玉袋筋太郎「コロナなんかでスナック文化を絶滅させない!」

玉袋筋太郎「コロナなんかでスナック文化を絶滅させない!」

「夜逃げ同然で店を閉めたスナックもある」と話す玉袋

 コロナ禍の深刻化で再び夜の街に大きなしわ寄せが来ている。今年の飲食店の倒産は800件に及ぶ見通しで過去最悪だ。オジサンたちの憩いの場であるスナックも崖っぷちに立たされている。そんな苦境を何とかしようと、芸人で自らも東京・赤坂に『スナック玉ちゃん』を経営する全日本スナック連盟会長の玉袋筋太郎が立ち上がった! “夜の街”応援プロジェクトに取り組む玉袋を直撃した。

──そもそも玉袋さんが全日本スナック連盟の会長になられた経緯から教えてください。

玉袋:全国のスナックを直撃取材する『ナイトスナッカーズ』という番組をやっていたとき、そこのスタッフと話をしていて、シャレっぽく「スナック連盟ってあったらいいよね。自分が会長って言ったら会長だろ?」なんてことを言ってたんですよ。そしたら全国から賛同者が集まってくれて、それなら一般社団法人にしたほうがリアルになるってことで2013年に発足しました。

──そんな“スナック愛”が高じて、ご自身でもスナックをオープンされました。

玉袋:「スナック文化の発展と保存」を目標に掲げて連盟を発足して、いろんなイベントを打ったりしてたんですけど、自分で実態が掴めなきゃダメだってことで、3年半前、ここ(赤坂)にお店をオープンしました。

──スナック連盟の現在の加盟状況などはいかがですか?

玉袋:加盟店は番組のロケで行ったお店の賛同をもらって、シールをペタンと貼ってくる感じかな。それと、いまはカラオケのJOYSOUNDさんと一緒に活動していて、営業マンの方が全国の担当のお店に広げてくれています。加盟店はすでに5000軒は超えてますよ。

 そこから1軒100円でも取れればこっちは“左うちわ”なんだけど、それはしない。営利目的じゃないところが立派でしょ(笑い)。これまではシールを貼った加盟店をホームページで紹介したりしてたけど、こんなコロナ禍になっちゃって……。

スナックのサバイバル術を広める「応援プロジェクト」

──コロナの長期化で、飲食店の倒産が今年1年で800件超えが確実と言われています。スナック業界を取り巻く環境も非常に厳しかったのでは?

玉袋:その800件っていう数字は負債1000万円以上の店でしょ。スナックって個人経営の店が多くて、30万、50万円でもお手上げのところがたくさんあると思うんですよ。だから、実態はもっと深刻でね。コロナで閉店したスナックの中には、ちゃんとした手続きをとって閉める店もあれば、夜逃げする店もあるって聞いてます。もう惨憺たる状況ですよ。

 しかも、1店舗潰れたとしたら、その店には4、5人の従業員がいるわけで、彼ら彼女らも路頭に迷うわけ。(メディアは)何で、そういう数字を出さないんだろうね。さらに言えば、仕入れ先の酒屋さんやおしぼり屋さんにも影響が出る。店を畳んだ数は出てるけど、その背後にある影響は膨大だと思いますよ。

──玉袋さんのお店の状況はいかがですか。

玉袋:ちゃんと感染予防対策をしながら営業してますが、やっぱり厳しいよね。まず満卓30人のところを15人にした。その時点で売り上げは50%減。その後、持続化給付金などを申請して全部もらったけど、それでも年間ではマイナス60%ですよ。だって緊急事態宣言が出た4月、5月は営業自粛要請を受けて、その通りにやったので売り上げゼロだからね。

──そうこうしているうちに第3波が来て、再び時短要請が出ています。そうした中、11月月末から「“夜の街”応援プロジェクト」を始められましたが、取り組み状況はどうですか。

玉袋:プロジェクトとしては、まずは感染予防対策をしっかりやろうということで、精神論ではなく工夫して生き残るための具体的な“サバイバル術”をホームページなどを通じて広めてます。年末にまたこんな状況になっちゃいましたが、これまでと変わらず“楽しいナイトライフ”を味わえるよう、引き続きスナック業界を盛り上げたいと思ってるんです。

「こんな時こそ祭りばやしを鳴らさなきゃ」

──このお店もアクリル板の設置を始めとした対策をきちんと講じていますね。スナックならではの対策はあるのでしょうか。

玉袋:ウチは、まず距離。先ほども言ったように定員を半分にしてディスタンスを取っているし、消毒も徹底してます。そして、(万が一の場合に備えて)感染経路が分かるようにお客さんに名前を書いてもらってます。カラオケも必ずマスク着用で、マイクは1回、1回消毒です。でもね、今年はマスクしてまで歌う人はほとんどいないけど(笑い)。

──テーブル席では、従業員の女性が対面に座ってお酒をつくったりしますか。

玉袋:やっぱり感染を怖がっちゃってね。最初の一杯はずらした形の対面でつくって、後はカウンターの中に入っちゃう。カラオケも歌わず、女の子はカウンターの中。お客さんはセルフで酒をつくる。滑稽な光景ですよ。でも、そんな滑稽さを笑ってくれるお客さんが来てくれてますね。

 ウチのアルバイトレディは芸人をやっている子が多いんだけど、今はそっちの仕事もないしね。ウチだってお客さん半減だからシフトは減らさなきゃいけない。だから女の子は大変ですよ。そんな状況の中でも、頑張ってくれています。

──時短要請の影響も大きいですよね。

玉袋:時短要請が出るまでは20時から24時の営業で、男性は7000円で飲み放題だったけど、今は20時から22時までのわずか2時間の営業で、料金も5000円に下げてます。

 オレも以前は生放送などがある日は、22時に終わってすぐに店に駆けつけていたんだけど、今は営業が22時までだから、店に来る意味がなくなっちゃった。

──感染予防対策をして、なおかつ時短営業。厳しいですね。

玉袋:だからといって後ろ向きになってる場合じゃないんですよ。こういう時こそ、前向きになって応援していくしかないんだって。誰かが銅鑼たたいてさ、ジャンジャカ、ジャンジャカ祭りばやし鳴らさないとダメなんですよ。ただ、オレは精神論ではなくて具体的な対策を示しながら、祭りばやしを叩き続けていきますよ。

スナックは熟成された“ぬか床”

──行政は時短要請に応じた事業者には協力金を支給するとしています。

玉袋:もろ手を挙げて喜んではいられないよね。国の106兆円もの予算を心配しちゃうよ。そりゃ、貰えるもんは貰いたいけど、すべてがおんぶに抱っこでいいのかって。こっちにも意地があるからね。

 だけど、国の財政が心配になると、すべてが不安になっちゃうんだよね。そんな時だからこそ、トップの人が、我慢した先には夢と希望があることを宣言してもらわないと、みんな心理戦で参っちゃうよ。我慢の先に何があるのか、嘘でもいいから言ってほしいね。

 人間の心理なんて、うまくやりゃおまじない次第でさ、いい方向に向かうわけじゃない。みんなのマインドを明るくしていくことが大切だと思う。オレはよく言っているんだけど、“ネガティブな報道”と“明るい嘘”があったら、俺は明るい嘘に張るよ。

──明るい展望がない中でみんなが家に引きこもったら、地域コミュニティの場としての存在価値もあるスナック文化は失われてしまいますね。

玉袋:地方では生存確認の場だったりしますからね(笑い)。まあ、冗談じゃなく、今はスナックという素晴らしい場が絶滅の危機に瀕しているっていう状況になってるんですよ。なくなっちまったらどうなるんだ。

 スナック文化の灯りを消すのは簡単だと思うよ。でも、先輩方が築いてくれた熟成された夜の街の文化を再興するのは大変だよ。そう、スナック文化は、いい“ぬか床”なんだよね。これを残していくにはお客さんが出たり入ったりする繁盛という“攪拌(かくはん)”が必要なんだね。

 全部コロナが悪いんだけどさ、ここで日本が誇るスナック文化をダメにするわけにはいかないよね。

【プロフィール】
玉袋筋太郎/1967年、東京都新宿区出身。ビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と「浅草キッド」を結成。現在はテレビ・ラジオ番組やイベント出演、書籍執筆など幅広く活動中。一般社団法人「全日本スナック連盟」の会長として、スナック文化の啓蒙に取り組み、SNSの拡大にも努めている。2020年11月より「玉ちゃんの“夜の街”応援プロジェクト」始動。YouTubeチャンネル「玉袋筋太郎の『夜Tube』」も配信中。

●聞き手/山田稔(ジャーナリスト)
●撮影/内海裕之

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