教育費のピークをどう乗り切るか?奨学金や教育ローン活用の「知恵」も必要

教育費のピークをどう乗り切るか?奨学金や教育ローン活用の「知恵」も必要

日本政策金融公庫 常務取締役 岡部修氏による開演の挨拶

 12月3日、日本政策金融公庫(JFC)主催による「保護者と生徒ご本人のための教育費セミナー」が東京・大手町ファーストスクエアカンファレンスで開催された。この教育費セミナーは、日本政策金融公庫、日本学生支援機構、日本FP協会の3機関が連携したもので、昨年度に続き今回で2回目となる。中学生・高校生・大学生の子どもを持つ保護者が数多く詰めかけ、会場は盛況を呈した。

 まもなく本格的に受験シーズンを迎えるこの時期、受験生を持つ保護者にとっては目の前の学費の準備も気になるところだろう。また、受験生の保護者でなくとも、今後どの程度の教育費をどのように準備すれば良いのか、そして奨学金や教育ローンをどのように活用すれば良いのかは、非常に関心が高いものと思われる。教育費の準備についての基本的な知識や重要ポイントを中心に、当セミナーのようすをレポートする。

まずは進学にかかるお金を知る

 開催の挨拶に続き、ファイナンシャルプランナー有田美津子氏の講演「教育費を乗り越える知恵〜奨学金と教育ローンの借り方と返し方〜」が始まった。有田氏は、銀行での個人向け融資業務を担当した経験もあり、また子育て世代向けの相談やセミナー、執筆活動にも多くの実績がある。

 最初に、中学から大学卒業まで子どもの学習にかかるお金はいくらなのか、まずはしっかりと把握することの大切さがガイドされた。文部科学省の「平成26年度子供の学習費調査」を元にした概算では、中学から大学まですべて公立(国立大学・自宅通学)の場合、およそ510万円。すべて私立(私立理系・自宅通学)の場合は、およそ1,223万円。大学のみ私立(私立文系・自宅通学)の場合は、およそ654万円。これらは目安であり、特に大学に関しては、学校や学部によって必要になるお金が大きく異なることに注意が必要となる。国立と私立の違いだけでなく、文系と理系の違い、そして特に私立の医学部になると2,000万円を超える場合もある。また、自宅通学か下宿での通学なのかによっても大きな差異が生まれる。

日本FP協会CFP認定者 有田美津子氏の講演からスタート
不足する金額を知ることが重要

 有田氏からは、将来における教育費を把握するために、何年後にいくら必要になるのかシミュレーションが必要であることが示された。今後、大学卒業までに毎年いくらかかるのかを、文部科学省「子供の学習費調査」などの統計資料も参考にしながら、自分で予想して積算していく方法である。大学卒業までの合計額を算出。その合計額から「預貯金・学資保険などですでに蓄えているお金」「生活費やボーナスから出せるお金」「バイトなど子ども自身が調達できるお金」を差し引いて教育費に「不足するお金」を確かめる。

「先取り貯蓄」で家計をシステム化

 「不足するお金」を確かめたあとは、どうやってその資金を準備するか。有田氏は「先取り貯蓄」をアドバイス。「先取り貯蓄」とは、収入からまず先に「貯蓄額=教育費」を差し引き、残りを月々の支出として生活する、いわば家計をシステム化することでストレスなく貯蓄するといった考え方である。たとえば、お子さんが現在8歳ならば18歳までの10年間で100万円を準備するとしよう。月々5,000円×12か月×10年で60万円、ボーナス時20,000円×年2回×10年で40万円、計100万円となる。もちろん無理のない範囲で貯蓄額を設定することが重要となる。

 先取り貯蓄を実行するために便利な金融商品も紹介された。会社で制度が用意されているならば「財形貯蓄」、信用金庫などが扱う「定期積金」、銀行やネットバンクなどの「積立定期預金」、ゆうちょ銀行の「自動積立定額貯金」など、どれも給料日に自動的に振替すればコツコツと貯められる商品。また、教育費のための貯蓄ならば、やはり元本割れしない商品が鉄則となる。

足りない場合は奨学金

 先取り貯蓄を実行しても足りない場合は、やはり「奨学金」を検討することになるだろう。奨学金といっても、大学独自に用意している奨学金、地方自治体による奨学金、育英団体や企業が実施している奨学金などさまざまなものがある。また返済の義務がある「貸与型」と、基本的に返済の義務がない「給付型」の違いも知っておくことが重要。有田氏が強調したのは、「貸与型」の基本は“子どもが借りて子どもが返す”という仕組みであること。借りた本人のライフプランに合わせた返済計画が必要になること、支給は入学後の4月下旬から5月になるため、入学前にかかるお金には利用できないことなどが指摘された。なお、当セミナーを共催する日本学生支援機構(JASSO)では、借りる前にシミュレーションできるサイトが用意されている。

どうしても足りない場合は教育ローン

 奨学金でも足りない、あるいは受験時や入学前に必要なお金を準備したい場合は、「教育ローン」という選択肢もある。当セミナーの主催である日本政策金融公庫では、「国の教育ローン」が利用できる。5年から最長15年までの返済期間があり、低金利政策の影響もあって2017年12月3日現在の金利は固定で1.76%と低い水準になっている。有田氏からは“教育ローンの原則は親が借りて親が返す”という仕組みであること、国の教育ローンでは年収に上限がある一方で、銀行の教育ローンでは年収に下限があることが説明された。また、有田氏自身のこれまでの相談経験から、教育ローンは親自身の老後資金を圧迫する可能性があることが指摘された。

奨学金の情報は正確にキャッチ

 有田氏の講演に続き、独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)の担当者から、奨学金制度、特に貸与型奨学金を中心とした説明が実施された。日本学生支援機構は非営利で奨学金制度を運営している国の団体で、教育の機会均等を目的に、返済義務のある「貸与型奨学金」と平成29年度からはじまった返済義務がない「給付型奨学金」(※)を学生本人に対して支給している。

※ 現在、給付型奨学金の採用における家計基準は、家計支持者(父母、父母がいない場合に家計を支える人)が住民税非課税である者、生活保護受給世帯の者、社会的養護を必要とする者となっている。

 貸与型奨学金には、利子が付かないタイプの第一種奨学金と利子が付く第二種奨学金があり、奨学金を得るためには成績や所得などの採用基準が存在する。第一種奨学金の場合、高校1年から申込時までの成績の平均値が3.5以上、前年の家計収入が747万円以下(4人世帯の場合)となっており、第二種の場合は学力・家計の基準が第一種よりもゆるやかなものとなっている。また、日本学生支援機構の奨学金は4月からの支給のため、受験費用や推薦入試、入学前にかかる納付金の支払いなどには利用が難しいため注意が必要だ。

 奨学金を返済するのは「子ども」本人である。大学を卒業した後の7か月後に返済が始まる。たとえば、月額54,000円の貸与を無利子で受けた場合、その貸与総額は4年間で2,592,000円となる。返済年数を15年とすると、毎月の返済額は14,400円。有田氏の講演にもあったように、大学卒業時にこれだけの額を背負って社会人生活をスタートすることになるため、子ども本人のライフプランをしっかりと家族で話し合ったうえで、貸与型奨学金を利用することが望ましいだろう。

日本学生支援機構の担当者による奨学金制度の講演
親子での話し合いは、高校3年生になる前に

 日本学生支援機構の担当者からは、学生本人の“学びたい”という気持ちをいかに具体化できるか、そのために奨学金をどのように活用していくべきか、早くから親子で話し合うことが重要という指摘があった。進学する前に貸与奨学金を申し込むことができる「予約採用」の場合は、高校3年生の5月から受付が開始される。そのため、親子で話し合うのは高校3年生になる前が望ましい。話し合った結果、奨学金を利用する可能性が少しでもあるならば手続きをしておく。結果として奨学金を利用しなくなってもペナルティーなどは発生しない。

お金の管理や返済は本人が行う

 返済における延滞の原因は、その多くが、転居届の忘れや日本学生支援機構からの通知の確認漏れとなっている。奨学金は本人名義の口座へ振り込まれ、また返済の手続きも本人が行う。返済できない場合は「減額返還制度」や「減額期限猶予制度」が利用できるため、日本学生支援機構への相談や連絡は早めに行うことが重要。貸与型奨学金は、返済されたお金を直ちに次の奨学金として貸与することが前提となっている制度である。返済=返還することで、そのお金が次世代につながる奨学金として巡り巡っていくものであるともいえるだろう。

 一方で、昨今、「給付型奨学金」の充実化や教育の無償化に対しても議論が盛んになっている。これから教育費を準備する家庭としては、今ある奨学金制度の正確な理解をベースに、今後の国の奨学金制度の動向や大学独自の奨学金制度、地方自治体・企業が持っている奨学金制度などを含めて、早めに幅広く情報を入手することが必要だろう。

さらに必要なときに便利な「教育ローン」

 続いて、日本政策金融公庫の担当者から「教育ローン」の制度概要、具体的な手続き方法や特長についての説明が行われた。

 日本政策金融公庫は、平成20年10月に発足した100%政府出資の政策金融機関である。教育費に関しては現在、進学に関する家庭の経済的負担の軽減と教育の機会均等を目的に、入学費用だけでなく在学費用にまで拡充した「国の教育ローン」を取り扱っている。

日本政策金融公庫の担当者による「国の教育ローン」の講演
「国の教育ローン」の特長

 「国の教育ローン」の特長としては、まず奨学金制度では対応が難しい入学前の資金や入学後のまとまった資金にも対応していることがあげられるだろう。下宿先を決める際の資金などにも利用できるので、家計の資金繰りの面では助かる場合もあると考えられる。前述した日本学生支援機構の奨学金とも併用が可能で、融資額は子ども1人につき350万円以内(海外留学の資金は最大450万円)、返済期間は15年以内となっている。

 また、厳しい状況にあっても進学をあきらめずに検討できる各種の特例措置も心強い。「母子家庭」「父子家庭」「世帯年収200万円(所得122万円)以内の方」または「子ども3人以上の世帯かつ世帯年収500万円(所得346万円)以内の方」には、金利の引き下げや返済期間の延長などの支援措置を、大規模災害で被災された方にも特例措置を実施している。

教育費と向き合うために必要な視点とは

 当セミナーは、家族全体で教育費を考えるきっかけとして、とても役立つ内容といえるものだった。そして、有田氏のコメントにもあった「教育費は子どもへの投資」という意味について、はたして親としてどのように向き合うことができるのか考えさせられる面もあった。

 どうしても親心が優先し、自分のライフプランを犠牲にしても、子どもの将来のためにと無計画に教育費を捻出してしまうケースもあるのではないだろうか。また、学生本人が貸与型の奨学金で返済に苦しむケースなどは、自分への“投資”として考えた場合、本当に必要なものといえるのだろうか。

 教育費として使う際の“目的”をさらに明確にすることが、最初のステップとなる。教育費を学生本人のやりたいことや家族が持っている夢を実現するための手段と考え、そのためにいかに賢く上手に、しかも家族や本人の将来の負担にならないよう、計画的にお金を準備することができるかが重要なポイントと考えられる。大学進学だけでなく、その先にどのような職業に就こうとするのかといったキャリアプランへの展望なども、親子で話し合えると良いだろう。

 セミナー終演後には、希望者に対して各機関の担当者によるマネープラン・奨学金・教育ローンなどの個別相談会も実施された。教育費に関する悩みがある場合は、このような機関やファイナンシャルプランナーに相談することも有効と考えられる。また、各機関のサイトも非常に情報が充実しているので、教育費を検討する場合は利用してほしい。

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