妻が濃厚接触者になった30代記者「自宅隔離生活」体験記

妻が濃厚接触者になった30代記者「自宅隔離生活」体験記

PCR検査では

 家族が濃厚接触者になってみて、どこかで「対岸の火事」と思い込んでいた新型コロナの恐ろしさが、はじめてわかった。約1週間、感染の疑いが晴れるまでの本誌・週刊ポスト記者(30代男性)が隔離生活をレポートする。

 * * *
【8月7日】
「私、濃厚接触者になったかも……」というメールを妻から受け取る。東京では連日、400人超の新型コロナ感染者が確認されている中でのことである。妻によると、職場の同僚とランチをしたのが8月3日で、その翌日に同僚が発熱。さらに、“味覚を感じない”ためにPCR検査を受けたところ、陽性反応が出たという。

「2時間ほどマスクをせずに、その子と密な店内でご飯を食べた」と、妻。なんだか急に自分の喉の調子も気になってくる……。

 体調は全く悪くないのだが、無症状で感染していて、既に編集部でウイルスをバラまいていたら? と、最悪の事態が頭をよぎり、上司に報告。まずは自分の感染の有無を確認したいと考え、民間クリニックのPCR検査を受けに行くことに。

 院内には10人ほどの患者がおり、検査希望者がひっきりなしに来院する。看護師は全員、ゴーグルにN95マスク、防護服とフル装備だ。

「唾液が容器に溜まるまで出し続けてください!」

 テキパキと看護師に促され、5分ほど唾液を検査容器に出し続ける。綿棒を鼻の奥に突っ込む検査を想定していたので、それよりだいぶラクだが、喉がカラカラになった。結果は2〜3日以内にメールか、陽性なら電話が来るという。保険が適用されないので、自費で3万5000円を支払い、クリニックを後にする。

 この日から、妻と自宅で極力接触しないようにする生活が始まった。マスクを着用し、会話はメールで。妻が触れた物にはアルコール消毒だ。

“濃厚接触者”とは?

【8月9日】
 最初のメールから2日後となるこの日の夕方、保健所から電話があり、妻が正式に「濃厚接触者」になる。

 濃厚接触者になると保健所からPCR検査の日程を告げられ、ようやく自治体主導の検査を受けられる。「1日の感染者数」に正式にカウントされる検査だ。そして陽性判定だと、2週間の自宅待機、症状があれば入院しなければならない。

 厚労省によると、濃厚接触者とは「新型コロナウイルス陽性者が症状を発症する2日前までに、感染予防をせずに15分間以上1m以内で過ごした人」と定義されている。

 濃厚接触者に指定されるまでにはステップがあり、数日を要する。

【1】コロナ感染者が保健所へ、症状の発症2日前までに濃厚接触した疑いのある人を伝える。
【2】濃厚接触疑いの人が住む自治体の保健所がPCR検査の日程を確保し、連絡する。

 ただし、申告制なので、どうしても接触の事実を隠したい相手なら、いくらでも虚偽の申告ができそうだとも実感した。

 夜、先日検査を受けたクリニックから検査結果のメールが届く。「PCR検査結果:陰性」の文字を確認した途端、喉の痛みが吹き飛んだ。同時に、「ここのところ妻とめっきり“濃厚接触”していなかったなあ……」と、妙な寂しさを感じた。

【8月10日】
「同居家族が感染者」の場合、もちろん出社はできないが、「同居家族が濃厚接触者」の場合、微妙な問題だ。当人の体調次第で外出制限となるかが変わるなど、組織によって対応も微妙に違うようである。

 濃厚接触者は感染者の数倍いると考えられるから、“濃厚接触者の濃厚接触者”となるとその2乗。全員が出歩けないと社会がマヒするのでは──とも想像してしまう。

 とはいえ、テレワークを選ぶことに。東京の最高気温が35℃を超える中、換気のために窓を開けなくてはならないので熱風で家が蒸し風呂状態だ。こうなると、もはやコロナより熱中症が怖い。でも、妻のPCR検査結果も陰性とわかるまでは我慢だ。

 妻の検査は明日。結果が出るのはいつなのか? 陽性の場合、この生活がさらに2週間続くのか? などと考えながら、汗だくで掃除・洗濯・買い物・料理をこなす。

【8月11日】
 妻が5日ぶりに検査のために外出した。「決して口外しないでください」と職員から指定された検査場には、10人ほどの濃厚接触者が待機し、途切れることなく人が出入りしていたという。中には、小さな子供を連れた母親もいたようだ。

もしも陽性なら…

【8月13日】
 夕方、保健所から妻に電話で検査結果が「陰性」だと伝えられる。これでようやく、外出や出社が解禁された。

 約1週間の隔離生活で済んだが、検査で妻にもし陽性判定が出ていたら、さらに2週間の自宅待機期間が始まり、新たに自分が受けるPCR検査待ちと陰性判定が出るまでの隔離生活が待っていた。「コロナになったら無症状でも2週間外に出られない」という印象でいたが、家族が濃厚接触者というところから始まるともっと時間がかかるのだ。

 新型コロナの恐ろしさは、「出口が見えない漠然とした不安」にもある。家族が濃厚接触者になり、身をもって感じた。

※週刊ポスト2020年9月4日号

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