GM復帰説が流れる中...巨人・原元監督の暴力団疑惑をすっぱ抜いた記者が読売の不祥事封じ込め工作を暴露

GM復帰説が流れる中...巨人・原元監督の暴力団疑惑をすっぱ抜いた記者が読売の不祥事封じ込め工作を暴露

『巨人軍「闇」の深層』(文藝春秋)

 現在、今シーズンでのセ・リーグ優勝が絶望的になった巨人にとんでもない人事案が出始めているという。ウェブサイト「日刊ゲンダイ」8月31日付の記事によれば、なんと、今は読売ジャイアンツ球団特別顧問となっている原辰徳元監督にジェネラルマネージャーとして球団に本格復帰してもらおうという声が関係者の間で囁かれているというのだ。

 原氏に関しては前々から2020年東京オリンピックで競技として復活する野球の代表監督候補とも言われており、「日刊スポーツ」8月24付の記事によればそれに関しても「いえ、いえ」とかわすだけで本人は明確に否定はしていない。

 巨人なのか、日本代表監督なのかは分からないが、いずれにせよ近い将来、原氏が球界に本格的に戻ってくる可能性はかなり高いだろう。

 しかし本当にそれでいいのだろうか? 原氏といえば今年6月、12年に「週刊文春」(文藝春秋)が報道し問題となった、反社会勢力の男に1億円を支払っていたとされる記事に関し、名誉を傷つけられたとして文藝春秋に対して起こしていた裁判の敗訴が確定。反社会勢力とのつながりをもっていた過去が事実であると証明されたばかりだ。
 さらに、福田聡志、笠原将生、松本竜也、高木京介らの関与した野球賭博問題もまだ真相が解明できたとは言い難い状況にあるが、これらの選手が賭博に手を染めていった時期は、まさに原氏が巨人軍の監督を務めていた時であり、現在の野球界を覆う黒い問題に関して原氏自身がきちんと精算できていない状況で球界への本格復帰など許されていいのか。

 しかし、読売ジャイアンツという組織はそういったあり得ない無理難題をいとも簡単に通してしまう集団である。その強引な手法が横行している背景には、法律や野球協約の穴を巧みに破る読売の法務部のスタッフの存在がある。「週刊文春」記者として前述の原元監督1億円恐喝事件をスクープした西崎伸彦氏は著書『巨人軍「闇」の深層』(文藝春秋)のなかでこう指摘する。

〈巨人軍の親会社として強い影響力を発揮している読売新聞グループの司令塔は、主に法務畑の人材が担っている。彼らは豊富な法律知識を蓄え、法解釈を巧みに駆使し、コンプライアンスを旗印として組織を統治している。彼らはいまや「コンプラ軍団」と呼ぶべき一大勢力となっている。
(中略)
 彼らは選手や監督などの不祥事に直面すると、法律解釈のテクニックを駆使することで切り抜け、ダメージを最小限に止めてきた。喩えて言うなら、天才外科医、ブラック・ジャックのような存在である。表面にあらわれた病巣を巧みに切除してしまい、痕跡すら残さない。
 だが、ブラック・ジャックと違って、「コンプラ軍団」の施術とは、病因を根本的に治癒するものではない。あくまで対症療法的な手術でしかない。それゆえに病気の根源は患者(巨人軍)に残り続け、容態はむしろ悪化してきた。それが今日の不祥事の連鎖を招いているのである〉

 巨人が巧みな法律解釈のテクニックを駆使して無理を通すようになったのは、1978年の江川事件からだと西崎氏は指摘する。周知の通り、この「空白の一日」騒動は、当時の野球協約では交渉権を得た球団が交渉できるのは翌年のドラフトの前々日までであるという穴を突き、ドラフト前日に契約を結んだ。そして他球団の反発に対して、巨人側はこれを認めないならセ・リーグを抜けて新リーグをつくると脅しをかけて無理を通してしまった。

 この時の自己の正当性を押し通す姿勢はその後のスキャンダル処理にも大いに発揮された。その典型例が前述の原元監督恐喝騒動だ。事件の概要を簡単に説明しておくと、そもそもの問題は原氏がまだ現役時代だった1988年頃に遡る。当時、原氏は常宿としていた兵庫県のホテルのスタッフと不倫関係にあった。その後、二人の関係は解消されるのだが、それから時が経った2006年、不倫関係にあった女性の日記をたまたま手に入れた暴力団関係者から、原氏は1億円の恐喝を受けることになる。

「プロ野球の憲法」といわれる野球協約の第180条には反社会的勢力の関係者と交際したり金銭の授受を行うことを禁止した条文があり、これに違反した場合、無期の失格処分になることもあると規定が定められている。本来であれば暴力関係者の要望に応じず警察に相談すべきところだが、原氏はこの要求を呑んで1億円を支払ってしまう。

 そして、「週刊文春」12年6月28日号でこれらの内情が明かされることになるのだが、西崎氏によればそのスキャンダルを取材する過程でこんな驚きの一幕があったという。

〈本来であれば、こちらが取材を尽くした後、読売巨人側に正式な質問書を送り、しかるべき回答を得るというのが記事掲載の基本的な流れである。しかし今回は違った。我々が取材に動いていることを察知した巨人軍の動きは早かった。代理人から書面で「申入書」なるものが週刊文春編集長宛てに送付され、期日までに、記事に関する編集部の考えを回答するよう求めてきたのだ。
 それ自体も異例のことだが、さらに巨人軍側は、追い打ちを掛けるように原監督に関する記事の広告を差し止める仮処分申立を、しかも二週にわたって東京地裁に起こしてきたのだ。
 これは新聞広告や電車中吊りなどの、すべての週刊文春の広告から原監督に関する記事を塗り潰すなどして削除するよう求めるものだった。記事そのものの差し止めを求める仮処分申立がなされるケースはまれにあるが、広告の掲載差し止めのみを求める例は前代未聞である。機先を制するとはいえ、躍起になって報道を封じようとする巨人軍の行動には唖然とするしかなかった〉

 原氏のスキャンダルに関して巨人軍側は、「お金を払うべきではなかった」と厳しく注意するだけにとどめ、彼が強請りの相手を「反社会的勢力ではなかったと認識していた」ということを理由に何の処分も行わなかった。そして、前述したように発行元の文藝春秋に対して、「恐喝してきた相手を反社会的勢力ではないとした読売側の対応は嘘である」と報道したことに関し名誉毀損の訴訟を起こすわけだが、これは先ほど出た野球協約第180条に触れてしまうことを阻止するために練られた策であった。結果、原氏が昨年の退任まで何のお咎めもなく監督の座に座り続けていたことはご承知の通りだ。

 このような球団の狡猾なやり口は、つい先日の野球賭博問題でも繰り返された。その典型例がメディアへの圧力である。今年3月には、高木京介選手の謝罪会見に批判的な評論家のコメントを報じた産経新聞に対し、日本野球機構(NPB)が記事の訂正を求める抗議書を送付。管理施設内への立ち入りを禁じる"取材拒否"通告をしているが、これも、巨人軍がNPB内にいるOBを通じて行ったものである可能性を西崎氏は指摘している。

 また、この野球賭博問題では、白石興二郎オーナー、桃井恒和会長、そして、渡邉恒雄最高顧問が読売巨人軍を辞任しているが、これも表向きのものにすぎない。後釜として入った山口寿一読売新聞グループ本社社長は読売新聞法務部出身で、渡邉氏の側近中の側近。また、山口社長直属の統括参与には警視庁の元組対部長が迎えられているが、これも、むしろ不祥事を表沙汰になる前に封じ込める役割として抜擢されたのではないか。

 同書はこの間、読売巨人軍がとってきた不祥事対策についてこう苦言を呈している。

〈コンプライアンスの重要性は、いまさら言うまでもない。
 しかし、表面上のコンプライアンスに囚われすぎると、そこには落とし穴がある。
 法令の解釈そのものを変えることによって、常識的に考えれば法令違反もしくは違反すれすれの行為でも、理屈上は正当化できてしまうからだ。
(中略)
 解釈によっていくらでも言い逃れが可能になるという認識が球界に拡散すれば、モラルは堕落し、いくら選手たちを徹底した教育と管理で縛っても、永遠に不祥事はなくならないだろう〉

 今回起きた野球賭博問題は、読売ジャイアンツの、果ては日本の野球界に巣くう悪い膿を出しきる絶好のチャンスであった。しかし、現在進行している流れのままいけば、またそう遠くない未来、再び黒いスキャンダルが噴出する可能性は高いと言わざるを得ないだろう。
(井川健二)

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