ランドセルから不動産まで「オンライン接客」が好調な理由

コロナ禍で様々なものがオンライン化 ランドセルや不動産でも「オンライン接客」

記事まとめ

  • 緊急事態宣言の時期に、顧客の来店が難しくなった実店舗が「オンライン接客」を開始
  • 店舗に出かけずとも自宅で、オンラインで商品説明が受けられるとあり、好評だとも
  • 三越伊勢丹はランドセル購入を検討の顧客に「LINE・Zoom・来店予約」の3段階を用意

ランドセルから不動産まで「オンライン接客」が好調な理由

ランドセルから不動産まで「オンライン接客」が好調な理由

例年なら店舗を訪れて慎重に選ばれるランドセル(時事通信フォト)

 コロナ禍で様々なものがオンライン化した。その中でも緊急事態宣言の時期に、顧客の来店が難しくなった実店舗が「オンライン接客」を始めたというニュースがいくつもあった。それから約3ヶ月、店舗に出かけずとも自宅で、オンラインで商品説明が受けられるとあり、かなり好評だ。通信販売とは何が違い、どんなメリットやデメリットがあるのだろうか。インターネットサービスに詳しいITジャーナリストの高橋暁子さんが、なぜオンライン接客が好評なのかについて解説する。

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「子どもが小柄なので、重くないランドセルがいいかなと思っているんですが」
「この商品など、軽くて丈夫で人気ですよ。蓋の部分がこのようにワンタッチで閉まるので、開けっ放しにならないところも便利です」

 例年なら店頭で聞こえるランドセル選びの会話が、今年はスマホやタブレット越しに多く交わされた。それというのも、ランドセルの購入時期が、新型コロナウイルスによる影響を大きく被ったからだ。

 近年、翌年4月の新一年生向けランドセルが購入される時期は、前年の4月から始まり5月のゴールデンウィークの時期に本格化、8月まで続く。親だけでなく祖父母がランドセル選びに加わることも多く、5〜6万円ほどの価格帯が人気で、絶対に失敗できない買い物だ。カタログを集めてじっくり下調べをし、悔いのないように店頭で実際に子どもにも触らせるなどして、納得がいくものを選びたい。ところが、今年はそのランドセル選びのシーズンがまるごと新型コロナウイルスによる緊急事態宣言と外出自粛に重なってしまった。

 そこで登場したのが、前述のスマホやタブレット越しの「オンライン接客」。ポイントは、画面越しに顔や商品を見ながら店頭のように説明を求め、欲しいものに合うのはどれかといったようなやり取りを、リアルタイムにできる点だ。オンライン接客なら、商品の操作方法などを見ることもでき、気になるところは質問すれば答えてもらえる。

「店舗に行かなくて選べたので、よかった」と、オンライン接客を使って上の子のランドセルを購入したという30代主婦は語る。「妊娠中で外出がきついし、インターネット通販は商品が思ったものと違ったりして失敗も多くて心配だった。質問もできたから、思った通りのものが買えて満足」。安くない買い物なので緊張もあったが、納得がいく結果になったようだ。

 実店舗で接客を受けると、つい購入しなければというプレッシャーを感じるという人もいるだろう。営業トークに押し切られて、おすすめの商品を購入してしまった経験がある人もいるのではないか。しかしオンライン接客は、自宅でスマホやタブレット越しに説明を聞くため、顧客側は比較的冷静でいられるというのもメリットだ。前述の主婦も、「遠慮して聞けないような質問もできたし、普段ならつい高いものを買わされてしまうことも多いのに、値段も予算内に収められた。その意味でも満足」。

 ランドセルのオンライン接客を導入している専門店は多いが、なかでも三越伊勢丹が知られている。購入を検討している顧客に対して「LINE・Zoom・来店予約」の3段階を用意し、LINEでのチャットによる相談や動画による接客、Zoomでのビデオ通話によるオンライン接客の他、店頭で直接手にとって見ることも可能としたのだ。その結果、ランドセルの売り上げは2019年同期比で120%となったという。

 Itsumo.調べによると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い様々な活動が制限され始めた2020年2〜3月において、ネットショップにおける買物行動は19%増となり、実店舗の利用は32%減となった。いまだ新型コロナウイルスの収束が見られない中、外出を控えるためにインターネット通販に頼るようになったという人は少なくないだろう。

 しかし、インターネット通販では物足りない部分もある。実物が見られないためイメージがわきづらいとか、店員に質問などができず商品比較が難しいなどの点が挙げられる。そこで人気となったのが、先程、例に挙げたオンライン接客だ。LINEやZoomなどのメッセージサービスやWeb会議サービスなどを使っての接客が多く、自宅で対面に近い接客が受けられると人気が高まっている。そして意外なことに、普段の買い物ではなく失敗できないもの、価格帯がどうしても高くなるものでオンライン接客が選ばれているようだ。

ジュエリー、輸入車など幅広い分野が参入

 前述のランドセルのように、子どものための買い物は失敗したくない。その代表格でもあるベビーカーのAIR BUGGYを提供するエアバギーストアでも、電話とZoomによるオンライン接客が行われている。自宅からリアル店舗につながり、画面を通して店頭の商品を見たり、ベビーカーの使い方などをスタッフに実演を交えながら聞いたりできる。簡単には来店しづらい妊婦や小さな子どもがいる夫婦などが対象となるので、来店せずに商品について詳しく知れるのは大きなメリットとなっている。

 アパレルブランドの「ALLYOURS(オールユアーズ)」は、実店舗を休業してオンライン接客を行い、オンラインショップで昨年対比プラスの売上をあげた。「プライベートZoom接客」を行い、ヒアリングしながら顧客の好みに合わせた商品を選定。その後「自宅試着サービス」として自宅に商品を送り、試着をしてもらい購入につなげる仕組みだ。サービス利用者は、都内や関東近郊の顧客と遠方の顧客が半々。興味があったが来店したことがない、または遠くて来られない新規顧客が多かったという。もともと大量生産で服を余らせるより暮らしにあった服を提案するコンセプトのもと、SNSに強いブランドであったこともオンライン接客とフィットしやすかったのだろう。

 その他、ジュエリーブランド「ポンテヴェキオ」がブライダルリングの相談・注文を受け付ける完全予約制オンライン接客サービスを行ったり、「アウディジャパン販売」が車を撮影しながら映像を配信、ネット上で商談を進めたり、「住友不動産」が全国全ての販売物件を対象に物件見学から引き渡しまでオンラインで完結する仕組みを導入するなど、多くの分野がオンライン接客に乗り出しているのだ。

 これまで「対面でなければ」と思いこんでいた多くの分野がオンライン接客に乗り出しており、一度も現物を手に取らずに購入を決めるケースも多くなっているのが現状だ。

対面と通販の良いとこ取りのオンライン接客

 オンライン接客が好評な品目やジャンルをみると、ある共通点がある。失敗できないと考えている、日常的なものよりも高い価格帯の買い物が目立つのだ。従来は、そういった特別な買い物ほどリアルの接客が選ばれると言われてきたし、購入者もそちらを選んできた。ところが、実際には環境さえ整えば店舗でのリアルよりも買い物がしやすいこともあることに、気づいてしまった。

 販売するための手法は、対面販売、インターネット通販、電話営業、ダイレクトメールや葉書などがある。ここに今回、オンライン接客が加わった。従来の有人チャットでのカスタマーサポートもオンライン接客の一つだが、さらに一歩進んで画面越しで商品を見ながらのやり取りが、コロナ禍によって迫られた側面はあるものの、普及しつつあるのだ。 対面との大きな違いは、やはり商品に直接触れるかどうかという点だろう。しかし、自分の好みや生活スタイルなどを伝えることで、専門知識のあるスタッフからアドバイスをもらったり、気になる商品について動画で説明を受けたり、質問することはできる。手触りや重さなどはわからず、試着もできないが、前述の例のように商品を送って試着できるサービスを組み合わせるやり方も出てきている。

 では、同じインターネット上で完結するインターネット通販とはどう違うのだろうか。両者の大きな違いは、専門知識のあるスタッフからの個別のアドバイスや説明などが得られるかどうかだろう。店舗だと、その道の知識があるスタッフの手が空いていないこともあるが、オンライン接客はたいてい予約制なので、確実に詳しい人と話ができる。写真のみではイメージがわきづらかったり、イメージと違ったりして、失敗してしまうことも多いが、オンライン接客ではその欠点が補える。つまりオンライン接客は、自宅にいながら個別の接客が受けられるという、対面と通販の両方の良いとこ取りとなっているのだ。

 オンライン接客のメリットは、場所を選ばず自宅から受けられる点、画像のみよりもイメージがつかみやすい点、リアルタイムで質問をしたり、個別に希望に沿った接客が受けられたりする点などだろう。何より、購入へのプレッシャーが少なくなるので、冷静に判断できる。そして店舗側からも、遠方の客も対象にできるので営業範囲が広がるメリットがある。

 もちろん、デメリットもある。やり取りが回線状況に左右されてしまう点と、直接商品に触れることができない点だ。しかし、後者は工夫次第でカバーできる面もあり、これからさらに改善が期待できるだろう。

 オンライン接客はコロナ禍で広がったが、平時でもあると助かる人は多いだろう。コロナが収束した後も、選択肢の一つとして残っていきそうだ。

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