コロナ禍の事業主「むしろ儲かっている」人たちの生き方とは

コロナ禍の事業主「むしろ儲かっている」人たちの生き方とは

東京都の営業時間短縮要請を受けて、営業が終了した飲食店が続く銀座コリドー街(時事通信フォト)

「ピンチはチャンス」とは、新型コロナウイルス感染症のために緊急事態宣言が発されたとき、いろいろな場所で経営者が従業員を鼓舞するのに使っていた言葉だ。実際に働く人たちからは、ピンチしかないと不評だったが。では、第2波が現実のものとなりつつある今、人々はどのようにコロナと向き合っているのか。ときには、コロナ禍を逆手にとるようにしてチャンスに変える人たちについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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 東京都板橋区内の飲食店は、今日も賑わっていた。

「みんな旅行も帰省もしないから飲むしかないのか、例年の2倍以上の売り上げ。空いててよかった、って来てくれる。時短営業? 今回は応じません。応じるだけ損ですから」

 同店の店長・吉住隆太さん(仮名・40代)は、コロナ禍で多くの飲食店が苦境に立たされる中で「むしろ儲かっている」と自信を見せる。緊急事態宣言の前後には流石に店を閉めたり、時短営業をせざるを得なかったが、それも東京都から出た「協力金の50万円」目当て。持続化給付金の100万円、さらに妻と子供3人の家族5人分を合わせた給付金50万円、しめて200万円の臨時収入があったのだから「辛いどころかラッキー」だと言い切る。

「うちの客の9割は常連。人様の商売に口出すつもりはないが、ネットの口コミやらを気にしすぎたり、高級でオシャレ路線に走ったりせず、極端に安くもしない。常連さんが居心地の良いよう、ニーズに答えてきただけ。だから、ある程度世の中が混乱しても、客は来てくれた。ありがたいことです」(吉住さん)

 コロナ禍で多くのビジネスが沈滞する一方で、このように儲かる人、賢く生きようとしている人は少なくない。千葉県在住のデザイン事務所代表・川島淳一郎さん(仮名・40代)も、苦境を「機会」と捉えた一人。

「広告デザインが主な収入だったため、コロナでかなりやられました(笑)。仕事がないから探してこい、といっても仕事はないからどうしようもない。そういうわけで、会社の財務の見直しをやろうということになりました」(川島さん)

 経理担当の妻と相談した川島さんが手をつけたのはまず、借入金の「借り換え」だった。懇意にしていた銀行とは別の金融機関から借り換え、金利がかなり下がった。金融業界も、コロナの影響で動かない金を動かそうと、金利を下げているという情報をキャッチしたからだ。さらに……。

「スタッフのリモートワーク化も進み、思い切って事務所を解約しようとしたところ、大家さんに泣きつかれてしまいました。事務所をそのままにする代わりに、事務所を置いているマンションの別の部屋をスタッフ向けに格安で貸してくれるということになり、それならと契約を続行。元の家賃もかなり抑えられたし、スタッフの福利厚生にもなりました。仕事もぼちぼち戻りつつありますから、コロナは良いきっかけだったと思っています」(川島さん)

 埼玉県内の居酒屋店店長・桂敏子さん(仮名・50代)もまた、コロナ禍を逆手に、うまく生き抜いている。

「お客さんは以前の7割くらいしか入らないけど、常連さんは来てくれるし、このタイミングでメニューの値上げをしました。普段なら文句言われるだろうけど、コロナだししょうがないねってなるんで(笑)」(桂さん)

 飲食店にとっての値上げは、客足に大きく響くもの。よほどの事がない限り値上げはできなかったというが、コロナ禍は「よほどの事」そのもの。従前から値上げを考えていたこともあり、結果的にはちょうどよかったと打ち明ける。それだけではない。

「お店が休業したり潰れたりして、仕入れ先の問屋さんも相当経営が厳しくなっていたみたいで、格安で食材卸してくれるところが増えたんですよね。うちみたいにうまく回っている店とは長く契約したいって、特別にさらに値下げしてもらったりして。嬉しい誤算というか、コロナ様様かも」(桂さん)

 このように、コロナ禍を前に絶望しているだけではなく、なんとかポジティブな「機会」として生かしてやろうと奮闘する人々もいる。取材した飲食店店主の中には「本当はきつくないのに、きついきついと言いまくっている」という人もいた。きついと言っておけば、客も同情的にみてくれるし、店に来てくれるというのだ。フェアかどうかはさておき、これもまた生き抜く術にはかわりない。行き詰っても、逃げてしまおう死んでしまおうと思うのではなく、まずは「生きる」と決め、そこから「どうやって生き延びるか」を考え、このコロナ禍を乗り越えていきたい。

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