4割が「出所不明」、シラスウナギに番号割り振り不正流通防止…料理店「自信持ち提供」

4割が「出所不明」、シラスウナギに番号割り振り不正流通防止…料理店「自信持ち提供」

養殖池のニホンウナギにエサをやる養殖業者。池には複数の採取者が取ったウナギが交ざり合っている(9月19日、静岡県湖西市で)

■事務増 流通業者は懸念

 水産庁が水産物に漁獲番号を割り振って取引記録を追跡する漁獲証明制度の対象魚種に、ニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」を含める方針を決めた。シラスウナギは4割近くが密漁などの「出所不明」となっており、こうした不正流通を防ぐのが狙いだ。資源の保護につながるとの評価の一方で、事務負担が増大する流通業者らからは懸念の声が漏れる。(今泉遼)

■価格高騰

 「誰がどこで取った稚魚なのか、明確になるのは喜ばしい」。ウナギの養殖が盛んな静岡県浜松市の浜名湖養魚漁業協同組合の組合長、外山昭広さん(74)は漁獲証明制度の導入を歓迎する。

 組合は近年、養殖池に入れるシラスウナギの減少と価格の高騰にあえいできた。水産庁によると、国内の養殖池に入れられた稚魚の量(輸入分を除く)は2006年漁期の28トンに対し、19年漁期は4トンに減少。1キロ当たりの取引価格は27万円(06年)から219万円(19年)に高騰した。

 1970年頃のピーク時に約400軒あった組合の養殖業者も今は約30軒にまで減少。外山さんは「浜名湖ブランドのウナギを守るには稚魚の適切な資源管理が重要だ」と力を込める。

■出所不明4割

 シラスウナギは南方から黒潮に乗って日本に流れ着く。その採取は、資源保護のため都道府県知事による許可制となっている。

 20年漁期は24都府県で11トンの採取の報告があったが、実際に国内の養殖池に入れられたのは17トンで、4割近い6トンが「出所不明」だ。水産庁は、無許可の密漁のほか、許可業者が指定外の集荷業者に不正に高値で販売しているのが要因とみている。

 料理店「八重洲 鰻(うなぎ)はし本」(東京都中央区)の店主(42)は「店では、適法に採取されたかどうか確かめようがない。流通の透明化で適法なウナギだと自信を持って提供できるのはありがたい」と期待する。

■産地や日ごと想定

 一方、採取者や流通業者からは事務負担の増大を懸念する声があがる。

 シラスウナギは体長約6センチと、つまようじほどの大きさしかない。1人の採取者が取る量は少なく、一般的な養殖池には数百人が取った稚魚が交ざり合う。

 水産庁は、事務の負担軽減のため、漁獲番号を1匹ずつではなく、産地や取引日ごとにまとめて割り振る方式を想定。漁獲番号の伝達は養殖池に入るまでとし、成魚のニホンウナギは対象外とする方針だ。

 それでも流通業者らでつくる一般社団法人「日本シラスウナギ取扱者協議会」(東京)の森山喬司理事長(80)は「シラスウナギは養殖池に入るまでに多くの集荷人や流通業者のもとを通る。漁獲番号の正確な伝達は困難ではないか」と実効性に疑問を呈する。

 自治体が販売先を指定している現行の規制の見直しを求める声もある。

 四国に住む40歳代の許可採取者の男性は捕獲した大半を、指定外の集荷業者に販売していると明かす。「指定業者では不当に安く買いたたかれるから、より高く買ってくれる非正規のルートに売っている。漁獲番号を付けて採取者の負担を増やす前に、自由に売れるようにするべきだ」と訴える。

 中央大の海部健三教授(保全生態学)は「販売規制で買い取り価格が一般的な取引価格よりも安く設定されている自治体では、指定集荷業者や養殖業者が採取者を搾取する構造となっており、撤廃すべきだ」と指摘する。その上で漁獲証明制度については「巧妙化した密漁にも対応でき、流通の適正化に向けて大きな前進だ。ただ、将来的には、消費者に届くまでの流通をすべて追跡できるよう、輸入されたウナギや養殖後のウナギも履歴管理の対象とする必要がある」と話す。

■アワビ・ナマコも

 ◆漁獲証明制度=昨年12月に成立した新法「水産流通適正化法」に基づく新制度で、水産庁はアワビとナマコ、シラスウナギの3魚種を省令で対象とする方針。対象魚種を扱う漁業者や流通・養殖業者らに農林水産省への届け出を義務づけ、取引する際は16桁の漁獲番号の伝達と、取引記録の作成・保存を義務づける。アワビとナマコは2022年12月、シラスウナギは3年遅い25年12月にスタートさせる予定で、近く省令案のパブリックコメント(意見公募)を行う。

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