声と手で歌う「ホワイトハンドコーラス」 「第九」の初舞台へ

 今から251年前の12月16日はベートーベンが誕生した日といわれています。年末になると耳にする機会が増えるのが、ベートーベンが作曲した交響曲第9番、通称「第九」です。TOKYO MX「news TOKYO FLAG」は、声だけでなく手を使って表現する子どもたちの「第九」を取材しました。



 東京芸術劇場(東京・豊島区)に響き渡るのは、白い手袋をはめて全身で表現する子どもたちによる「第九」です。演奏するのは、障害の有無にかかわらず子どもたちが歌を楽しむ合唱隊「ホワイトハンドコーラスNIPPON」です。聴覚に障害のある子どもたちは手話をベースにしたパフォーマンスで、そして視覚に障害のある子どもたちは声で音を伝えます。

 ホワイトハンドコーラスは1995年に南米・ベネズエラで音楽教育の一環として生まれました。日本では2017年度から合唱隊を運営する団体と東京芸術劇場が共同で主催し、週に1回活動しています。力強い声で歌の指導を行うのはベネズエラ生まれのソプラノ歌手、コロンえりかさんです。芸術監督を務めるコロンさんは「耳の聞こえない方々と一緒に音楽を楽しむ方法はないのかという素朴な疑問から、ろう学校に研修に行ったり手話を習い始めたりした」と話します。そんな中でコロンさんが出合ったのがホワイトハンドコーラスでした。コロンさんは「こんなに美しい音楽の形があっただろうかと思った。ろう者は白い手袋をして歌を表現するので、いわゆる音楽の音、楽器や人間の声という音はない。でも、ろう者独特の顔の表情やボディーランゲージで音楽の幅がものすごく広がった気がした」と衝撃的な出合いを振り返ります。

 活動から4年たった2021年、「ホワイトハンドコーラスNIPPON」は世田谷ジュニア合唱団と共に新国立劇場で行われたオペラ「SuperAngelsスーパーエンジェル」の舞台に立ちました。「AIと人間の共存」をテーマにしたこのオペラで、コーラス隊は多様性と共生のメッセージを発信しました。そして、12月21日に行われるコンサートで初めて「第九」を披露することになりました。ベートーベンが聴力がほとんどなく孤独な中で作曲した「第九」を、聞こえない人たちの言葉で表現できるのは歴史的なことだとコロンさんはいいます。子どもたちは手話をベースにしたパフォーマンス「手歌」で歌詞の世界観を音楽に合わせて体で表現します。コロンさんは「手歌」を作る時、ベートーベンが第九の歌に込めた世界観をどうやったら表現できるのかを子どもたちと話し合い、子どもたちの想像力を大切にすることを意識しているそうです。そして「ホワイトハンドコーラスNIPPON」の活動を通して、子どもたちの視野も広がったようです。

 「ホワイトハンドコーラスNIPPON」は東京芸術劇場で12月21日に開催される「バッハ・コレギウム・ジャパン クリスマス・スペシャル・コンサート」に特別出演し「第九」を披露する予定です。

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