

「K値とは、感染の収束スピードを計り、今後の収束時期の予測に役立つ指標です。直近1週間の新規感染者数を、累計感染者数で割って求めます。

 6月22日から7月4日までの全国各地の感染者数データからK値を求めると、7月9日頃から感染収束期(ピークアウト)に向かっていることが分かりました。K値によれば、これから自粛や緊急事態宣言を行なっても遅いということです」

 K値の解析によれば、4月の緊急事態宣言は「効果がなかった」と結論づけられるという。

「3〜5月のK値を分析すると、感染拡大のピークは3月28日頃でした。その後、感染は収束に向かいますが、4月7日に緊急事態宣言が出る前と出た後では、感染の収束スピードは一定で、全く変化が見られなかった。つまり収束は緊急事態宣言の発令とは関係なかったと考えられるのです」

 中野教授は、厚労省クラスター対策班のメンバーで北海道大学の西浦博教授が提唱した「接触8割減」についても「必要なかった」と指摘する。

「各都道府県別にK値を求め、人口密度上位7都府県とそれ以外のK値を比較しても、人口密度にかかわらず収束スピードは一定でした。もし感染の収束に単なる『人との接触』が影響を及ぼすのであれば、人口密度が高い地域や、満員電車に乗る機会が多く、大きなターミナル駅がある地域のほうが収束スピードが落ちるはずです。このことから考えても、8割の接触制限は必要なかったと考えられる」(中野教授)

「感染者1人から何人にうつったか」を示す実効再生産数の数値を見ても、緊急事態宣言の発令は疑問だという。元厚労相で、前東京都知事の舛添要一氏が語る。

「実効再生産数は、1以上であれば感染拡大期、1未満なら感染収束期に向かっていることを示します。東京都の実効再生産数が最高値の2.6に達したのは3月14日でした。全国では3月25日にピークの2.0に達しましたが、4月に入ると1.0未満となり、宣言が発令された4月7日には0.7となっていました。諸外国では0.7以下になると緊急事態の解除に踏み切っているケースが多いので、本来緊急事態宣言を発するべきだったのは3月であり、解除すべき時期に始めてしまったということになる」

※週刊ポスト2020年7月24日号

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