有料サイト「架空請求詐欺」を防ぐ方法! 警視庁担当官が指南

有料サイト「架空請求詐欺」を防ぐ方法! 警視庁担当官が指南

記事画像

 誰もが持つ「ひょっとしたら」という小さな疑いがいつしか巨大な被害へと育つ。卑劣な犯罪に立ち向かう手段とは?

<有料サイト『××××』の利用料金が未納になっています。ただちに入金してください。確認できない場合、利用規約に基づき氏名、生年月日、住所、勤務先等を調査し、調査費と延滞料金を合わせて請求します> ある日突然、自分の携帯電話にこんなメールが届き、数万円の利用料金を請求される。身に覚えがない。いや、ひょっとして……。と、実際には見てもいないサイトの利用料金を無差別にメールで請求するのが、架空請求詐欺だ。

 スマートフォンやパソコンでネット上をさまよっていると、気がつくとセクシーな画像を見ていた。そんな経験は誰にでもあるが、ちょっとした引け目につけ込むのが、詐欺集団の手口。島根県では、今年6月に60代男性が実に約2225万円の被害に遭った。この男性に届いた<有料サイトの利用料が未納>というメールが、すべての始まりだった。

 記載されていた番号に電話すると、リサーチ会社を名乗る男に支払い金額を指示され、3回にわたり計約445万円を支払った。さらに続けて「他にも未納分があり、裁判前に全財産を預けたほうがよい」と言われ、2回にわたって計1780万円を、今度は法律事務所職員を名乗る男らに手渡してしまったのだ。

「昔は成人向けなどの有料サイトはパソコンを経由するものが多く、利用者も限られていました。ところが、現在はスマートフォンが普及し、アクセスが非常に簡単になった。それだけに、誰でも“料金が未納だ”と言われれば、もしや、と思い当たる状況になっている。誰もが被害者になりうるんです」 こう解説するのは、警視庁犯罪抑止対策本部特殊詐欺対策担当管理官の芝山賢一警視。

 今回、本誌は最前線で戦う管理官に、恐怖の架空請求詐欺の実態と対策について取材した。警視庁特殊詐欺対策本部が作成した「平成28年上半期における特殊詐欺の状況について」によれば、他の架空請求(金融商品取引)の認知件数が軒並み減っている中、今年上期63件(前年同期49件)と唯一増えているのが、成人向けをはじめとする有料サイト利用料を請求する犯罪。被害者の80%以上が50代以下となっている。

「9月4日までの手集計分も含めた被害状況を見ると、93件中55件と、実は女性の被害者のほうが多くなっている。男性以上に恥ずかしいと感じ、なかなか相談できない、というケースが多いと思われます」(前出の芝山警視=以下同)

 実際、8月9日には静岡県で39歳のパート従業員の女性が現金約400万円を奪われたと、警察署に届け出ている。6月に有料サイトの利用状況を確認するための電話を促すメールが携帯電話に届いた。女性が連絡を入れると「料金が滞納状態になっている。現金を送って」と言われ、女性はコンビニエンスストアから、指定された現金約400万円を指定された関東地方の住所に郵送したという。

「前出の警視庁の資料では93件中、(5)100万円以上の被害に遭ったケースが26件もあります」 象徴的なのが、1000万円近い被害額となった都内在住の50代自営業男性・A氏の場合だ。始まりはA氏の携帯電話に、あるメールが届いたこと。見ると「有料サイトの料金が未納なので10万円払え」という内容だったという。

「被害者の方に未払いの明らかな認識はなかったものの、成人向けのサイトを覗いたことはあったので、メールに記載された連絡先にとりあえず電話した。すると、電話先で対応した相手は“このままでは大変なことになる”と、言葉巧みに誘導したのです」

 その結果、A氏は相手の要求通りに10万円を支払ってしまった。その数日後、新たに連絡があり「他にも未払いのサイトが3社あった」と、さらに20万円を請求されたという。電話の際、相手は「○△×の債権回収センター」などと、誰もが聞いたことがある大手サイトの名前をかたるケースも多い。A氏が20万円を支払うと、たたみかけるように3度目の請求が。今度の内容は「アメリカで開設しているサイトの会社に裁判を起された。日本で裁判をやるには供託金が350万円必要になる」というもの。これもA氏が支払ったところ、請求は止まるどころか、続けて4回目が! 今度は「あなたの資産が裁判のため凍結される。凍結を逃れるために、資産の半分は、うちの貸金庫に預けたほうがいい」という旨の電話があり、A氏は400万円を渡したという。

「実は3回目の後に、弁護士を名乗る電話があり、親切心を装って、被害者の方は資産はどのぐらいあるか尋ねられたそうです。そこで、被害者は800万円と答えていました」 その後、5度目に「残りの400万円も預けて」と連絡があったところで、ようやくA氏は家族に相談。騙されている、と諭されて警察に通報した。このケースでは騙されているフリを続けての「現場設定検挙」で、400万円を受け取りにやって来たバイク便業者に化けた“受け子”は御用となった。しかし、約780万円もの金は一銭も戻ってこなかったというのだ。

 A氏の例を見ていくと、現在の架空請求詐欺に特徴的なことがいくつかある。その1つが電子マネーだ。A氏は最初の10万円と20万円を、コンビニで電子マネーを買って支払っていた。具体的にはカードタイプのAmazonギフト券。これは、ネット上で流通する金券で、購入者がカード裏の番号を打ち込み使用する。番号の情報のみが重要で、詐欺グループは被害者に番号を撮影させ、メールで送らせるという。ちなみに電子マネーにはシートタイプも存在する。コンビニのマルチメディア端末で電子マネーの種類と金額を選択し、出力されたレシートをレジに。そこで金を支払い、プリペイド番号が記載された通知票を受け取る。オンラインショップなどで支払う際、この番号を入力するだけでOKとなる。

「被害者が購入した電子マネーを犯人が売る場合に氏名、住所、生年月日等の入力を求められることもありますが、入力された内容がデタラメなことが多く、足取りを追うことが非常に難しいのです」 電子マネーは、特殊詐欺全般で受取方法として近年増加の傾向にある。「しかし、大量購入などの場合、声掛けや警察への通報などの協力をコンビニエンスストア側に要請していています。その結果、未然に防止したケースが今年の上半期だけで48件、金額にして約1082万円あります」

 奪おうとする金額が高額の場合、従来のATM振込に代わり、近年目立つのがバイク便を使った例だ。今年上半期の特殊詐欺被害金等の受取方法に占めるATM振込は11%で、実に77%がバイク便などを悪用した手渡しによるもの。A氏のケースでも、3回目以降の350万円、400万円はバイク便が利用された。

「ただし、警察から正規のバイク便大手業者に対しては、荷物が現金でないかどうかの確認や警察への通報を要請しています。その結果、現在では現金を扱うバイク便は、ほとんどがバイク便を装った受け子です」 正規、偽装を含めバイク便を使った被害は今年上半期だけで42件と、昨年1年間の40件を上回っている。今後とも注意を怠るわけにはいかないだろう。

「最近の架空請求詐欺では、見慣れない番号から着信があり、折り返すと自動音声ガイダンスが流れるものもあります。“未納の料金について知りたい方は1、裁判を中止したい方は2、を押してください”などと案内し、番号を押すと騙し役につながるわけです」 そうした騙し役の脅し文句としては未払い金を払わないと「給料を差し押さえる」「身辺調査をする」「裁判にかける」など強硬手段に出ることを伝えるパターンが多い。思い当たるフシがある人も多く、恥ずかしさから、数万円ならと払ってしまうことも多くなる。しかし、A氏のように一度でも支払えば、あの手、この手でたたみかけてくるのが詐欺集団の手口。こうした凶悪な詐欺を働くのはどんな輩なのだろうか。

 警視庁は今年上半期で、特殊詐欺に関して294人を検挙(騙されたフリを続けての「現場設定検挙」は117人)している。そのうち131人(45%)が反社会組織構成員等、反社会組織となんらかのつながりのある者とみられている。「オレオレ詐欺と同様、10代から30代で全体の87%を占めていますね。検挙人員の48%が、金を受け取る末端の受け子です。受け子はリスクが高く、従来1万円だったギャラが、最近では5万円に上がったりしているようですが、確保に苦労しています。受け子を捕まえても、本当に彼らは上が誰なのか知らない。完全な分業制で首魁(しゅかい:首謀者のこと)を捕えるのは難しい。ローリスク・ハイリターンなシステムを作り上げているんです」

 こうした犯罪から我が身を守るためには、どうすればいいのか。まずは、最近の傾向を頭にいれておくことが何より重要だ。それに加え、芝山警視はこうアドバイスする。「まず、自分だけは絶対に大丈夫、という考えは捨てること。自分は騙されるかも、という人は対策を考えますが、大丈夫という人は何も考えない。そういう人が騙されるんです」 第2に、もし金を請求されたら、自分だけでなく誰かに相談すること。「友人、家族、誰でもいいので、冷静に見られる人に相談する。もちろん、我々警察でもいいですが、敷居が高いという方は、消費者センターに相談してもいいでしょう」

 第3に、請求された場合の最大の対策は「無視する」ということ。「こうした請求はまず100%、詐欺です。折り返し電話やメールをして、住所など、こちらの情報を知られたら、向こうもあの手この手でやってきます。どんな脅し文句にも、無視を貫いてください」

 以上の対策を肝に銘じ、卑劣な犯罪に引っかからぬよう、ご注意を!

関連記事(外部サイト)