差別・中傷防ぐ「正しい恐れ方」とは?学校手探り、文科省は具体策示さず

差別・中傷防ぐ「正しい恐れ方」とは?学校手探り、文科省は具体策示さず

コロナの特徴や差別について授業で学ぶ児童たち(9月、兵庫県伊丹市立花里小で)=前田尚紀撮影

 新型コロナウイルスに感染する不安が引き起こすのが、他人への差別や誹謗(ひぼう)中傷だ。「正しく恐れる」ことは大人でも難しい。これを子どもたちにどう教えるか。感染した児童や生徒らへのいじめも懸念される中、学校現場で模索が続いている。(苅田円)

■■「冷静に行動を」

 「コロナになってしまった友達のことを言いふらす人がいます。どう思う?」

 兵庫県伊丹市の市立花里小で9月中旬、5年生の児童を前に担任の真嶋俊範教諭が問いかけた。

 保健の時間を使った特別授業で、▽ウイルスは目に見えない▽感染しても自分では気付かないことも多い▽治った人とは、会って大丈夫――などと説明。児童は自分の気持ちを書き出した。

 真嶋教諭は「不安やイライラがあると、人は誰かを攻撃したくなってしまう。でも、コロナのことが分かれば冷静になって行動できるよ」と呼びかけ、授業後、女子児童(10)は「ストレスがあったら、大きく深呼吸して落ち着くことが大事だと分かった」と振り返った。

 村上雅博校長は「いつ誰が感染するか分からない。どう対応するか学ぶことは最も重要なことだ」と話す。

■■いじめ報告

 文部科学省によると、6月1日から8月31日までに、感染が確認された小中高校生は計1166人。感染経路は家庭内が半数以上で、学校内は15%だった。

 実際に差別やいじめも起きており、埼玉県では、感染者が出た学校に通う子どもが、他校生から「コロナ」と言われたなどの報告が約20件に上った。新潟県でもいじめと思われるケースが少なくとも8件あった。

 国立成育医療研究センターが6〜7月、小中高校生912人を対象に行ったアンケートでは、感染した人に対し、22%が「治ってもあまり一緒に遊びたくない」と回答。自分や家族が感染した場合は「秘密にしたい」が32%に上った。

 こうした現状を踏まえ、萩生田文部科学相も8月25日、「感染した人が悪いということではありません。責めるのではなく、早く治るよう励まし、治って戻ってきたときには温かく迎えてほしい」などとするメッセージを出している。

■■「総合学習」活用

 だが、子どもには「差別はいけない」と言うだけでは十分ではない。年齢に応じた方法で正しい知識を伝えることが重要とされるが、文科省は、どの教科で何を教えるかなどを学年ごとに示しておらず、一部の学校が手探りで実施しているのが実情だという。

 神戸市の市立淡河(おうご)中は6月、「総合学習」の時間を活用し、スクールカウンセラーによる特別授業を全校生徒を対象に実施。生徒にコロナの不安などを書いてもらったうえで、その後もスクールカウンセラーが個別に面談し、継続的に支援している。

 他の学校でも、保健や道徳の時間を利用し、日本赤十字社などが制作した啓発資料を見せているケースもあるが、難しいのは授業時間の確保だ。

 当初の計画を変更できなかったり、他の単元が早く終わらなかったりするなどの理由で実施できない学校も多いという。

■具体的な対応策 文科省示すべき

 子どもの心理に詳しい兵庫県立大の冨永良喜教授の話「災害などの非常事態と同じで、子どもの不安が大きくなると攻撃的になりやすく、いじめが懸念される。最も重要なのは、すべての子どもにコロナの特徴を正しく理解させることだが、学校任せでは限界もある。文科省が具体的な対応策を示すべきだ」

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