黒川紀章さんの傑作・カプセルタワー解体開始 “壊されても生き続ける”ビルの魅力

 建築家・黒川紀章さんの代表作「中銀カプセルタワービル」の解体が始まりました。世界的にも評価されたこの建物には一体どんな魅力があったのでしょうか。そして、なぜ解体されることになったのでしょうか。



 丸い窓、そして積み木を積み上げたような独特な外観が特徴の「中銀カプセルタワービル」(東京・中央区銀座)の解体工事が4月12日から始まりました。解体開始を聞き付け、ビル周辺には最後の姿を写真に収めようと多くの人が訪れていました。訪れた人からは「いつも高速道路からビルを見ていて、これが壊れちゃうのかと思うと感慨深くて見に来た」(50代女性)、「きょうはこの姿を写真に残したいと思って来た。黒川さんが設計した由緒ある建物だと思っている」(64歳男性)など、解体を惜しむ声が聞かれました。

 ここまで人を引き付けるこのビルの魅力はどこにあるのでしょうか。2014年からこのビルの保存を目指してきた「保存・再生プロジェクト」の前田達之代表は「メタボリズム思想にのっとった建築の代表作ということで、このビルが国内外で人気を得てきたのだと思う」と話します。メタボリズムはこのビルを設計した建築家・黒川紀章さんが掲げた建築思想で、「時代や環境の変化に対して、建物自身も変化する」ことを目指しています。例えば、積み重なっているように見える箱状のカプセルは、実際は中心に立つ2つの塔に1つずつ独立して接続する構造となっていて、付け外しが可能です。カプセルタワービルは「人が増えたらカプセルを追加し、減ったら外す」「古くなったら付け替える」といったことが実現できる、希少な建物です。ただ、1972年の完成以降、実際にカプセルの付け替えが行われたことは一度もありませんでした。これについて前田さんは「カプセルを交換するには1回、住人が退去しなければいけないとか、費用も通常の修繕よりは負担がかかるので交換できず、ここまで老朽化してしまった」と語ります。

 建物の老朽化に加え、アスベストの使用なども問題となり、カプセルタワービルは解体することとなりました。ただ、この構造を生かし、新たな再生計画も進んでいます。前田さんは「外したカプセルを保存・再生プロジェクトと黒川事務所と共同で再生を行い、カプセルを美術館や博物館に展示をしていただく。さらには『泊まれるカプセル』も計画を立てている」と話します。

 ビルが解体されてもカプセルは利用され続ける──。まさに黒川紀章さんの理念が今も生き続けているようです。

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