保健所は「施設内で看取って」、感染者が続々死亡…関係者証言

保健所は「施設内で看取って」、感染者が続々死亡…関係者証言

保健所が施設での看取り要請

保健所は「施設内で看取って」、感染者が続々死亡…関係者証言

(写真:読売新聞)

 新型コロナウイルスに90人が感染し、うち入所者11人が施設内で死亡した介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」(札幌市北区)について、複数の施設関係者が読売新聞の取材に応じ、「保健所には当初、『施設内で看取(みと)って』と言われた」と証言した。市保健所は「可能性の話だった」と釈明した上で、「入院先が決まらなかったため」と説明。当時の施設内の過酷な状況が次第に明らかになってきた。

 クラスター(感染集団)が形成されたアカシアハイツが、最初に入所者の感染を確認したのは4月26日。市保健所によると、この時点で、施設内では10人前後の入所者が発熱などの症状を訴えていた。

 これを受け、市が派遣した医師は「入所者の入院先が決まらない」と施設側に伝える際、施設内での「看取り」に言及したという。

 施設の運営法人「札幌恵友会」によると、27日、新たに14人の感染が確認されて以降、施設の感染者数は急増。法人は29日、感染者への対応として市の指導を受け、危険区域と安全区域に分ける「ゾーニング」をした上で、施設内で療養させているとホームページに公表した。

 施設は2階建てで、入所者は2人部屋(8室)と4人部屋(21室)で生活し、各部屋の出入り口はカーテンで仕切られているだけだった。1階を「陰性」の入所者、2階を「陽性」の入所者と分けたが、人手不足のため夜間は看護師が1人で勤務して1、2階を行き来していた。関係者によると、認知症の入所者には「3密」を避けるといった感染防止策を十分に理解してもらえず、1階と2階を徘徊(はいかい)することもあったという。

 施設内で、最初に入所者が感染により死亡したのは30日。2人が相次いで亡くなり、法人は翌5月1日、「施設内にて入所者を看取ることになってしまった」と発表した。

 市が調整し、施設内の感染者が医療機関に入院するようになったのは5月12日で、最初の感染が確認されてから2週間以上が経過。既に入所者8人が亡くなっていた。

 当時の状況について、ある介護スタッフは「自分が感染することも覚悟し、入所者を助けるために勤務していた」と振り返る。「(スタッフを)孫のようにかわいがってくれていた人たち」が重症化し、入院先が決まらないまま次々と亡くなっていく日々。ある時、市から遺体を納める「納体袋」が施設に届くと、「見捨てられているようだ」と感じたという。

 別の施設関係者は「早期に入院させていれば助けられる命があったと思う」と話す。

 厚生労働省は今月4日、都道府県などに対し、「介護老人保健施設の入所者は高齢で重症化リスクが高い特性がある。感染した場合は原則入院」とする通知を出している。

 アカシアハイツを巡る一連の経緯について、秋元克広市長はこれまでの記者会見で「4月下旬から5月上旬にかけて市内の医療機関が非常に逼迫(ひっぱく)し、入院先が決まらなかった」と説明している。

(林麟太郎)

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