「次元の違う闘いになっている」コロナ感染者急増の沖縄、現地の医師が警鐘

「次元の違う闘いになっている」コロナ感染者急増の沖縄、現地の医師が警鐘

「次元の違う闘いになっている」コロナ感染者急増の沖縄、現地の医師が警鐘

新型コロナウイルスの新規感染者数が1400人超(1月7日)と過去最多を更新している沖縄県で、医療現場を担う医師は患者の状況、症状、感染対策全てにおいて、これまでのピークとは「次元の違う闘いになっている」と話します。比較的症状が軽いとされる「オミクロン株」ですが、医療現場は今、どうなっているのでしょうか。沖縄県立中部病院の椎木創一医師に聞きました。

■「調べたら実はコロナだった」コロナ病床以外の患者急増

ーーオミクロン株の疑いの患者の割合は?

既に(コロナ陽性者全体の)8割以上という状況。沖縄県ではPCRの陽性者全員を調べているが、検査が追いついていないので、全員が報告を受けているわけではない。ただ、沖縄県での流行状況を踏まえて1月以降の陽性者は一応「オミクロン疑い」という形で対応している。

ーー今の病院の状況を一言で言うと?

患者、家族、職員、誰もがコロナに感染しうる状況。コロナ患者だけの診療を頑張れば良かった第5波までと少し次元が変わっていて、妊娠中にコロナにかかった人、交通事故で受診したが実はコロナだった、心臓の治療で集中治療室に入る際に調べてみるとコロナ感染者と同居していた、など。すべての患者に対してコロナの対策を講じながら医療をしなければいけなくなる。こういうケースは第5波のときも少しはあったが、それが非常に増えている。そういった意味では病院全体がコロナ対応をしなければならない。コロナ病床だけの問題ではもはやなくなってきている。次元の違う闘いになっているという印象だ。

■第5波を超える「感染力」と「症状の軽さ」が対策を困難に

ーー感染速度の違いが大きい?

スピードと感染者の人数だと思う。当院も12月末まではコロナ病床に1人か2人いるくらいだったが、この5、6日間だけで14、5名までボンと増えてしまった。私の印象としてはかなり軽症の人が多い。肺炎はあるが非常にわずかで、酸素を使う人も少数いるかどうか。集中治療室に入るコロナ患者も正月明けてから今のところ0名。ただその一方で、市中での広がりがとても多すぎて、検査を希望する人も非常に増えてきていて、沖縄県でも無料検査センターはいくつか稼働しているが追いつかない状態。社会全体へのコロナの感染の広がりのスピードと広さというのは今までの第5波までになかったような形のものだと思う。

ーー症状が軽いことで知らぬうちに広がっていくリスクがある?

軽く済むというと安心する人も多いが、逆に言うとそれは感染対策ではやっかいだ。高熱が出る人もいるが、ほとんど熱が出ない人もいる。強い咳という人もあまりおらず、のどがいがいがする、鼻水が出るという程度。今までの少ないオミクロン株疑いの人の経験だが、味覚や嗅覚の異常、そういったこともあまり見受けられない。特徴的な症状がない上に、非常に軽い。なので皆さんが思っているコロナのイメージがもし仮に「重症」や「味や臭いの異常」だとすると、正直それではない。例えば今まで風邪だと思っていたもののなかに、コロナがすでにはまっている状態。

ーーオミクロン株で重い症状の患者はいる?

出る可能性はあるが、現在当院では出ていない。ただ、介護福祉施設等で患者が増えれば、幸いワクチンを接種した高齢者が多いが、その中から重症者が出るということは十分想定されるので、これから先その部分について注意してみなくてはならない。

ーー第6波に備えていたにも関わらず、なぜここまで広がったと思うか?

まず大きく2つあると思う。沖縄の場合、1つは米国基地内での患者発生。明確にはなっていないが、やはりオミクロン株がそこから始まった可能性がある。沖縄では基地に出入りしながら生活している人が多い。それがどちらかと言えば早めにオミクロン株が流行り始めた要因の1つではないか。2つ目がやはり年末年始ということ。特に今回の年末は流行が落ち着いた時期でかなりホッとした中で迎えた。同級生に久しぶりに会いに来たとか、帰省したり、家族での集まり。聞き取りをしていると、10人、20人、そういった規模での集まりが散見される。要するに「気が抜けた」「少し落ち着いた」と思ったところで「久しぶりに」というところが今回の年末年始にちょうどあたった。折悪くそこに広がりやすいオミクロン株もいた。それが今回の波の起爆剤になったと思う。

■もともと厳しい冬の医療現場 医療従事者の感染でマンパワー不足

ーー医療現場の現状は?

まず冬の時期はどんな病気でも患者は多く、当院でもコロナ以外の病床はほぼ満床状態を続けている。こういった中でコロナ患者に関しては重症者はあまり多くいない。第5波までは重症になったコロナ患者をどう診るかが大きな問題で、集中治療室がいっぱいになるということがあったが、今のところその気配はない。ただ逆に、コロナ以外の診療をしているはずのところへのコロナの影響、例えば家族がコロナに感染していたといったことがたびたび起こる。もう1つは、医療従事者の問題。医療従事者の家族や医療従事者自身がワクチンを3回接種したのに感染するということが起きてくる。そうすると、どんどんマンパワーが減っていく。病院全体の機能が弱り、病床をフルに活かせなくなる。第5波までとは違う医療現場の厳しい状況をまねきつつある。

ーーコロナ以外の患者も暫定的にコロナ患者として扱わなくてはならない状況なのか?

どんなに注意していても医療従事者も患者も家族もかかることがある。だからもはやコロナ患者だけに感染対策を頑張ればいい状況ではなくて、全ての患者、医療従事者が同じようにマスクや手洗いなどをしっかり行い、軽い症状でも早めに職員は休む、患者は検査をする。そういった対応をすべての患者に対してやっていかないといけない。

■今後は“重症者”以上に“ばく露者”の病床確保が必要

ーー国の全員入院の見直しについてどのように受け止めているか?

当初、全員入院の目的は感染をしっかり抑える、隔離を確実にするということだったが、市中でこれだけ広がってくるとさすがに病床の使い方は変えなくてはならなくなっている。これから先問題になるのは、コロナではないと思っていた人がコロナに感染している、要するに「ばく露者(ウイルスにさらされている状態)」とかそういった方の数がとてつもなく増えてくると思う。なので通常の医療を行う上ではオミクロン株も含めて隔離のための病床はとることができなくなる。コロナで悪くなった人もある一定数発生するが、それを超えそうなのがばく露者とか、そういった形の部分。なのでそちらのほうの病床を確保しなくてはいけない。

オミクロン株は軽症で済みそうだというのはいい話だが、非常に厄介なのはやはり感染力。しかも軽症で済むがゆえに知らずに感染をしたり、感染をさせたりということが起きている。これは正直病院としてももちろん大変だが、今回の規模は医療の現場ではなく、社会全体、例えば感染者が多くなりすぎて、飛行機を飛ばせないとか、会社が回せないとか、運送業が止まって物が届かないとか、皆さんが必要としているサービスにも影響が出かねない状況。医療現場でも医療従事者の感染がどんどん増えている。この増え方はやはり今までの株とは違う。そういった意味で、もはや医療現場だけ頑張ればいい問題ではなくて、早く流行を止めないと社会全体が困る状況になるんじゃないかと思う。(07日16:30)