警察官の飲み会自粛、解禁か否かはオリンピック次第?

警察官の飲み会自粛、解禁か否かはオリンピック次第?

警察関係者のみが集う店もある

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、警察組織内で飲み会自粛が続く裏事情を探る。

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 シルバーウィーク中、行楽地には多くの観光客が押し寄せた。東京はGoToトラベルキャンペーンの除外解除が決定し、23区内で飲食店の営業短縮要請が解除されたこともあり、街は活気を取り戻しつつある。だが警察組織では、飲み会自粛が解除される様子はないらしい。

「人事異動の時期になっても、送別会すらできない状況。自粛とはいうものの、事実上の禁止令です」

 ある警視庁幹部はそう嘆いた。自粛が続けられている理由は、新型コロナウイルスの感染予防対策の他にもう1つあるという。

「現状では、アルコールによる事故や不祥事案はないに等しい。幹部的には自粛継続の方が好都合なのでしょう」

 身内の不祥事をどこまでも嫌う警察組織とって、飲み会自粛は思わぬ恩恵を組織にもたらしているという。この恩恵を警察はいつ手放すのだろうか。

「私の考えでしかありませんが、オリンピック開催の判断が出るまでは続くのではないでしょうか。もしも開催が断念されれば、自粛も緩むと思います」

 東京オリンピック開催が決定されれば、警備等の応援に全国から警察官が集められる。そんな彼らのストレス発散は、仲間同士での飲み食いだ。飲み会自粛が継続中ならば、警視庁の警官だけでなく東京に集められた彼らが、飲酒で問題を起こす可能性は限りなく低い。心配の芽を未然に摘めるなら、警視庁として今の時期に飲み会自粛を解除するメリットはほとんどないといえる。

 基本的に警察官は、警察以外の人間との接触にとても気を使う。身内意識が強いのだ。学生時代の友人たちなら心を許せても、社会人になってからの交友関係には人一倍神経を尖らせている者も多い。

 それだけに警察官御用達ではないが、都内には警察のたまり場ともいえる飯屋や飲み屋、カラオケ店などがある。新橋や銀座、六本木で、2000〜3000円程度の警察価格で安く飲み食いさせてくれるこれらの店では、いつ行ってもベテランの警察官たちが飲んで騒いで、マイクを奪いあっていたものだ。

 六本木の裏通りにあった飯屋では、こんな現場に遭遇したことがある。

 外観は古いそば屋のようなたたずまいの古びた店だ。ガタガタと音を立てて木の引き戸を引くと、最初に目に入るのは壁に貼られた何枚もの所轄署から送られた感謝状。昭和感ただよう店の中で、元刑事たちとレトロなテーブルを囲んでビールを飲んでいた時のことだ。

 ガッと勢いよく戸を開け、ガタイのいい若い男がのれんをくぐって入ってきた。誰かが戸を開けると、座っていた警察官らは顔を動かすことなく一斉にその人間に視線を走らせる。警察官の性だ。目の端で捉え、身内か否か一瞬でその匂いを嗅ぎわけるのだ。誰も意識してやっているわけではなく、記憶にも残らない動作だ。だがこの時は違った。

 男が顔を上げた瞬間、座っていた警察官たちの表情が固まった。店内が瞬時に凍りついた。男は一瞬にして変わった店の空気に入り口で立ち止まり、微動だにせずテーブルからテーブルへ視線だけを動かした。

 その視線が一緒にビールを飲んでいた元刑事の顔の上で止まった。男は元刑事の顔を凝視すると深く息を吸い込み、店内に足を踏み入れた。そのまま隅にあるテーブルに座る。警察官たちの視線が男の動きを追う。誰も声を発しない。誰も音を立てない。女将が近寄って水を置くと、男は低い声で丼物を頼んだ。コップを持ち上げ水を一口ごくりと飲む。コップを置くと、ポケットからスマホを取り出し、何事もなかったように画面を操作し始めた

 動きを止めていた警察官たちは、これをきっかけに再び飲み始めた。だがこれまでのリラックスムードは消え、店内はピリピリしていた。誰もが視線の片隅で男を捉えて離さない。

「あれは誰だ?」

 元刑事に小声で尋ねると、彼はこう答えた。

「関東連合の幹部だ。俺がかけたヤツだ」

“かけたヤツ”とは“手錠をかけたヤツ”の意味である。男は元刑事が現役の時に逮捕した半グレの関東連合の幹部だったのだ。腹をすかせて歩いていた時、安そうな飯屋ののれんが目に入り、そこが警察のたまり場とは知らずに入ったのだろう。男は丼を食い終わると、すっと店から出て行った。

「飯を食っていっただけ大したもんだ」

 元刑事は、テーブルの上に残された空っぽの丼を顎で指してそう言った。

 河岸を変えようと店を出て、元刑事行きつけのカラオケスナックに向かった。チリンチリンと呼び鈴が鳴る扉を開けると、なぜか制服姿の警察官が2人、目の前にすっくと立っていた。店の奥には見覚えのある顔がのぞく。

 ママが耳打ちをして、苦笑いしながら首をすくめた。

「飲み過ぎて大騒ぎしちゃってね。あまりにうるさくて近所から苦情が出たみたい」

 大音量でカラオケしていたのは所轄の署長だった。苦情処理に行ったら、自分の署の署長が騒いでいたなんて、交番勤務の警察官にとっては悲劇でしかない。

 飲み会自粛で警察官が寄りつかなくなったこうした店には、今、どんな客が顔を出しているのだろうか。

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