バラバラなメンバーから奇跡のバランスが発生。V6の成功に見る理想のダイバーシティ

バラバラなメンバーから奇跡のバランスが発生。V6の成功に見る理想のダイバーシティ

KazuA / PIXTA(ピクスタ)

 25年の長きにわたり、メンバーの一人も脱退することなく、不祥事も起こすことなく、幅広いファンの支持を集めてきたV6が解散することになった。ほかのアイドルグループをみても、これだけ長く継続したグループはない。これを企業の組織に照らしてみれば、人の入れ替わりもなく、組織の再編成もなく、持続的成長をはたすことはあり得ないだろう。V6の成功は稀有な例だと思えてならない。

◆6者6様で多様なファンの支持を獲得

 私には、その理由はV6のメンバーそれぞれが、異なる「モチベーションファクター」を発揮していたことにあると思える。モチベーションファクターとは意欲が高まる要素で、6つの要素で捉える。

 チャレンジすることで意欲が高まる「目標達成」、ほかの人とは異なる自分らしさを発揮することで意欲が高まる「自律裁量」、責任をはたすことで意欲が高まる「地位権限」、協力関係を築くことで意欲が高まる「他者協調」、リスク回避の「安定保障」、バランス重視の「公私調和」だ。

 V6のメンバーは、事務所退社や復帰というチャレンジをしてきた目標達成の坂本昌行さん、野菜ソムリエなど自分らしさを発揮してきた長野博さん、俳優としても地位を築いた岡田准一さん、MCとして出演者の協力関係を図る他者協調の井ノ原快彦さん、手話をマスターした安定保障の三宅健さん、そして公私調和を図る現在の森田剛さんというように、6つのモチベーションファクターに6人がきれいに分散しているのだ。

 20年来、筆者が企業や団体の能力開発をサポートする演習プログラムを実施するなかで、日本人のモチベーションファクターはこれら6つにほぼ均等に分散することがわかっている。

 つまりV6は、ファンそれぞれが持っている6つのすべてのモチベーションファクターを持ち合わせているということだ。それこそが、幅広い層のファンの支持を獲得してきた大きな要因だ。

◆異なる人々を巻き込んでいく難しさ

 しかし、グループ内のメンバーのモチベーションファクターが分散しているということは、一般にはグループ内のチームワークの難易度が上がるということでもある。

 たとえば、目標達成の持ち主だけでメンバーを構成したら、「○○にチャレンジしよう」と誰かが言えば、ほかのメンバーもチャレンジしたいので、そうだそうだと、一を言えば十を知るという状況で話が早い。

 ところが、目標達成の人と安定保障の人とでグループを構成したら、いっぽうは「リスクを度外視してチャレンジしよう」と言い、他方は「慎重に取り組むべきだ」と反論し、なかなか話がまとまらないことがよくある。

 「価値観が異なる」「相性が合わない」ということを突き詰めていけば、モチベーションファクターの差異に行き着くのだ。

 だとすれば、同じモチベーションファクターの人だけでグループをつくればよいという考え方もあるが、日本人は6つのモチベーションファクターにわかれているので、それでは多様なファンを巻き込めない。

 私たちはチームのメンバーを選ぶときに、無意識のうちに自分と同じモチベーションファクターの人を好みやすい。しかし、それでは、チーム外のメンバーを巻き込みづらくなるのだ。

◆「バラバラ」が絶妙な「バランス」に

 では、異なるモチベーションファクターのメンバーが揃いも揃ったV6は、なぜ25年もの間、不協和音を顕在化させずに成長を続けることができたのだろうか。

 それは、6者6様だったことに理由があるように思える。これが3人対3人で2つのモチベーションファクターにわかれていたら、両者の対立が頻出していたに違いない。

 3人対2人対1人で3つのモチベーションファクターに分布していたら、その一人のモチベーションファクターが満たされないことが常態化し、その人が脱退する確率が高くなる。6人がそれぞれ別のモチベーションファクターを持ち合わせていたことは、バランスのとれた状態を継続するには、これ以上ない要件だったのだ。

 相手のモチベーションファクターは自分とは異なる可能性が高いことを認識し、相手のモチベーションファクターを見極めるスキルを持ち、相手のモチベーションファクターに合わせたコミュニケーションができることが必要だ。

 6つのモチベーションファクターに否がおうにも分散された状態が、必然的にこれらのスキルを高め、バランスのとれた状態を作り出したに違いない。メンバー全員のモチベーションファクターがどこかに偏っていたら、その必要性に迫られなかったかもしれないが、6者6様のV6は、それをせざるを得ない状況に常に直面するなかで、これらのスキルとセンスを高めたのだ。

 アイドルグループでも企業でも、組織内はモチベーションファクターを分散させる。そのうえで相手のモチベーションファクターを見極め、行動や話法を繰り出すスキルを発揮することが、持続的成長を遂げるための要件だ。

◆人それぞれ違う「やりがい」やモチベーション

 質問:人にはそれぞれモチベーションの高まりやすさの違いがあるのか

 ポジティブなことを思い出したり共感し合ったりすると、モチベーションが高まることがわかりました。ネガティブ表現をつい使ってしまいそうになるときに、意味を変えないでポジティブ表現に切り替えていけば、日常的にモチベーションを高めることが習慣化できることもわかります。

 しかし、人にはそれぞれ、モチベーションの高まりやすさの違いがあるのではないでしょうか?

 回答:違いをモチベーションファクターで分類する

 以下の2志向・6要素に、日本のビジネスパーソンのモチベーションファクターを分類することができます。牽引志向と調和志向は、肉食系と草食系、狩猟型と農耕型とも言われています。

 私は中国でもプログラムを実施していますが、狼型と羊型というと、中国人ビジネスパーソンにイメージを持ってもらいやすい概念です。名称は何であれ、人にはそれぞれ、モチベーションが高まりやすい要素があるのです。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第232回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

関連記事(外部サイト)

×