前澤氏が投資したアパレル2社はコロナ苦境から抜け出せるか

前澤氏が投資したアパレル2社はコロナ苦境から抜け出せるか

ユナイテッドアローズとアダストリアに総額75億円を投資したZOZO創業者の前澤友作氏(時事通信フォト)

 ZOZO創業者の前澤友作氏が、ユナイテッドアローズとアダストリアという2大アパレル企業の大株主になったことが分かった。折しもコロナ禍でアパレル業界が総崩れする中、両社は前澤氏の出資を受け、この苦境から脱することができるのか──。ファッションジャーナリストの南充浩氏がレポートする。

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 ZOZO創業者として知られる前澤友作氏が、8月7日までにユナイテッドアローズの株式7.97%を35億2864万円で、アダストリアの株式5.6%を39億7390万円でそれぞれ取得したことが発表されました。じつに総額約75億円を投資したことになります。

 今回の株式大量取得の狙いは、〈純投資を基本とするが、発行者経営陣との間で友好的な関係が構築されることを前提として、必要に応じて企業価値向上のための助言または提案を経営陣に対して行う可能性もある〉と記されている通り、純投資が最大の目的ではないかと思います。

 では、前澤氏はどうしてこの2社を選んだのか。面識のない私にその理由は分かりませんが、7月末から8月頭にかけては両社ともに株価が低迷していたので、お買い得だと考えたのかもしれません。

 敢えて2社の共通点を挙げるとすれば、ユナイテッドアローズとアダストリアは両社ともに小売店出身で、アパレル業界においてネット通販が強いことが共通しています。株式投資をする場合、内情を知っている業界の方が成功しやすいですから、ネット通販モールZOZOの創業者としては当然の選択なのかもしれません。もっとも、ユナイテッドアローズもアダストリアもZOZOに出店しており、付き合いも長いので両社の内情については相当に詳しいと考えられます。

ファッション領域で補完関係にある両社

 さらに興味深いのは、ユナイテッドアローズとアダストリアは、もちろん資本関係はありませんが、アパレルビジネス業界においては補完関係にあるといえます。ユナイテッドアローズはラグジュアリーブランドほど高くはありませんが、高感度セレクトショップで比較的高価格品を得意としています。低価格ブランドとしては「コーエン」を持っているくらいです。

 一方、「GLOBAL WORK」や「niko and…」などを展開するアダストリアは、中・低価格カジュアルが中心で、高価格帯や高感度商品をほぼ持っていません。かろうじて例外といえるのは「ハレ」くらいでしょうか。

 もともとアダストリアは茨城県を拠点とするジーンズカジュアルショップ「ポイント」が原点です。その後、ジーンズカジュアルを基調とするSPA(製造小売)企業へと転身し、現在に至っています。出自から見てもジーンズカジュアル系に強く、その分野に秀でた人材が多いのも当然の帰結だといえます。

 そのため、アダストリアにとっては高価格高感度ブランドやセレクトショップを傘下に収めるのは悲願ともいえる事案です。結果的にまとまらなかったものの、数年前には大手セレクトショップの買収に動いたという過去もあります。

 そう考えると、この2社が提携するなり統合したほうが効果的ではないかと思えてきますが、そう簡単な話ではありません。

 ユナイテッドアローズ創業者の重松理氏はすでに代表権もなく、取締役でもない名誉会長に退いていますが、アダストリアは拡大の立役者だった福田三千男氏が会長兼社長で今も君臨しています。同社は福田氏の祖父が大正時代に学生服屋として創業し、父が紳士服店にしてそれを福田氏が継いだ経緯があります。しかし、アダストリアを年商2200億円規模にまで育てたのはこの三千男氏なので実質的創業者ともいえます。

 そのため、創業者の手が離れたユナイテッドアローズが条件次第で動いたとしても、実質的創業者がトップに君臨しているアダストリアのほうは動きにくいのではないかと思われ、提携などがすぐに起きるとは考えにくい状況でしょう。

コロナ禍が続けば明暗分かれる

 しかし、折からのコロナ禍によって、他のアパレル企業同様、この2社も苦しい経営を強いられています。ユナイテッドアローズは2021年3月期第1四半期決算で35億8200万円の赤字、アダストリアも2021年2月期第1四半期の連結業績で36億8100万円の赤字になっています。

 コロナの収束が見えない中、今後の展開も予断を許さない状況といえますが、目先の展開を考えると、ユナイテッドアローズよりアダストリアのほうが有利ではないかと思われます。

 なぜなら、ユナイテッドアローズは都心に店舗が集中しており郊外店がほとんどない一方、アダストリアは都心店もありますが、郊外型ショッピングセンターへの出店が多いためです。非常事態宣言解除後の売れ行きの回復は都心店が鈍く、郊外店は比較的堅調です。

 その理由としては、都心店は地価が高いから面積が狭くて「密」になりやすいこと、さらに都心店には駐車場がない、また小さいため、来店するためには電車やバスなどの公共交通機関を使う必要があり、都心の公共交通機関は「密」になりやすい──という2つの理由があると考えられます。郊外店や地方店が比較的堅調な理由はこの逆です。コロナ禍では、消費者は都心店より郊外店に安心感を抱いているのです。

 ネット通販が大きく伸びたと言っても、まだまだ実店舗売上高の方が大きく、「洋服は店で実物を見てから買いたい」と考える人が7割ほど存在します。このため、都心店の比率が高いユナイテッドアローズのほうが当面厳しい状況が続くのではないかと思われます。コロナの感染拡大が収まり、過度な恐れが払拭されればその限りではありませんが。

 いずれにせよ、前澤氏が2大アパレル企業の大株主になったとしても、所有株式数は数パーセント程度ですので、両社の経営に関して踏み込んだ提言や提案はしないものと思われます。

 しかし、お互いに持ち合わせていないファッション領域をカバーし合っているユナイテッドアローズとアダストリアが協力するようなことがあれば、なかなか強力な存在になるでしょう。仮に前澤氏つながりで実現すれば面白いと思います。

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