若者に流行の現在地共有アプリ 昭和生まれには怖い“束縛”

若者に流行の現在地共有アプリ 昭和生まれには怖い“束縛”

地図上にメンバーの現在地が表示されるアプリが人気だ(イメージ。Getty Images)

〈使うことで、大切な人とより多くの時間を過ごせるようになり、たとえ実際に顔を合わせられなくても、もっと親しくなれる〉──そのように謳うSNSアプリが若者の間で流行している。目玉機能は友人同士の“現在地共有”だ。エッセイストの小林久乃氏が、同アプリに親しむ若者世代に一言、物申す。

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 少し前から10〜20代の学生を中心にZenly(ゼンリー)というアプリが流行している。どんなものかと調べてみると、アプリ内で繋がることによって、登録者が今どこにいるのか=現在地を地図上に表示してくれる機能を持つ。

 ただ居場所を教えてくれるだけではなく、アプリで繋がっているメンバーの電池残量、待ち合わせ場所までの到着時間などさらに細かい情報が共有される。自宅到着、就寝時間まで仲間に知られてしまうらしい。ここまでの機能を知って、恐ろしくなったのは私だけだろうか……。

 恋人の浮気防止くらいは理解できるけれど、私生活まで全て仲間内に知られるのは想像の範疇を超えている。現代っ子はそこまで個人情報を筒抜けにさせないと友人関係が成立しないのだろうかと疑問がわく。そして、この(昭和生まれには)恐ろしいほど“束縛”されるアプリの存在を知って、とある女性のことを思い出した。

愛する人の全方位を囲う束縛術

 最近、世間でも“あざとい”など、危険警報を発する女性のことがトピックに挙げられるようになってきた。実は私、どこか違和感のある言動をする女性たちを “あかん女”と個人的にカテゴライズしている。今から10年ほど前、Zenly顔負けの束縛ぶりを見せていた“あかん女”は、男友達Sの妻Iである。

 二人は違う会社に属しながら、取引先同士で会ったとか。Iからの猛アタックにより、二人は交際を開始したが、その後、彼女が愛する人の全方位を囲うために行った束縛術がすごかった。

 彼のスマホチェックは当然のこととして、彼のSNSの友人とはいつの間にか全て自分も友達に。飲み会があれば、パートナーとしてついてくる。そのせいで、当時は仲間内で「Sを呼ぶとIも来るからやめよう」という声が出たほど。二人のいない飲み会で、友人一同が吐露したことにより明らかになったのは、Iが仕掛けていた、世にも恐ろしい束縛術だった。

友情も愛情も“束縛”ではなく

 なんとI、彼氏Sの女友達をひとりずつ直接訪問していたのだ。私たちはSNSでIと繋がっていたため、「ちょっと○○さんにしか言えない相談があるんですけど」などと彼女からDMが届く。女性陣は皆、同じアプローチを受けていた。

「あ、私のところにも来たよ?」「いきなり飲み屋に現れて言いたいことだけ言って、消えて行ったけど」。ちなみに私も彼女の家庭訪問を受けた。私の場合、公園をランニングしていることをTwitterにアップしていたら、その公園にIが現れた。Iが偶然を装うために公園で張っていたことは後から知った。

 ただ全ては「彼は私のものよ、近づかないで」という牽制だったはず。他にもSNSや仲間内から情報を収集、歴代彼女も隈なくご訪問していたのは……驚愕を超えて……笑った。ここまでの一連の作業を、きちんと仕事をしながら全てクリアしていたと想定すると、おそらく睡眠時間を相当削っていたはず。もし当時Zenlyがあったら、彼女は間違いなく使いこなしていたと思う。

 Iのように“束縛することが愛の形”“自分の存在を知らしめていくことが愛情”だと捉えているのなら、どこか歪んでいる気がする。

 SNSアプリで友情を育んでいると思っている令和の若者にも、同じような匂いを感じる。アプリ上での拘束は、単なる不安と焦燥感のしわ寄せではないだろうか。

 2009年ごろ、何かの調査で「最近の若者は友達を作ることができない。作り方がわからない」という傾向があると聞いたことがある。だからと言って友達がいらないわけではなく、「欲しい」という願望がある。その憧れの象徴がメンバー同士の仲の良さで知られるアイドルグループの嵐。それからワールドカップ南アフリカ大会(2010年)で男同士の結束を見せた、サムライブルーなのだそう。彼らの人気ぶりは確実に実力によるものだけど、その理由の末端に「友情とは何なのかを体感したい」という若者たちの願いも一票、加わっていたのでは? と思う。

 それから10年近く経過した。今の若者世代は直に友情を育むどころか、アプリで友人を確保することに安堵を感じているのだと思うと、なんだか寂しくなってしまう。

 若者よ、アプリを捨ててマスクをして街に出よう。一人の世界もなかなかいいものだぞ?

【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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