乗客90人が犠牲、国内最大惨事の雪崩鉄道事故などを後世に残す…全国339の自治体に「伝承碑」

乗客90人が犠牲、国内最大惨事の雪崩鉄道事故などを後世に残す…全国339の自治体に「伝承碑」

土石流の犠牲になった作業員らを悼む「蒲原沢土石流災害慰霊碑」(糸魚川市提供)

 国土地理院(茨城県)は自然災害の記憶を伝える石碑などを「自然災害伝承碑」として登録し、ウェブ上の地図で紹介している。新潟県内では地震や雪崩、水害など26の碑を掲載。自治体の関係者らは「自然災害を風化させず後世に語り継ぎ、これからの防災に役立てていきたい」としている。

 自然災害伝承碑の掲載は、過去の災害の教訓を地域住民に広く伝えることで減災に役立てようと、2019年に始まった。12日現在、全国339市区町村1116基を公開。ウェブ上の「地理院地図」のアイコンをクリックすると、石碑やモニュメントの写真、所在地、伝承内容、設置年などが表示される。市区町村が国土地理院に申請して登録される。

 新潟県内では、糸魚川市12か所、新潟市6か所、長岡市と魚沼市各2か所、小千谷市と十日町市、燕市、湯沢町各1か所の計26基を掲載。災害の内訳は、雪崩10、洪水9、土砂災害4、地震4、津波2(複合災害あり)となっている。

 最も歴史がある碑は、湯沢町に1918年に設置された「三俣の大雪崩」の碑。山の尾根で同年1月に厚さ6〜7メートルの大雪崩が発生し、小学校や家屋28戸が倒壊して158人が犠牲になったことを今に伝えている。

 近年の災害では、2004年7月の「新潟・福島豪雨」で3人が亡くなった長岡市中之島地域の豪雨伝承碑(2011年設置)、同年10月の中越地震で震度7を記録した長岡市川口地域の「震央標柱」(05年設置)などがある。

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 碑が12か所と県内最多の糸魚川市では、糸魚川ジオパーク協議会と市消防本部が昨年12月から連携して伝承碑の調査を続けてきた。古い文献や市史、町史などを調べ、地元住民からも聞き取りを進め、今年10月に登録申請した。

 1922年2月の「勝山大雪崩災害」では、当時の北陸線親不知―青海駅間で発生した雪崩に走行中の列車が巻き込まれ、乗客ら90人が犠牲になった。雪崩による鉄道事故としては国内最大の惨事とされている。この雪崩災害に関わる伝承碑は市内に5基ある。

 同市で96年12月に起きた「蒲原沢土石流災害」では、前年の土石流被害の復旧工事に当たっていた作業員14人が死亡。同市大所にある慰霊碑(1997年設置)の裏面には、「融雪を考慮した土石流発生の予知・予測手法の開発が必要である」と、当時の建設相の碑文が記され、教訓を伝えている。

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 糸魚川市は急斜面の地形が多く、地すべりや雪崩、水害の被害に長年見舞われてきた。米田徹市長は「市内にはまだ多くの伝承碑があり、今後も調査と活用に努めていきたい」と話す。

 同市は地質や地形を保存し、環境教育や観光の資源として生かす「ジオパーク」運動に力を入れている。ジオパークツアーなどでは地形や地質などの解説だけでなく、過去の災害についても説明していきたいという。

 糸魚川ジオパーク協議会事務局の香取拓馬さん(29)は「伝承碑を目にすれば、ここで大きな災害があったということを実感できる。残された多くの遺構を防災教育に生かしていきたい」と話している。

 自然災害伝承碑は、国土地理院のホームページ(QRコード)で見ることができる。

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