二重国籍問題がTBS山内アナにまで...池田信夫が「日本国籍失う」「解雇しろ」とデマ&ヘイト攻撃

二重国籍問題がTBS山内アナにまで...池田信夫が「日本国籍失う」「解雇しろ」とデマ&ヘイト攻撃

TBSアナウンサーオフィシャルサイト『アナウンスBoo!!』より

 右派メディアが騒ぎ立てている民進党・蓮舫参議院議員のいわゆる「二重国籍」問題について、先日本サイトは、その根っこにあるのが「この国にはびこるグロテスクな純血主義がむき出しになった人種差別」だと断じた。だが、本サイトのような指摘はごく一部で、むしろ国籍を根拠にした右派メディアやネトウヨの攻撃はとどまることなく、重国籍者に対するヘイトは日に日に苛烈さをましている。

 実際、連中は蓮舫氏以外にも矛先を向け始めた。蓮舫攻撃キャンペーンを牽引したウェブサイト「アゴラ」の代表で、評論家の池田信夫氏が14日、日本とベトナムのハーフであるTBSアナウンサー・山内あゆ氏を標的にして、なんと"TBSは二重国籍のアナウンサーを解雇しろ!"と喚き始めたのだ。

〈二重国籍者がカミングアウト。普通は解雇。〉
〈TBS山内あゆ「私も(ベトナムと日本の)ハーフで22歳になってどちらかの国籍を選択しますかと連絡が来ただけで、二重国籍は問題ない」。これが事実とすると「催告」を無視したので、国籍法15条によって日本国籍を失う。〉
〈この事件も彼女個人の問題ではなく、放送で公言したのでTBSのすみやかな説明が必要だ。〉(池田氏のツイッターより)
 
 どういうことか。調べてみると、ここで池田氏があげつらっているのは『Nスタ』(TBS)9月7日放送での山内アナの発言らしい。この日、『Nスタ』では蓮舫氏の「二重国籍」疑惑を特集し、スタジオでも法的な観点などからトークが行われた。このときの映像を確認したので、正確に再現しよう。

 まず、山内アナは「(私も)父がベトナム人で母が日本人で、二重国籍で。日本国籍を選択したんですけど、(ベトナム国籍の)離脱の届け出って、やってないんですよね」と発言した。

 そこで、MCの堀尾正明アナが「やっぱり22歳までにきたんですか?(ベトナム国籍を)離脱してくださいっていう」と聞くと、山内アナはこう返した。

「きました。(でも)離脱ではなくて"日本国籍を選びますか"っていう"どちらかを選びますか"というものはきましたけれども、ベトナム側からの離脱してくださいはなかったんで......どうなってるんでしょう」

 ようするに、池田氏はこうした山内アナの発言に対して〈二重国籍者がカミングアウト。普通は解雇〉などと言っているわけである。

 まったく大丈夫だろうか、この人は。そもそも、仮に山内アナが「二重国籍」の状態にあるとしても、TBSを解雇されなければならない理由など1ミリもない。というか、国籍を根拠に解雇することはれっきとした違法行為だ。

 念のため言っておくが、労働基準法では第3条で《使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない》と、国籍による差別の禁止を定めている。国籍問題でキャンペーンを張っているくせに、池田氏はそんなことも知らないのか。はっきり言って論外だろう。

 また、池田氏の〈「催告」を無視したので、国籍法15条によって日本国籍を失う〉というツイートも、明らかに事実無根だ。

 たしかに、日本の国籍法は重国籍者に対し、所定の期間内にいずれかの国籍を選択させるように定めている(14条第1項)。だが、池田氏のいう同法15条は《法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる》(第1項)と規定したうえで、《催告を受けた日から一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う》(第3項)としている。

 これは山内アナとはまったく無関係な規定だ。なぜなら山内アナはベトナム国籍離脱の届け出をしていないだけで、22歳のときに「日本国籍を選択した」とはっきり言っているからだ。

 日本国籍を選択するというのはどういうことなのか。同法14条第2項にはこうある。《日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによってする》。ここでいう「選択の宣言」とは、法務省ホームページによれば、具体的には「市区町村役場または大使館・領事館に『日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄する』旨の国籍選択届」を提出することを指す。ようするに、日本の国籍を選択する際には、この「選択届」を提出すれば、十分なのだ。

 したがって、山内アナがベトナム国籍の離脱をとっていなくても、日本国籍の選択届けを提出したならば、日本国内の手続きは完了しており、それ以上、法務省から催告されることはありえない(ちなみに選択届を出していなくても、法務省が催告したケースはほとんどないのだが)。

 つまり、催告がないのだから、山内アナが〈「催告」を無視した〉という池田氏の言い分はまるっきりのデマということになる。

 しかも、もっとヒドいデマは、池田氏が山内アナに対して「国籍を失う」など脅していることだ。改めて指摘しておくが、同法15条第3項は国籍選択をせず、法務省からの催告にも応じず、1カ月を経過したものに対する条件文であって、日本国籍を選択した山内アナが、「日本国籍を失う」なんてことがありうるわけがない。こんなことは小学生にだってわかるだろう。

 おそらく、池田氏は、同法の「国籍選択」について規定した15条と、「日本国籍選択後の外国籍離脱」についての"努力規定"である16条を混同しているのだ。

 同法16条は《選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない》(第1項)というものだが、これは文言が示しているとおり"努力規定"であり、罰則はない。そして、同条第2項を読めば、国籍の喪失がありうるケースはごく限定的な場合であることがわかる。

《2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失っていないもの が自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であっても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。》

 いずれにしても、日本国籍を選択したある人間が、なんらかの理由で重国籍者だとしても、自動的に日本国籍を喪失するわけでは決してない。

 ようするに、池田氏は常識的に法令を読めば簡単にわかる話なのに、ありえない解釈にもとづいて、「日本国籍を失う」「普通は解雇」などとドヤ顔で言いふらしているのだ。しかも、17日にも〈山内アナはまだ自分の二重国籍状態を放置してるのか。「努力義務」を怠ると、日本国籍を失うよ。TBSのコンプライアンスは大丈夫?〉などと恥ずかしげもなくデマを垂れ流し続けている。

 加えれば、池田氏はツイートで、山内アナが「二重国籍は問題ない」と発言したとするが、実際には、山内アナは放送中に「二重国籍自体は問題があるわけではないんですよね?」と堀尾アナや出演者の飯田泰之明治大学准教授らに向かって質問しただけだ。難癖にすぎない。

 ここまでくれば、もう明らかだろう。池田氏の〈二重国籍者がカミングアウト。普通は解雇〉などという一連のツイートは、明らかな人種差別の意図をもって流されたデマである。そして、重国籍者バッシングに血眼になっている右派言論人や右派メディアの根っこが、グロテスクな純血思想と排外主義、差別主義に他ならぬことを証明したかたちになる。

 そして、この山内アナ叩きでわかったのは、連中の「国会議員だから出自は重要」という理屈は建前にすぎず、一般市民に対しても国籍、血統、出自というプライバシーの開示を強要し、そのうえで恫喝するという品性下劣さである。しかも「重国籍者は議員を辞職しろ!」「重国籍者は局アナを辞めろ!」という主張に法的根拠はない。どちらが"無法者"かは明らかだろう。

 ある意味、これは、関東大震災に乗じた"朝鮮人虐殺"の構図に酷似していると言える。震災の直後から人々の間で「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れている」「放火している」というデマが駆け回ると、日本人は自警団を組織して朝鮮人たちを襲撃し、次々と虐殺していった。朝鮮人という属性だけで命を奪われたのだ。そのとき日本人は「君が代を歌ってみろ」と聞いて回ったり、朝鮮語の特性上発音が難しい「15円50銭」などを無理やり言わせて、少しでもうまく口にできなければ「朝鮮人」として殺害したともいわれている。

 一連の蓮舫氏や山中アナへのバッシングで、国籍、血統、出自の明示を迫ったあげく「辞職だ!」「懲戒だ!」と目を血走らせる連中がやっていることは、あのジェノサイドのやり口とまったく同じだ。

 しかも問題は、一部の右派メディアや言論人、ネトウヨだけがこうした人種差別を繰り出しているわけでない、ということだろう。国籍を問い、「純血の日本人」でなければバッシングされるという状況に、民進党内からも「代表選をやり直すべきだ」などという声があがり、他のマスコミも"追及は当然"という歪な空気に丸乗り。グロテスクな自称愛国者たちを批判するどころか、これが人種、国籍、出自に対する差別であることすら、まったく自覚していない。

 これがいまの日本社会だ。前回の記事では「問題は時代錯誤で差別的な純血主義のイデオロギーがまるで正論であるかのように、この国全体を覆いつつあることだ」と結んだが、いや、「インチキ愛国者」たちによる"虐殺の準備"はもう始まっているのかもしれない。
(編集部)

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