
高橋洋一氏「Eテレ売却論」批判に再反論 「売却提案はEテレ周波数帯で番組ではない」
2020年12月13日 15時23分 NEWSポストセブン
2020年12月13日 15時23分 NEWSポストセブン
2020年12月13日 07時05分 NEWSポストセブン
週刊ポスト報道に前田会長も敏感に反応した(時事通信フォト)
菅義偉・首相のブレーンで内閣官房参与の高橋洋一・嘉悦大学教授が『週刊ポスト』のインタビューでぶちあげたEテレ電波帯の売却論が大論争を巻き起こしている。慌てたNHKの前田晃伸・会長は記者会見(12月3日)でこう否定した。
「その雑誌を見ていないので、申し訳ないがわからないです。ただ、Eテレは、NHKらしさの1つの象徴だと思います。それを資産売却すればよいとか、そういう話には全くならないと思います」
NHK擁護派の論客や朝日新聞などの守旧派メディアは、「暴論だ」「反論が相次いでいる」などと高橋氏を論難した。思わぬバッシングにさらされた高橋氏は、週刊ポスト(12月14日発売号)で「NHKの論法に騙されてはいけない」と再反論に立った。8ページにわたる再反論の詳細、NHK側の見解は誌面に譲るが、高橋氏はNHKと擁護派は論点をすり替えていると憤る。
「前田会長が『NHKらしさの象徴』というのはEテレの番組コンテンツのことでしょう。私が売却を提案したのは『Eテレの周波数帯』であって番組ではない。番組はネット配信すればより多く流せる。それをNHKは、私が教育番組を廃止するよう主張したと論点をすり替えているのではないか。この論法に騙されて売却に反対している人が多いのだと思う」
改めて高橋氏のEテレ売却論の要点を整理しておこう。
〈低視聴率のEテレは電波という国民の共有資産を有効に活用していない。それなら電波オークションでEテレの周波数帯を売却し、教育番組はネットで配信すれば、国民は今より多種多様な番組を見ることができるし、NHKは売却によって得られる資金を受信料引き下げや経営スリム化の費用にあてることができる〉
論争の前提としてEテレの現状も押さえておきたい。NHK放送文化研究所の『放送研究と調査 MARCH2020』によると、「Eテレでよく見られている番組」の視聴率は、1位の「アニメ はなかっぱ」が2.1%、2位が「シャキーン!」(1.9%)、3位「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」(1.8%)と、最高でも2%程度。時間帯ごとの平均視聴率は最高が午前7時台の1%台後半、子供が登校・登園して帰宅するまでの午前9時から午後4時までの視聴率はゼロに近い。
前田会長はEテレを「NHKらしさのひとつの象徴」と語ったが、NHKのチャンネル別の予算配分は、とてもEテレに力を入れているようには見えない。2019年度のEテレの予算は621億円で、総合テレビ(2842億円)の5分の1、スポーツ中継など娯楽番組が多いBS1(780億円)より低い。しかも、Eテレ予算は年々減らされているのである。NHKは2018年に放送開始したBS4KやBS8Kの予算を大幅に増やし、その分、他のチャンネルの予算を削っている。地上波では、予算が大きい総合テレビは8億円しか減らしていないのに対し、Eテレは15億円の減だ。(『平成31(2019)年度 収支予算と事業計画の説明資料』より)
実は、NHKはBS放送のチャンネルを1つ廃止する方針だ。来年度からスタートさせる新経営計画(案)で衛星放送を現在の4波から3波に減らし、将来的には2波にすることを検討している。前田会長自身が記者会見で、「今まで波を1個減らすと言いっ放しで、いつ減らすんだって、それも決めないで何だというお叱りもいっぱいありますので、次の中期経営計画で全部、それも見えるようにいたします」と語っているのである。
BSはチャンネルを減らすのに、通信などに転用すればより利用価値が高い周波数帯のEテレは、有効利用されているとはとても言えない現状なのに死守しようとするのは理屈が通らない。一方でNHKは、受信料を払わない世帯に「罰則」を盛り込もうと狙っている。これで「みなさまのNHK」と言えるのだろうか。