五輪開催強行ならNYのような医療崩壊が日本を襲う可能性も

五輪開催強行ならNYのような医療崩壊が日本を襲う可能性も

関西福祉大教授(渡航医学)の勝田吉彰氏

 東京五輪をめぐっては世論も「予定通り来夏開催」と「中止」で割れている。日本にとって最良の決断とは何なのか。関西福祉大教授(渡航医学)の勝田吉彰氏(59)は次のように考える。

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 プロ野球や大相撲は観客を減らして開催していますが、五輪には「国境の移動」という大きなリスクが伴います。これが、中止すべきだと考える最大の理由です。

 現在、日本は比較的感染を抑えていますが、五輪では数百万人の感染者、数万人の死亡者を出している国からも多くの人が訪れます。海外からの感染者が多数入国してもパンクしない大規模な検疫体制を整えなければなりません。

 医療機関や保健所などの公衆衛生機関の疲弊やパンクも懸念されます。言葉や文化が違う外国人への対応は困難ですし、新型コロナ以外の感染症や、夏場の食中毒や熱中症などへの対応に悪影響が出る恐れもあります。

 さらに医療従事者の感染が拡大すれば、治療にあたる人が不足するという悪循環を招いてしまいます。最悪の場合、感染が拡大したアメリカ・ニューヨーク州やカリフォルニア州のような医療崩壊が、五輪開催中の日本を襲う可能性もあります。

 国境をまたぐリスクを踏まえた上で開催するなら、前提条件として「ワクチンの実用化」と「選手・関係者全員への接種」が必要です。ところが、ワクチンの臨床治験では難点も多く見つかっており、実用化を見通すのは困難です。処方薬の実用化も間に合わないでしょう。

 無観客開催でも、テレビ観戦などで「密」になるリスクが増える。国内の新規感染者数の増加傾向を鑑みても、五輪は中止すべきだと思います。

【PROFILE】かつだ・よしあき/関西福祉大教授。専門は渡航医学。外務省医務官としてスーダン、フランス、セネガル、SARS流行時の中国で勤務した。

※週刊ポスト2020年8月28日号

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