乗客にオイル「かける練習した」…相次ぐ電車内の事件、非常通報が増える

乗客にオイル「かける練習した」…相次ぐ電車内の事件、非常通報が増える

(写真:読売新聞)

 京王線の車内で乗客17人が重軽傷を負った事件で、警視庁は22日、住所不定無職の服部恭太容疑者(25)を殺人未遂と現住建造物等放火容疑で再逮捕した。服部容疑者は滞在先ホテルの浴室で水を入れたペットボトルを使い、乗客にオイルをかける練習をしていたという。

■ホテルで練習

 発表によると、服部容疑者は10月31日午後7時55分頃、東京都調布市を走行中の上り特急電車(10両)の5号車で、ペットボトル3本に入れたライター用オイル計約3リットルを都内の会社員女性(60)ら複数の乗客に向けてまき散らした上、点火したライターを放り投げ、乗客らを殺害しようとした疑い。

 火は会社員女性らに燃え移ることはなかったが、床に垂れたオイルに着火し、床やシートが若干焼けた。調べに対し、服部容疑者は容疑を認め、「多くの人を惨殺する計画を実行した」と供述している。

 車内に防犯カメラはなく、警視庁は乗客が撮影してツイッターに投稿した映像を解析するなどし、出火状況や被害者を特定した。

 東京地検立川支部は、乗客男性(72)の胸をナイフで刺した殺人未遂容疑を処分保留とした。今後、再逮捕容疑と合わせて刑事処分を決めるとみられる。

■非常通報が増加

 8月には小田急線車内で無差別刺傷事件が起きたほか、今月も、電車内での事件が続いている。

 東京メトロ東西線では6日、50歳代の男が乗客の男女を工具で脅し、暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕された。熊本県では8日、走行中の九州新幹線で男(69)が床に可燃性の液体をまいて火を放ち、現住建造物等放火未遂容疑で逮捕された。男は「京王線の事件をまねた」と供述した。

 相次ぐ事件に、電車を利用する人たちの間で不安が広がっている。

 東京メトロ千代田線では16日、乗客が大声をあげているとして非常通報ボタンが押され、多くの乗客が国会議事堂前駅ホームに避難した。JR湘南新宿ラインでも20日、安全確認のため池袋駅近くで停車した際に車内が混乱して非常通報ボタンが押され、多数の警察官が駆けつけた。

 ある私鉄関係者は「乗客からの非常通報が増えており、緊張感を持って対応している」と話す。

■まずは身を守る

 走行中の電車内で事件に遭遇した場合、乗客はどう行動すればよいのか。

 鉄道の安全対策に詳しい関西大の安部誠治教授(69)(交通政策論)は「まずは犯人から離れ、身を守ること」と力を込める。襲われた場合は、カバンなどを使って防御する必要がある。

 余裕があれば、非常通報ボタンを押し、通話機能で車掌に状況を伝えたい。今回の事件後、国土交通省はボタンが複数回押された場合は緊急停車するよう各社に求めており、ボタンを押すだけでも異常を伝える効果がある。

 非常用ドアコックは座席の下などにあり、手動でドアを開閉できる。だが、線路への転落や他の列車にはねられる危険があるほか、システム上、電車が加速できなくなり、トンネル内など避難に適さない場所で停車する恐れもある。

 安部教授は「コックはよほどの緊急事態以外は使うべきではない」と話す。

■車内の防犯カメラ、設置義務なし

 鉄道各社は近年、テロ対策や犯罪抑止のため、車内に防犯カメラの設置を進めてきた。だが、設置は義務ではなく、設置率(今月1日現在)は数%〜100%とばらつきがある。

 JR東日本は首都圏の在来線と新幹線の計約1万車両ほぼ全てに導入済み。JR東海の東海道新幹線も、設置率は100%だ。

 東急電鉄は、蛍光灯と一体型の防犯カメラを全1257車両に整備。映像の送信機能もあり、非常時には車内の状況をほぼリアルタイムで確認できる。

 一方、4%にとどまるのは京浜急行電鉄。今回事件が起きた京王電鉄もまだ17%だ。既存車両に取り付ける工事の手間や費用がネックになっているという。

 国土交通省は2018年に東海道新幹線で男が乗客3人をナタで殺傷した事件後、カメラの活用を各社に求めてきた。相次ぐ事件を受け、ある私鉄幹部は「整備計画の前倒しを考えねばならない」と話した。

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