アスリートのメンタルの強さ、どう鍛えている? 日常生活にも生かせるトレーニング法とは

アスリートのメンタルの強さ、どう鍛えている? 日常生活にも生かせるトレーニング法とは

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 東京オリンピックの卓球混合ダブルスで7月26日、伊藤美誠選手と水谷隼選手が日本卓球界初の金メダルを獲得した。その後28日、水谷選手は自身の公式ツイッターで「とある国から、『○ね、くたばれ、消えろ』とかめっちゃDMくるんだけど免疫ありすぎる俺の心には1ミリもダメージない」とツイート。すると、これに対して「人種差別やヘイトの要素がある」という意見もある一方で、誹謗中傷に対するポジティブな捉え方については「メンタルが強い」と称賛する声が多く上がった。結果的に賛否が分かれたこのツイートは、翌29日に削除された。

 ?>>卓球金メダルの水谷「とある国から『くたばれ、消えろ』」誹謗中傷DM明かす 「とある国ってあの国?」発信源への憶測も飛び交う<<???

 アスリートといえば、こうしたSNSでの誹謗中傷も含め、多くのメンタルダメージが想定される。例えば、プレーに関しては「負けるかもしれない」という不安や、負けが続くと「もう自分は勝てない」という思いに襲われるなど、精神的な緊張状態に直面することが多い。また、日頃から世話になっているトレーニングコーチや応援してくれているファンの期待に応えたいというプレッシャー、あるいは私生活での精神的トラブルを試合に持ち込まないようにするなど精神的な負担が大きく、メンタルの強さが欠かせない。

 アスリートはいったいどのようにしてメンタルを鍛えているのだろうか。

 近年、トレーニングの一環として専属のメンタルトレーナーからメンタルトレーニングを受けているアスリートは多い。代表的なメンタルトレーニングの技法としては、以下のようなものがある。

 何よりもまずは「目標設定」が重要だ。現在の自分の能力を考慮して、110〜120%の努力で頑張れば達成できそうな目標を立てることで、モチベーションを維持しつつ能力を引き上げる可能性が高くなる。

 試合開始の直前など緊張、不安を感じる場面でリラックスできるようになるための「リラクセーション法」も用いられている。腹がへこむようにゆっくりと口から息を吐き切って鼻から大きく吸い込む腹式呼吸を繰り返す「呼吸法」や、体の各部位の筋肉を緊張させたり緩めたりすることを繰り返し筋緊張をほぐす「漸進的筋弛緩法」などの技法を身につける。

 「サイキングアップ」はメンタルコントロール法の一種で、リラクセーション法とは反対に、試合に臨む直前に気合を入れたり、気持ちを奮い立たせるために行われる。方法はさまざまで、代表的なものでは体の一部を軽くたたく、大きな声を出す、気分が上がる音楽を聴くなどがあり、自分に合った方法を決めてルーティン化することで、心身ともに試合に適した状態に入りやすくなる。チーム競技で、みんなで輪になって掛け声を出したり、ハイタッチするなどもこれにあたる。

 一般的にも知られている「イメージトレーニング」では、イメージの中で自分の体を理想的な動きになるように操作したり、試合の流れや戦略パターンを繰り返しイメージする。こうしたイメージトレーニングをすることによって、現実的にも理想のパフォーマンスに近づき、戦略を成功させるためにベストな動きができるようになる。また、試合中のシーンを何度もイメージすれば場慣れした感覚を得られるため、試合の際の緊張感の軽減にもつながる。

 世界のトップアスリートだけでなく、AppleやGoogleなどの一流企業でも取り入れられている「マインドフルネス瞑想」は、過去や未来について考えず、価値判断することなく「今この瞬間」をありのままに受け入れるという意識の状態を瞑想によって作り上げるメンタルトレーニングの技法だ。リラックス効果はもちろん、試合に欠かせない集中力・記憶力のアップや睡眠の質の向上、ストレスに強くなるなど、さまざまな効果が認められている。やり方としては、まずあぐらをかいて姿勢を正し、まぶたを薄く開けた状態で視線を落とし、自分の自然な呼吸のみに意識を置くようにする。もし他の思考に気が散っても、また呼吸に意識を戻すことを繰り返し、なるべく余計なことは考えないようにする。時間は1日5分から10分程度が目安とされており、継続的に行うことで効果が感じられるようになる。

 「ポジティブ思考」にも、集中力を高め、能力を最大限に発揮する効果があるが、ポジティブ思考を効率良く習慣づけるためには、ネガティブな思い込みである「認知の歪(ゆが)み」に気づき、改善するという段階が必要になる。認知の歪みに気づくためには、参考資料などで学んだり、カウンセリングを受けるのも良い。認知の歪みを認識し改善することによって、不安や緊張、怒りなどのネガティブな感情に支配されにくくなり、ポジティブ思考が習慣化しやすくなる。

 また、独り言や頭の中でのつぶやきをさす「セルフトーク」や、他人とのコミュニケーション、日記を書くことなどにおいて、その都度肯定的な言葉を使うトレーニングで、ポジティブな考え方を習慣づけることができる。

 このように、自分の感情をコントロールしてストレス耐性を上げるメンタルトレーニングはアスリートに限らず、日常生活でも自分の感情や他人の言葉に振り回されにくくなり、これまでの悩みやストレスを軽減・解消する効果がある。また、こうした変化は人生における幸福度を高め、全体的な生活の質(QOL)を向上させることができる。

文:心理カウンセラー 吉田明日香

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