足立区議の性的マイノリティ差別発言で読み取れる時代の変化

足立区議の性的マイノリティ差別発言で読み取れる時代の変化

性的マイノリティへの差別的発言が大きな波紋を広げた足立区の白石正輝・区議(共同通信イメージズ)

 大きな批判を呼んだ「L(レズビアン)だってG(ゲイ)だって法律に守られてるんじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」という東京都足立区の白石正輝・区議の性的マイノリティへの差別的な発言。そもそもどうしてこのような発言が出るのか。長年ジェンダー問題に取り組んできたジャーナリストの治部れんげ氏と、LGBTが働きやすい職場づくりを支援し、LGBT関連の調査なども実施しているNPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀氏が、その背景にある問題について語り合った。

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治部:こういう人に意思決定を任せていたら、地域が滅びますよ。『「男女格差後進国」の衝撃』という本の中にも書いたんですけど、人口が減っていたり、経済的に立ち行かなくなったり、労働力が減っている地域って、昔ながらの保守的な価値観を残しているところが結構ある。そうするとやっぱり、若い人が嫌になって出て行ってしまうんですね。若い女性が戻ってこないとか、男らしさを押し付けられることに違和感を覚えるような男性が「ちょっと無理」みたいな感じになったり。多分、この区議の発言ってそういうことと同じ枠組みにあると思う。まず、論理的に根拠がないですよね。村木さんのご著書(『虹色チェンジメーカー』)の中に、世界の同性婚承認国を示している地図がありますよね。そういう国と比べたとき、日本での出生率がどうなのか、足立区はどうなのかっていうことが言えるといいかもしれないですね。

村木:実は欧米の同性婚承認国の中には、出生率が下がっていないばかりか、むしろ上がっている国もあるんです。日本でも女性カップルをはじめLGBTで子どもを持つ方も増えています。私はそういう方たちとつながりが深いのですが、みなさん、今回の発言にはものすごくショックを受けていました……。この区議は「自分の周りには(LGBTが)いないから理解できない」とも言っていますが、周囲だって「絶対にこんな人には言えない」って思っていますよね。こんな発言をしていると、ますますLGBTが見えなくなるんです。

治部:最近は、このような差別的な発言は放置してもらえなくなりましたね。6年前の東京都議会での塩村文夏都議へのセクハラやじの時も、やじを飛ばした議員の特定と処分を求めるオンライン署名が「9万筆」集まりました。ちなみにこの署名の発起人は男性でした。

村木:5年前の海老名市議による「同性愛者は『異常動物』発言」のときも、市議会が辞職勧告を可決していました。

治部:(10月)12日(月)に足立区議会のホームページに、鹿沼昭・区議会議長名でお詫びが掲載されました。これによると、議長は、白石議員に公の場での謝罪と発言の撤回を強く求めたそうです。その結果、本人から謝罪と撤回の申し出があったということでした。当初、メディアの取材に対して開き直っていた白石議員が態度を一変させたこと、区議会議長がそれを求めたことは、時代の変化を感じます。

「男女」にはデータがあるが、「LGBT」はカウントされない

村木:今回のような「同性愛者が増えると少子化が進む」的な発言に物申すときに、「じゃあ、少子化が進まない証拠はあるの?」って聞かれることがあるんです。あの発言の直後にフィンランド大使館の公式アカウントが、フィンランドではレズビアンカップルの4割に子どもがいるというツイートをしていました。狙ったようなタイミングでしたが、すごく心強かったです(笑)。それを言えるというのは、きちんと国が統計をとっているということ。でも日本では、いったいどれだけの同性カップルがいるのか、誰も把握できてないんです。

治部:確かに「男女」ならデータがありますもんね。東日本大震災のあと、復興関連で岩手などに取材に行きましたが、行政が男女別のデータを持っていないと、どうなったかっていうところがわからない。「東日本大震災女性支援ネットワーク」という女性支援に関わる人々で作った団体が行なった調査では、避難所で女性や子どもが性犯罪被害に遭った事実が明らかになりました。この調査をもとにNHKなどの報道があり、問題の存在が一般に知られるようになっています。やはり調査データは問題把握、改善の第一歩といえます。また、途上国では、津波などがあったときに女性のほうがたくさん亡くなっていることがあります。それは夫がOKしてくれないと買い物にも行けないような宗教的規範があるからなんですが、それも数字が見えて初めてわかる。データって命にも関わることかもしれないですね。

村木:ちょうど今、国勢調査が行なわれていますけれども、10年前から国勢調査で同性カップルを集計・公表してくださいとの声が上がっていながら、国がなかなかそれを認めてくれないという問題があります。例えば、「女性×女性」で、「世帯主×配偶者」と書いて、「子どもがいる」と書けば、集計も可能なわけですよね。そういう同性カップルの実態を、きちんとカウントしていただきたい。同性カップルだけでなく、トランスジェンダーで子どもがいる人もけっこう多い。そういうところがまだ社会的に見えてないんです。

治部:勝間和代さんがカミングアウトしたとき、いわゆる異性婚をして子どもができて、そのあとで同性のパートナーができる方っていうのもいらっしゃるんだなぁとわかって。おっしゃるように、同性カップル世帯の統計は必要ですよね。今は行政も企業もLGBTへの関心は高いですから。

【プロフィール】治部れんげ(じぶ・れんげ)/ジャーナリスト。1997年、一橋大学卒。日経BP社にて経済誌記者。2006〜07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、東京大学大学院情報学環客員研究員、一般財団法人女性労働協会評議員など。著書に『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館新書)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)ほか。二児の母。

【プロフィール】村木真紀(むらき・まき)/認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」代表。1974年茨城県生まれ、京都大学総合人間学部卒業。社会保険労務士。日系大手製造業、外資系コンサルティング会社等を経て現職。LGBTQと職場に関する調査、講演活動を行なっている。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー・2016チェンジメーカー賞」受賞。著書に『虹色チェンジメーカー』(小学館新書)がある。

◆構成/後藤純一? 撮影/国府田利光

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