コロナ禍の挑戦…伝統芸能「八王子車人形」の魅力 アメリカ映像とのコラボも

 江戸時代から東京の八王子地方で受け継がれてきた伝統芸能「八王子車人形」は、ろくろ車といわれる車にまたがって行う人形劇です。1体の人形を3人で操る文楽から派生し、1体の人形を1人で操作できるようになったものが車人形です。コロナ禍でも伝統を守り育てようとする家元を取材しました。



 「八王子車人形」は国の選択無形民俗文化財や東京都無形民俗文化財に指定されています。まるで自分の意思で動いているような人形の扱いをたった1人で行うのは、一体どのような仕組みになっているのでしょうか。家元・西川古柳さんの元を訪れました。

 人形遣いはさまざまな操作を同時に行い、人形に命を吹き込んでいきます。さらに車人形の醍醐味を表現するのが足の操作です。人形遣いが足の指に操るひもを挟み、自分の足で人形の足を動かすというものです。文楽の場合には人形は宙に浮いていますが、車人形の場合は人形自体が直接舞台を踏み、力強い演技やリズミカルな動きを実現しています。

 そんな伝統芸能・八王子車人形も新型コロナによる影響は深刻です。西川さんは「通常の公演もワークショップも全てなくなってしまった」と話します。予定されていた海外での公演も軒並み中止になり「去年6、7回の海外公演を予定していたが、5本はなくなった」といいます。

 海外にもファンが多い八王子車人形がコロナ禍でできることは何か。西川さんが考えた新たなアイデアが動画配信です。西川さんは「英語の解説を入れたビデオを作り、海外の人たちにもYouTubeの中で楽しんでもらえるものも作ろうとしている」と語ります。

 一方、日本国内での公演は6月1日から緊急事態宣言が再延長となったものの、舞台などの施設は感染予防を徹底した上での営業が可能となりました。西川さんも久々の公演に臨みました。西川さんは「お客さんをきちんと入れて主催するのは1年半ぶり。『公演は全て楽しんで行う』というのが西川古柳座のモットーだが、今回は新作のプレミアム1日目公演なので、楽しむまではいかないかもしれない」と顔を引き締めました。

 今回の演目はアメリカで制作された映像や音声と八王子車人形がコラボレーションした日米共同作品です。題材は古典ではなく実在した小説家・芥川龍之介が主人公で、自身が生み出した作品の世界に入り込み、その生涯が描かれています。公演を見た観客からは「映像と組み合わせてとても素晴らしかった」「初めて見たが、あんなに細かく動かせるとはびっくりした」「やはり伝統はすごいなあと感じた。ずっと残してほしい」といった声も聞かれました。

 久々の公演を終えた西川さんは「お客さんを目の前にするのが久しぶりだったので、どうしても緊張が続いてしまった。楽しむまでいかなかったな」と語りましたが、高揚感がみなぎっていました。

 今回、映像と人形劇の新たな可能性を見いだした八王子車人形の挑戦は、これからも続きます。

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