アラ還女性ライター 森氏失言に「国際的に糾弾されるほど?」と疑問

アラ還女性ライター 森氏失言に「国際的に糾弾されるほど?」と疑問

辞任することになり、頭を下げる森喜朗氏(時事通信フォト)

 東京五輪の開催予定日まであと5か月というのに、組織委員会のゴタゴタは続く。果たして開催できるのだろうか……。体験取材などでおなじみの女性セブンの“オバ記者”こと野原広子が、森喜朗氏の失言騒動と五輪について、思いを明かす。

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 森喜朗さん(83才)が“失言”で日本中……どころか世界を騒がせて、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長辞任に追い込まれた。でも、私は最初から周囲にこう言っていたの。

「あの発言の何が悪いのかわかんない。80を過ぎたエライさんにマイクを持たせたら、もっとすごいことを言うよ」

 いまにして思えば、いろんな意味でヘタを打ったと思うけれど、 昭和の半ばに茨城の農村部で生まれ育った私もまた、男女平等意識が乏しいんだわ。

「女のくせに」「女だてらに」「女が出しゃばんじゃねえ」「女なんだから」などなど、学校の先生もふつうにそう言っていたもの。といって、男がエライとか、女を指導する立場にある、なんてこれっぽっちも思わなかった。

 バカな父ちゃんをおだてたり叱ったりしながら、母ちゃんが一家の面倒を見ている家が、当時は珍しくなかったのよ。そして、お酒が過ぎた父ちゃんが暴言を吐いたりすると、母ちゃんは怒鳴り返したり、時にはつかみ合いのケンカ。でも、力では男にかなわない。殴られる前に逃げる。

 といっても、ただ逃げることはしない。ケンカの翌日か翌々日か、母ちゃんは町の洋品店に向かう。父ちゃんが生涯、縁のない金額の洋服をバンバン買うために。

 東京のサラリーマン家庭はどうだったか。

 都内に住む私の叔母は、大手精密機器メーカーに勤めていた叔父と結婚した。結核病院の患者と看護婦として知り合った後の結婚だった。そのとき叔母は、年配の患者からこう言われたそうな。「『給料袋を妻に渡す前に開封するようなことが一度でもあったら、そのときは離婚する』。そう約束させなさい」と。

 叔父はその言葉通り、給料を全額そのまま叔母に渡し、週に1度、小遣いの範囲内で競馬を楽しんだ。定年退職して数年後、がんの床についたとき、「もう競馬は卒業だ。あとは息子に全部託すよ」と言って馬券を数枚、従兄弟に渡した。聞けば、当たり馬券は100円券ばかりで、換金したところで合計3620円。

 男は給料を全部妻に渡して、威張る。女は従順なふりをする代わり、家計はがっちり握る。それはそれでバランスが取れていた時代があったのよね。私が結婚した1981年は、すでに給料は振り込み制になっていたけど、「給料に手を出さない」は、サラリーマン男の気概としてまだ残っていたと思う。

 それが大きく変わったのは、私の実感で言うと、男女雇用機会均等法からね。職種も給料も男女差なし。めでたし、めでたし。と言いたいところだけど、正直、ライター業はハナから給料(原稿料)に男女差がないからピンとこない。

 でも、私が1980年代後半に離婚したら、共働きの世の妻たちから愚痴や離婚の相談をしょっちゅう聞くようになったのよ。夫婦不仲の原因は、ほぼ100%、お金。夫は「家事は手伝ってもいいよ」レベルで、家庭内では戦力にならない。それで生活費は男女平等。「あんただって稼いでいるんだから」というのが男の言い分だけど、やってらんないって。

 で、話を元に戻して、森さんの発言だけど、昭和初期生まれの男は「女性は……」と言うときの口調が甘いのよ。上から、という言い方をしてもいい。おじいちゃんが孫娘に向ける視線をどこかに残したまま、公の場に出ちゃう。

 多様性が求められるグローバルな世界で、しかもそれを強く意識すべき五輪という場で、女性を軽視するような発言を平気でするなんて……などと言ったところで、当の本人は意味をよく理解していないし、失言とは思っていないんじゃないかと思う。

 その意識がダメだ、老害だ、という批判はきっと正しいんだと思う。けど、あえて言うけど、それは国際的に糾弾されるほどか。日本中で袋叩きにしなくちゃならないか、と昭和に育った私は思うわけ。

 森さんがヘタを打ったのは、そっちじゃない。コロナ禍の中、東京五輪をやるの、やらないの!? 五輪景気を当て込んで投資した企業のお金はどうなるの!? 飲食店や個人商店に勤めていた少なからずの人々が失業して、今月は補助金でなんとかしのいでも、来月は、再来月は……!?

 日本中が不安でパンパンになっているときに、トップの座に居座る高齢者はとても微妙な立場に立っている、ということに気づかないと。森さんは東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長職は無給だったと言うけど、その実、「五輪貴族だった」という報道もあって、「いままでさんざん甘い汁を吸ってきたくせに」と庶民の多くは思ってる。

 森さんはじめ、高齢のトップの不幸は、コロナ禍は長年の経験と知恵が生かされない、前代未聞の災害ということ。もちろん、若い有能な人がトップに立っても変わりがないかもしれないよ。けど、「じゃあ、なんで高い手当をもらってそこにいるの? 何、エラそうなこと言っているの?」というような冷たい目になるんだって。そんな空気の中、失言は1ミリも許されなかったんだよね。

 それにしても、コロナ禍で開催が危ぶまれているのに、運営組織がこんなに頼りなくて、東京五輪ってホントに実現できるのかしら……。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2021年3月4日号

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