ラジオ出演した前川前文科次官が教育勅語復活についても「政治の力で動いていった」「非常に危険」と批判

加計学園問題で注目される前川喜平氏が、安倍政権に危機感

記事まとめ

  • 加計学園問題で注目を集める前川喜平・前文科事務次官が、TBSラジオに生出演した
  • 前川氏は『怪文書』説を否定し、安倍政権の独裁的な権力の濫用に危機感を語った
  • 天下り斡旋問題で引責辞任した前川氏への対応には、安倍政権の報復との声もある

ラジオ出演した前川前文科次官が教育勅語復活についても「政治の力で動いていった」「非常に危険」と批判

ラジオ出演した前川前文科次官が教育勅語復活についても「政治の力で動いていった」「非常に危険」と批判

前川前次官が出演したTBSラジオの『荒川強啓デイ・キャッチ!』 番組公式ページより

「これは私が実際に現職のときに確実に手に取って見たことのある文書ですから、存在している」

 加計学園問題で発覚した文科省の内部文書を「本物」と証言し注目を集める前川喜平・前文科事務次官が、昨日、TBSラジオの『荒川強啓デイ・キャッチ!』に生出演。あらためて「怪文書」説を否定した。

 すでに多くのメディアが伝えているように、今回のラジオ生放送で前川氏は、「この国家戦略特区での獣医学部新設に関わる文書って、もっともっとたくさんあるはずなんです」と言い、番組月曜レギュラーのジャーナリスト・青木理氏から「『総理のご意向』というものを前川さんが役所のトップとして感じていたことは間違いないですよね?」という質問にも「そうですね。少なくとも、言葉では聞いてましたからね」「私はこれは実際に内閣府の然るべき地位の方が語ったことであるということ自体は100%真実だと思っています」と回答。

 また、安倍首相は昨日の参院本会議で「規制改革には抵抗勢力が必ず存在する」「あらゆる岩盤規制に挑戦していく決意だ」などと強弁、恥ずかしげもなく「改革を成し遂げた俺」という物語を捏造したが、この「岩盤規制」という安倍政権側の主張についても、前川氏は「私は岩盤規制という言葉は当たらないと思います」「獣医学部に関してはですね、やはり今後の人材需要っていうものを見通した上で考えなければいけないんで、無制限につくっていくっていう話ではない」と批判。

 他方、菅義偉官房長官は「自身が責任者のときに堂々と言うべきではなかったか」などと前川氏をバッシングしているが、これに対して前川氏は「『これはおかしい』と思っていたんですがね、思っていたのに、やっぱりそれを本当に大きな声で言ったかっていえば、まあ文部科学省のなかで小さな声で言ってたと。結局私自身が乗り出して内閣府と対峙することをやったかっていうと、それはやってないわけです」と内省。「私が力不足、努力不足だったということは認めざるを得ないと思ってます」と話した。

 このように、さまざまな質問に対して率直に語った前川氏だったが、じつはこの生出演では、加計学園問題のみならず、もうひとつ重要な指摘を行っていた。それは、安倍政権の独裁的な権力の濫用に危機感を抱いていたことだ。

 たとえば、青木氏は、前川氏に対して教育行政のトップ官僚として安倍政権の姿勢をどう思っていたのかを質問。前川氏は昨年12月に成立した教育機会確保法を挙げ、「多様な学びの場」をつくっていく動きもあることを語るなど留保しつつも、こんなことを口にした。

「いまの政権のもとでもっていうのはちょっと語弊があるかもしれませんけど、いろんな、教育の分野で言えばいろんな方向での議論はあってですね、それこそ、国民を一色に染めてしまおうというような方向の議論もたしかに強いのは強いです。で、これは恐ろしいことだと思っていますけどね」

 さらに、青木氏は教育勅語についても質問。塚本幼稚園で園児たちに教育勅語を暗唱させていることを2005年に東京新聞が文科省に取材し、その際に文部科学省幼児教育課は「教育勅語を教えるのは適当ではない。教育要領でも園児に勅語を暗唱させることは想定していない」とはっきり回答するなど、文科省は教育勅語に否定的な立場を取ってきた。しかし、青木氏は「教育勅語に対するその文科省の立場っていうのも、まさに在職中の話だと思いますけど、変わっていったっていう印象があるんですけども」と問うと、前川氏はこう答えた。

「変わりました。そこはもう政治の力で少しずつ少しずつスタンスが動いていったということは、私は認めざるを得ないと思います。だからここは、もういっぺん教育勅語っていうものをきちんと見直すっていうことは必要だと思いますね。そのズルズルズルッとですね、教育勅語を暗唱して、その精神を身に付けることが良いことだ、みたいなことになってしまうのは非常に危険だと思ってますね」

 安倍政権によって「国民を一色に染めてしまおう」という議論が強くなった、「政治の力」で文科省のスタンスも動いていった──。この元トップ官僚が語る実感は、極めて重い指摘だろう。

 そして、やはりあらためて感じるのは、安倍政権にとって前川氏のような官僚は、多分に目障りな存在であっただろうことだ。

 本サイトで既報の通り、今年1月に突如もちあがった文科省の天下りあっせん問題で事務次官だった前川氏は引責辞任したが、それ以前の昨年秋の段階から前川氏は"出会い系バー通い"を杉田和博官房副長官に厳重注意されていた。どの省庁でも慣例化している天下りあっせんを、このときの文科省の件に限って官邸はスピーディーに対処し、問題発覚の翌日には官邸幹部が前川氏の責任に言及したが、まさにこれが安倍政権にとって"異分子"だった前川氏への報復だった可能性は高いだろう。

 実際、前川氏は昨日の放送のなかでも、「(政治家への)面従腹背にも限度があってですね、もうこれ以上腹背できないっていうリミットはある」と官僚の矜持を述べる一方、「政権中枢に逆らえない雰囲気が強まってきたっていう印象はもってますね」と語った。

 政権に逆らえない空気が強まるなか、「総理のご意向」というキラーワードを突きつける内閣府に異を唱えた文科省の役人たち。少なくとも「国民全体の奉仕者」という精神が生きているように思えるが、それは前川氏にも感じられるものだ。

 たとえば、前川氏は退任した際に文科省の全職員に送ったメールのなかで〈私たちの職場にも少なからずいるであろうLGBTの当事者、セクシュアル・マイノリティの人たちへの理解と支援〉や〈様々なタイプの少数者の尊厳が重んじられ、多様性が尊重される社会〉の創造を呼びかけ、〈気は優しくて力持ち、そんな文部科学省をつくっていってください〉と締めくくっていた。

 また、「AERA」(朝日新聞出版)2017年6月5日号のインタビューのなかでも、前川氏は「(在職中は)高校無償化や大学の給付型奨学金などに積極的に取り組んだ。私は貧困問題が日本の一番の問題だと思っている」と述べている。

 安倍首相の政策とは相異なる、あまりにも真っ当な見識だ。森友学園問題では政権の言いなりになった財務省の呆れた答弁を見続けてきた後では、このような人物が事務次官というポストに就いていたこと自体が信じられないくらいだ。

 さらに、前川氏は退官後には夜間中学の先生や低所得の子どもの学習支援などのボランティア活動に参加。ボランティア団体やNPOのスタッフたちは、いかに前川氏が熱心に取り組んでいたかをテレビ番組やブログなどで証言しているが、この点もラジオでは話題に。青木氏が「なんで事務次官って言わないで、こっそりというか、普通にホームページ通じて(ボランティアに)申し込まれていたことが、いま、ネットで話題になっているみたいですけど」と話すと、前川氏はさらっとこう返答した。

「そうですか。いや、別にただのおじさんですからね。別にそんな、辞める前にどんなポストにいたかなんて関係ないですからね」

 こうした人物が、いや、こうした人物だからこそ、安倍政権の攻撃に晒される現状。加計学園問題は、内閣人事局による人事権と謀略によって官僚を掌握し、行政を骨抜きにして絶対主義を築きつつあることも明らかにしているのだ。
(編集部)

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