10代の妊娠が増加 中絶を選ぶ子に親はどう寄り添うべきか

10代の妊娠が増加 中絶を選ぶ子に親はどう寄り添うべきか

妊娠12週のエコー写真。この頃にはすでに赤ちゃんの姿が確認できるまで成長している。これ以降は中期中絶となり、母体にかなりの負担を強いる。

 若者の性の問題に取り組むNPO法人・ピルコンには、10代からのメール相談が3月には98件、4月には97件、5月には75件とそれまでの約2倍に増加。

 なかでも「生理が遅れていて妊娠したかもしれない」といった相談が、4月と5月で各40件ずつあり、実際に妊娠していたケースも複数あった。10代で妊娠した場合、産まない選択をする場合が多い。次こそ幸せな出産ができるよう、母体に負担をかけないさまざまな方法を伝えたい。

 10代の出生数は9898人。一方の、中絶数は1万4128人にのぼる(厚生労働省「平成29年度衛生行政報告例」と「平成29年人口動態調査」より)。そして、妊娠した10代前半では、その85%が中絶を選んでいる。

 10代だけでもこれだけ多くの女性が中絶手術を受けているのに、日本では中絶に関する情報は乏しい。ネットで検索すれば、産婦人科医院がまとめ、公開している中絶情報は見つかるが、手術の方法や検査の内容などは病院によってまちまちで、どれを信用していいかわかりにくい。

 そのせいで、誤った情報に振り回される10代は多い。

妊娠検査薬で陽性ならすぐに産婦人科へ

 子供から「生理が来ない、妊娠したかも」と相談されたら、親も子も悩むだろうが、悠長に構えている時間はない。まずは、本当に妊娠しているのかを明らかにする必要がある。市販の妊娠検査薬で確認をさせ、陽性ならば産婦人科へ。産婦人科医の宋美玄さんはこう言う。

「1回目の検査が陰性でも、最後のセックスから3週間後までは数日おきに検査をし続けてください」(宋さん・以下同)

 産婦人科では、妊娠・流産・子宮外妊娠などの可能性がないか診察をしてくれる。この後で、別の記事で 紹介したように産む・産まないの選択を子供に任せよう。

12週未満なら母体への負担軽い

 相手の男性との話し合いもあるため、結論を出すのは時間がかかるかもしれない。しかし、期限を設けさせたい。というのも、22週を過ぎると中絶ができなくなるからだ。

 妊娠11週までであれば、初期中絶といって、手術は比較的簡単で、入院の必要もない。母体への負担も軽く、術後は生理のような症状があるものの、10代ならば半日ほど寝ていれば改善するという。部活や体育の授業は3日〜1週間ほど休んだ方がいいが、通学なら翌日からできる子も多い。

 しかし、妊娠12週以上になるとわけが違う。胎盤が完成して胎児も大きくなり、中期中絶といって手術自体も複雑になる。人工的に陣痛を起こして流産(死産)させるからだ。母体への負担も大きいため、入院も必要だ。

 10代に限らず、中絶をするなら初期中絶の方が体への負担が軽い。

 ただ10代の場合は、本人が妊娠していることに気づかず、産婦人科を受診するときには11週を過ぎてしまっていることが多いという。妊娠の進み具合の目安となる「妊娠週数」は、最後の生理が2週間遅れた時点で、すでに6週目に入っているため、11週はあっという間に来てしまうのだ。

「特に10代前半の女の子は生理周期が安定していないため、生理が遅れてもあまり気にしないことが多いんです」

「なんか太ったな」と思ったら、妊娠30週が過ぎていて、もう中絶はできないから出産したという子もいたという。

 10代の子は、まさか自分が妊娠するとは思っていない。そんな、本人さえ気づかない体の変化を、親が察してあげるのも手だ。宋さんが出会った来院者の中には、生理用ナプキンのゴミが出なくなったことで、子供の妊娠に気づいた親もいるという。そこまで娘の動向を気にしておくのは難しいが、年頃の子供の変化は見逃さないよう、日頃からコミュニケーションを取っておくことも大切だ。

WHOは「手動吸引法」を推奨

 さて、中絶すると決めたら、次に手術をしてもらう病院探しだ。どうやっていい病院を見つければいいのだろうか。

「最初に受診したとき、“10代でセックスなんてしたらダメだ”などと、妊娠した子に説教をする医師はやめた方がいい。いまだにこういう医師は、意外とたくさんいます。そんなことを言う医師なら病院を変えた方がいい」

 初診のときに、今後の避妊について丁寧に説明してくれたり、ピルを処方してくれるなど、今後、思いがけない妊娠をしないような対策を教えてくれる医師は信頼できる。

 また、その病院がどんな手術方法を採用しているか、確認をする必要もある。初期中絶手術には「?爬法」と「吸引法」があり、古くから一般的なのが、前者だ。ただしこの方法は、子宮内膜を傷つけたり、子宮の壁に穴があく「子宮せん孔」などのリスクがあり、世界保健機関(WHO)では推奨していない。

 掻爬法は、はさみ型の鉗子や小さなスプーンのような金属製の器具を腟から子宮内部に入れ、組織を?がして?き出す、昔から続けられている方法。子宮内膜に傷がついたり、膜が薄くなって受精卵が着床しにくくなるなど、将来的な懸念もある。

 吸引法は、チューブを腟から子宮内部に入れて組織を吸い出す方法だ。2016年にプラスチック製のチューブとつなぐ手動式の吸引器とセットで使い捨てにできる器具が登場し、利用が広まった。

 それまでも電動の金属製ポンプを使う吸引法があったが、使用のたびに消毒が必要など、使い勝手が悪かった。WHOは安全性が高いこの「手動式吸引法」を推奨している。

「日本の病院ではまだ、?爬法しかやっていないところも多いのですが、どちらか選べるならば、吸引法がいいと思います。ただ、?爬法が必ずしも悪いわけじゃありません。昔は?き出す器具が大きかったため、子宮に傷がつき、その後、妊娠しづらくなったりしましたが、いまは器具が改良され、そんなことは滅多にありません。

 ただ、?爬法は医師の経験やテクニックによるところが大きい。吸引法なら、最新の器具で吸い込むので、経験やテクニックが必要ない利点はあります」

 つまり、病院探しでは、吸引法を採用しているかも選ぶポイントとなる。

子供の性格に合わせて寄り添い方を考える

 中絶をしたら、問題がすべて解決するわけではない。ここから心のトラブル「中絶後ストレス症候群(PASS)」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」などを引き起こす可能性があるからだ。

「だからといって腫れ物に触るように接するのもおすすめしません。“次は祝福できるときに妊娠しようね”など、親は前向きな話をしてあげればいいと思います」

 中絶をなんとも思っていない子も確かにいるが、術後にあまりにもあっけらかんとしている場合は、傷ついた心を守るため、逆に傷ついていないふりをしている可能性もある。そういう子は、後で悲しみや後悔に苛まれ、苦しむことになる。

「親は子供の性格なども考えながら、術後もしっかり寄り添ってあげてください」

 若くして中絶を経験したことのある助産師や養護教諭をしているメンバーが無料メール相談に乗ってくれるNPO法人ピルコンの理事長・染矢明日香さんは、手術後も親がこれまでと変わらずに接してくれたことがありがたかったと語る。

忘れてはいけない。男も当事者である

 これまで、妊娠をした女の子とその親について語ってきたが、中絶をする場合、妊娠をさせた相手の男性の同意が必要になる。未成年同士なら、さらに女の子の親、相手の男の子、男の子の親のサインも必要な病院がほとんどだ。妊娠は女の子1人ではできない。相手にも責任がある。

 NPO法人ピッコラーレの副代表で助産師の土屋麻由美さんはこう言う。

「“彼女が妊娠しているかもしれない”と相談してくる男の子も15%前後います」

 このように、彼女を心配して一緒に考えてくれる男の子ならいい。しかし、「生理が遅れている」とか「妊娠していた」と伝えたら連絡がとれなかったという相談は多い。

「うちの息子の子供だという証拠はあるのか、というようなことを言われて傷つき、“もう、うちだけでなんとかします”というケースもあります」(土屋さん)

 相手の家族とこじれた場合は、弁護士を入れて話し合うこともひとつの手。法テラスなどを利用すれば、低額もしくは無料で相談できる。

「当事者である息子に、(あなたは責任を取らなくていいから)“早く忘れなさい”などと言うのではなく、起きてしまったことに対して、どのように責任をとるのかを一緒に考える姿勢が求められると思います」(土屋さん)

 もし、男の子の親なら、中絶を選択しなければならなくなった女の子の気持ちをいちばんに考え、寄り添っていくことが重要だ。

思いがけない妊娠を防ぐ方法を覚えておく

 最後に、緊急避妊薬「モーニング・アフターピル」のことに触れておこう。黄体ホルモンを主成分としたのみ薬で、性交後72時間以内に服用すれば、ホルモンの作用で妊娠を防げる(避妊成功率8〜9割)。

 現在は、産婦人科医師による問診、場合によっては内診・超音波での診察を受ければ処方してもらえる。

 費用は病院によるが1回数千〜2万円ほど。避妊をせずにセックスをしたり、乱暴をされた場合、そのまま放置して妊娠してしまうより、こういった方法があると知っているだけで、その後の問題を事前に回避できる。子供にはぜひ教えておいてほしい。

※女性セブン2020年7月23日号

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