アパレル倒産ラッシュ 来春に深刻化は不可避な情勢か

アパレル倒産ラッシュ 来春に深刻化は不可避な情勢か

アパレル来春に続々倒産か

アパレル倒産ラッシュ 来春に深刻化は不可避な情勢か

コロナ禍の5月に倒産した大手アパレルメーカーのレナウン(時事通信フォト)

 長期間に及ぶコロナ休業や外出自粛によって大打撃を受けたアパレル業界。ブランド規模の大小を問わず“倒産ラッシュ”が起きるのではないかと懸念されていたが、今のところ何とか持ちこたえている印象も受ける。だが、「本当の危機はこれから訪れる」と指摘するのは、ファッションジャーナリストの南充浩氏だ。

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 今春の新型コロナウイルスによる大規模な店舗休業によって、これまで経営が悪化していたアパレルがとどめを刺され、倒産に至りました。

 その中には、かつて日本一だった「レナウン」も含まれていたため、主要顧客の年配層には大きな衝撃が走りました。また経営破綻ではありませんが、同じく経営の悪化によって「セシルマクビー」が全店を閉鎖し、ブランドを終了させることも発表しました。こちらは多くの女性に衝撃を与えました。これが6月までの話です。

 その後、店舗営業は再開されましたが、どこも売上高のV字回復には至っていないため、「6月以降もアパレルの倒産ラッシュが起きるのでは?」と業界の内外を問わず大きな懸念事項となっていました。

 ところが、7月、8月はほとんど倒産が見られないまま過ぎ、9月も無事に終わりました。ではどうして、6月以降のアパレルの倒産ラッシュが回避されたのでしょうか。その理由について考えてみたいと思います。

 今年3月から始まった営業時間短縮や店舗休業によってアパレル業界はちょっとしたパニックに陥りました。なにせ、3月、4月はアパレル業界ではもっとも洋服が売れる時期のひとつです。そこがまるまる休業になるわけですから、作ったり仕入れたりした商品はほとんど売れません。

 商品が売れないということは製造費や仕入れ代を回収できないことになり、手元の資金が大きくショートする可能性が高まります。このため、3月から在庫処分業者に在庫の買い取り要請が急激に増えました。これについては各業者が口を揃えているので、間違いない動きです。

倒産ラッシュの本格化は2021年春か

 しかし、5月の緊急事態宣言解除以降、在庫処分業者への不良在庫の買い取り要請は、当初見込まれていたほどには増えませんでした。

 もちろん、アパレル各社の在庫所有数も個々に違えば、財務内容も異なります。引き続き在庫引き取りを要請したアパレルもありましたが、6月以降は要請しないまま過ごしたアパレルも珍しくありませんでした。

 その理由はいくつか考えられますが、まず6月の営業再開からなし崩し的に各店頭で始まった春夏物バーゲンセールやインターネット通販での割引在庫処分などがある程度効果があったと考えられます。もちろん、ブランド・店舗間によって売れ行きの好不調に格差があったことは言うまでもありませんが、九死に一生を得たアパレルも少なくありませんでした。

 そして、政府や自治体等が矢継ぎ早に打ち出した金融支援によって一息つけたというアパレルも想像以上に多かったのです。私の知り合いの在庫処分業者も話していましたが、持続化給付金などの資金援助は、通常の助成金や補助金よりも申し込みも審査方法も簡素化されており、支給されやすくなっているといいます。

 また、政府の意向を受けた各銀行は、融資の枠や審査基準を大幅に緩めています。ですから、通常よりもずっと融資を受けやすくなっているのです。前出の業者によると、「政府の支援金と金融機関の融資によって年内は持ちこたえるメドがついた。年内は在庫処分をする必要がなくなった」と胸をなでおろすアパレルが想像以上にいるそうです。

 しかし、政府からの支援金はこれから毎年継続されるわけではありませんし、銀行からの融資はいずれ返済が始まります。今回の支給こそがイレギュラーだったと見るべきでしょう。

 そのため、店頭の売れ行きが2019年レベルに回復しないことには、2021年初頭からは過剰在庫を抱えて資金ショートするアパレルが続出するのではないかと考えられます。前出の在庫処分業者も同様の危機感を抱いています。

 また、国内有名ブランドからの委託を受けてアウトレット店をマネジメントしている知り合いの業者も、「来年の春から、今回一息ついたアパレルの経営破綻や倒産ラッシュが始まるのではないか」と心配しています。在庫処分やアウトレット店といった“アパレル業務の裏”を知り尽くしている関係者が一様に同じ見解であるところにリアルさが感じられます。

在庫過剰の商習慣はリセットできない

 今回のコロナショックでアパレル業界の苦戦が深刻化しましたが、報道などでは「これを機に在庫を多く抱える供給過剰の商慣習を見直すべき」という論調も多く見受けられます。基本的には賛成ですが、何十年と続いてきた商慣習をいきなりリセットするわけにはいきません。それこそ多くの倒産企業が生まれ、失業者が急増するでしょう。

 物販で生計を立てていない人には実感がわかないかと思いますが、物販では100億円の売上高を稼ごうとするなら100億円分の在庫量が必要になります。50億円分の在庫量しかなければ完売しても売上高は50億円にしかならないのです。

 資本主義経済における企業の目的とは成長することですから、これまでずっと前年実績を上回る売上高が目標に掲げられてきたのです。そして、それに比例して用意する商品量も増え続けてきたというのがアパレル業界の構造です。

 そして、在庫量が増えたからといって、一律に新規の仕入れ量や生産量を減らせば、売上高が確実に下がるばかりか、下手をすると営業利益(本業による儲け)も減りかねません。

 基本的に多くのアパレル店舗はトータルアイテムを販売しています。Tシャツだけジーンズだけワイシャツだけという単品販売の店は多くありません。ジャケット、ズボン、シャツ、Tシャツ、セーターという具合にトータルアイテムを販売しています。そして、それぞれ数種類の色・柄があります。それを一律削減してしまえば、本来なら売れ筋になる品番も減らすことになり、販売の機会損失が起きてしまいます。

 ですから、アパレルが新規の仕入れ品や商品製造を削減するにしても、「Aという商品はまったく減らさないが、Bという商品は7割減らす」というような自店舗・自ブランドの特性と照らし合わせた分析が必要となるのです。

 この分析は方程式のように決まったロジックが存在するわけではありません。なぜなら、売れ筋・死に筋はブランドごとにまったく異なるからです。要するに、供給量を削減するためには各社・各ブランドそれぞれでの精緻な分析が必要となり、その分析の精度を上げることが唯一の正解なのです。

 来年春からの倒産ラッシュを現実化させないためにも、各ブランドは自社の置かれた経営実態を正確に踏まえたうえで、早期の売り上げ回復に努めていただくことを切に願っています。

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