南相馬の人たちと喜び分かち合う…全米図書賞に柳美里さん「JR上野駅公園口」

南相馬の人たちと喜び分かち合う…全米図書賞に柳美里さん「JR上野駅公園口」

柳美里さん全米図書賞を受賞

南相馬の人たちと喜び分かち合う…全米図書賞に柳美里さん「JR上野駅公園口」

柳美里さん

 【ニューヨーク=橋本潤也】米国で最も権威のある文学賞「全米図書賞」が18日夜(日本時間19日午前)発表され、翻訳文学部門で福島県在住の作家、柳美里さんの小説「JR上野駅公園口」の英訳版が選ばれた。

 「JR上野駅公園口」は、福島出身で上野のホームレスになった男の物語。家族のために出稼ぎを長く続けながら厳しい生活に追い込まれた人生を通し、経済成長を優先した日本の戦後や現代の格差社会を問い直す。東日本大震災後、福島の住民と交流を重ねた経験が、色濃く反映された作品だ。日本で2014年に出版後、モーガン・ジャイルズさんが翻訳した。

 柳さんは、劇作家や演出家として活躍し、1993年に「魚の祭」で岸田國士戯曲賞を受賞。作家としても活動を始め、97年、「家族シネマ」で芥川賞を受賞し「命」「8月の果て」などの小説を執筆してきた。東日本大震災後は、臨時災害放送局のラジオ番組のパーソナリティーを経て2015年に福島県南相馬市に移住し、自宅を改装して書店も営むなど文化活動に力を入れている。

 オンラインで行われた授賞式で、柳さんは翻訳を担当したジャイルズさんに英語で感謝の言葉を述べ、「南相馬の人たちと、この喜びを分かち合いたい」と発言。続く日本向けのオンライン記者会見では「南相馬で出会った方たちの体験や声が地層となって生まれた作品。地元の方がおらほの物語だといってくれた」と振り返った。さらに「20代の時に(文学賞の)受賞を待っている時は、自分のためにとれればいいなと思っていた。今回の受賞は、(地元の)皆さんへのプレゼントになればいい」と語った。

 同じ翻訳文学部門では、2018年にドイツ在住の作家、多和田葉子さんの「献灯使」が受賞している。

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