「接種券はあるけれど・・・」ワクチンを”打てない人”の悩み

「接種券はあるけれど・・・」ワクチンを”打てない人”の悩み

「接種券はあるけれど・・・」ワクチンを”打てない人”の悩み

「副反応が怖いから打たない」「若者は重症化しにくいから受けなくても大丈夫」ネット上でワクチンを打たない判断をした人たちの意見が度々取り上げられている。そんな中、ワクチンを体質的に打てない人たちがいる。

■アナフィラキシーで予防接種ができない女性

都内に住む会社員の女性Aさん。中学2年の時に「インフルエンザ」の予防接種を受け、アナフィラキシーの症状が出た経験から、新型コロナウイルスのワクチンがあっても、打てない一人だ。

Aさん(20代・女性)

「本当は打ちたいけど、やっぱり何かあると怖い。今までインフルエンザの予防接種も控えた方がいいと言われてきたので、どうすればいいのか分からない」

中学2年生の秋、母に連れられ自宅近隣の病院でインフルエンザの予防接種を受けた。その日の体調はいつも通りで、接種自体に違和感はなかった。予防接種を終え母の会計を待っていると、急にめまいに襲われた。その後、母と看護師に肩を抱えられ、待合室の椅子から処置室に向かうまでの間に完全に意識を失う。再び目覚めた時は、ベッドの上。1時間ほど休むと体調が戻り病院を後にした。

Aさん

「お医者さんからは『アナフィラキシーですね』と説明を受けました。母もとても驚いた様子で、予防接種は控えるようにしようと話したのを憶えています」

Aさんがインフルエンザの予防接種を受けてから1か月ほど経ったころ、人生で初めてインフルエンザにかかった。熱が40℃を超え「熱にうなされた経験では、人生で一番辛かった」と振り返る。

そこからは大きな病気にかかることもなく成人。最初に働き始めた会社でインフルエンザの予防接種を受ける機会があり、予診票を見てアナフィラキシーで倒れた経験を思い出した。「アナフィラキシーの経験あり」の項目にチェックを入れ提出すると、担当医師から予防接種を控えるよう言われ、自分が“打てない体質”であると再認識した。

■新型コロナウイルスが蔓延

勤める会社ではテレワークが難しく、現在は出社しての勤務が基本だ。

Aさん

「家族も心配していて、出社しないようにできないのかと言われています。特に母は『あなたはコロナのワクチンが打てないのだから、普通の人よりも注意して毎日を過ごしなさい』とよく電話がかかってきます。会社の上司には既に話していて、ただ周囲には聞かれたら言うけど・・・あんまり自分から打てないことを教える気にはならないです」

■接種に不安があるときは?

Aさんのような“体質的にワクチン接種のリスクが高い人たち”は一体どうすればよいのか。

厚労省のホームページ「新型コロナ Q&A」の中の「ワクチンを接種することができないのはどのような人ですか」という項目には下記のように記されている。

【厚労省ホームページより(一部抜粋)】

一般に、以下の方は、ワクチンを接種することができません。ご自身が当てはまると思われる方は、ワクチンを接種しても良いか、かかりつけ医にご相談ください

・明らかに発熱している方

・重い急性疾患にかかっている方

・ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴のある方

・上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある方

上記に加え、アストラゼネカ社のワクチンの場合は、以下の方も接種することができません。

・ワクチン接種後に血小板減少症を伴う静脈もしくは動脈の血栓症を起こしたことがある方

・毛細血管漏出症候群の既往歴のある方

■届いた新型コロナワクチン接種券、しかし・・・

8月に入り、Aさんが住んでいる自治体でも20代に「接種券」が届いた。封筒を手に取りながら「本当はすぐにでも打ちに行きたい」と話す。

Aさん

「テレワークがないからこそ、毎日電車に乗って通勤する必要があるからこそ、本当は打つことができればと思います。ただもしものことがあったらという気持ちがぬぐえません。なんとかワクチンを打つことができるかどうか病院で診断を受けたいのですが、最近は仕事が忙しく、また今の時期に病院に行って新型コロナに感染するリスクもあると思うと勇気が出ないです」

またAさんと一緒に暮らす男性(20代)はこう話す。

「自分は運良く、8月中に2回目までワクチン接種を終えることができました。彼女がワクチンを打てないということは当初から知っていて、なおさら早く打たなければと感じていました。できれば彼女もワクチンを打てればと思いますが、不安がある中で接種を受けるのは避けた方が良いと思います。だからこそ僕を含め、ワクチンを打てる人たちが率先して打つことが、打てない人たちを新型コロナから守ることに繋がるのだと思います」

◆主治医に相談する方法も・・・

ワクチンパスポートなど、ワクチン接種を促す動きが大きくなりつつある今。国はワクチンを「感染を防止し収束に向かわせる切り札」と位置付ける。しかしその“切り札”があっても、使えない人たちは、もどかしさを感じている。

Aさん

「私でも安心して打てるワクチンが開発されたりすれば良いと思いますけど、そんなにすぐにできるものじゃないのはもちろん分かっています。やっぱり自分が感染することも怖いですけど、自分が気づかない間にかかっていて誰かにうつしてしまうことが一番怖いです。葬式や結婚式など、そういう時だけでも、事前に気軽に検査が受けられる制度があればいいのになと思います」

国際医療福祉大学の松本哲哉教授は、アナフィラキシーの経験がある人がワクチン接種を受けることについて、こう説明する。

「過去にインフルエンザの予防接種でアナフィラキシーが起きている人はルール上、今のファイザーとモデルナは打つことができないと言われています。しかし主治医の判断で、すぐに対応できる状態が整えられていれば、打てないことはありません。その時は万が一に備え、病院で受けるのが望ましいです。どちらにせよ、ワクチンを受けたい時は正直に過去に予防接種などでアナフィラキシーの経験があるということを、担当医に伝えておくというのが大前提です」