もんじゃの都・月島がタワマン街へ 進む再開発に違和感も

月島でタワーマンション建設を柱とした大規模な再開発事業がスタートし疑問の声

記事まとめ

  • もんじゃ焼きの本場・月島でタワーマンション建設を柱とした大規模な再開発事業が開始
  • 風情ある庶民的な街の雰囲気は失われつつあり、住宅ジャーナリストが疑問を投げかける
  • デベロッパーにとっては「儲かる」、行政は「人口増」という大きなメリットがあるよう

もんじゃの都・月島がタワマン街へ 進む再開発に違和感も

もんじゃの都・月島がタワマン街へ 進む再開発に違和感も

タワマンが林立する晴海、月島の街並み(時事通信フォト)

 11月初旬、「もんじゃ焼き」の本場として知られる東京都中央区月島で地上50階建てのタワーマンション建設を柱とした大規模な再開発事業がスタートした。すでに月島駅、勝どき駅周辺にはタワマンが建ち並び、風情ある庶民的な街の雰囲気は失われつつあるが、行政やデベロッパー主導の強引なタワマン建設に疑問を投げかけるのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。

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 タワーマンションという住形態は、そもそも必要悪である。

 タワマンの住形態は、その居住性や耐久性、地震などの災害に対する脆弱性、あるいは人体に与える健康被害、そこで育つ子どもの育成環境などに多くの問題を抱えている。それらについては、2019年に刊行した拙著『限界のタワーマンション(集英社新書)』でつまびらかにした。

 しかし、首都圏を中心に建設されるタワマンは増える一方である。仮に、タワマンというものを作ることによる何かのメリットがあるとすれば、それは限られた敷地の上により多くの床面積が創出できるということに尽きる。

 つまりは、商業施設やオフィスビルが集中する都心立地に集合住宅を作る場合にこそふさわしい建築形態なのである。

 しかし、この国では基本的にタワマンを「作れるところには必ず作る」という現象が見られる。荒漠とした風景が広がる湾岸の埋め立て地にも、地方都市の畑の真ん中にでも、庶民の慎ましくも和やかな暮らしが営まれている下町商店街のど真ん中にでも、タワマンの建設が可能であるならば、ほぼ必然的に建設計画が立案され、実行されてきた。

 なぜタワマンが作られるかというと、それを開発分譲するマンションデベロッパーが儲かるからである。タワマンは販売できる床面積が大きい。15階建ての普通のマンションよりも、45階建てのタワマンにすれば販売できる床面積は3倍程度に増える。その分、開発事業における売上高が膨らむのだ。

タワマン開発エリア「3分の2ルール」の抜け穴

 また、行政サイドとしては人口が増えれば徴収できる住民税や固定資産税が増える。

 マンションデベロッパーにとっては「儲かる」、行政側は「人口増」という大きなメリットが生まれるタワマン開発も、その周辺で穏やかな暮らしを営んできた住民にとっては迷惑以外の何物でもない。日陰になったり、強力なビル風にさらされたりするケースもある。

 またそのタワマンが開発されるエリア内に、土地や建物を所有していた人はどうなるのか。タワマン建設に賛成する人はいいだろう。自分の権利分を完成したタワマンの住戸と交換することで、新たな住まいを入手できる。

 しかし、タワマン建設に反対する人はどうなるのか。さらに、そのエリア内で住まいや店舗を賃借して住んでいる人、商売をしている人はどうなるのか。

 結論から言えば、開発エリアの3分の2以上の地権者がタワマン開発に賛成した場合、残りの人々は賛成側に回るか、もしくは最後まで反対する場合は第三者が査定する額で土地などの権利を売り渡さなければならない。賃借人は最終的に追い出されてしまう。

 この「3分の2ルール」は2016年の法改正に基づくものだが、抜け穴がある。「3分の2」は権利者の人の数が母数になるのだ。

 ある開発では、デベロッパー側がわずか84平方メートルの雑居ビル敷地を30筆に刻み、借地人を水増しする手法を使って「3分の2」をクリアした。つまり、開発側がやろうと思えばそういったかなりイレギュラーな手法を駆使してでも強引に再開発の認可を取り付け、タワマンを作れてしまうのだ。

月島にタワマンを開発すべき理由はあるか

 こういった手法を使ったのではなさそうだが、つい最近ある再開発組合の設立が認可された。その開発計画に対しては、エリア内はもちろん周辺の住民や地権者が強力な反対運動を繰り広げられ、いくつかの法廷闘争までも行われていた。

 その認可された組合は「月島三丁目南地区市街地再開発組合」という。場所は地下鉄の「月島」駅と「勝どき」駅の間で、清澄通りに面したところ。敷地の一部は「もんじゃ通り」として知られる西仲通りにも面している。

 普通に考えれば、あの場所にタワマンを開発すべき必然的な理由はない。むしろ、昔ながらの庶民的な街並みを保存すべきだろう。

 周辺エリアでの反対運動は「愛する月島を守る会」というグループを中心に行われてきた。私も3年ほど前に取材でいろいろとお話を伺ったことがある。

 その時に強く感じたのは、タワマン開発というのはデベロッパーと行政が我々の目につかないところで手を握ってしまえば、あとはかなり強引にやられてしまうということだ。そして、開発側は他エリアでもノウハウを積み重ねているのに対し、反対住民側は基本的に素人集団のハンディキャップが否めないこと。これは絶望的に不利に働く。

 この開発のように強い反対の声を押しのけてでも事業を進めるやり方には、かなり違和感を抱かざるを得ない。

日本人は“タワマン信仰”から脱するべき

 タワマンは一見華やかな存在だ。聳え立つ威容は、目を見張るというよりは強い圧迫感を放っている。しかし、前述の拙著でも書いた通り、タワマンとはそもそもが耐久力や継続性に大きな問題を孕んだ建造物なのだ。

 月島の開発のように古くからの商店街の真ん中に出来上がったタワマンは、50年後には周辺エリアにとって大きなお荷物的存在となっているかもしれない。つまり、結局のところ多くの人の不幸を作り出してしまう開発となる可能性が高いのだ。

 タワマンに住みたがる日本人はいまだに多く、人気が高いことは確かだ。デベロッパーも、作れば売れるから作ってきたようなところもある。しかし、近年はタワマンという住形態そのものに対する疑念も広がってきた。またタワマンに住むことは、必ずしも「カッコいい」にはつながらなくなっている。

 欧米先進国の人々は、タワマン的な住まいを必要悪と見做しているようだ。特に上品な人には好まれない。強いて言えば、トランプ大統領のような方が好んで住むところだ。

 日本人もそろそろ“タワマン信仰”から脱する時ではないか。特に反対運動が強い場所で強引にタワマンを開発するようなやり方は慎むべきだ。それは未来の不幸の種を撒いていることに気付くべきだろう。

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