宗教だけじゃない、大学生を狙う「怪しい勧誘」。大学・高校でカルト勧誘を断る方法

宗教だけじゃない、大学生を狙う「怪しい勧誘」。大学・高校でカルト勧誘を断る方法

cba / PIXTA(ピクスタ)

 前回、主にカルト宗教の勧誘を中心に、その手口と対策法について書いた。しかし、特に大学生に関しては、宗教以外にもマルチ商法や情報商材ビジネスその他の投資や企業を謳う悪徳商法の勧誘もあれば、政治セクトの勧誘もある。前回より少し幅を広げて解説する。

◆「心が弱い人がハマる」は誤解

 宗教に関しては、「悩みがある人がハマる」「心が弱い人がハマる」という物言いをする人がいる。これは大きな誤解だ。

 カルト勧誘は確かに、学食で1人で食事をしている時や街を1人出歩いている時など(いかにも孤独そう見える場面)に声をかけられたというケースをよく聞く。しかしもともとカルトは、相手との会話を優位に進めるために1対1、または勧誘対象1人に対して2人がかりで勧誘する。悩みがある人や孤独な人ばかりを狙っているわけではない。

 悩みがなくても孤独でなくても、学内や街中で1人で行動することが全くない学生などいない。カルト勧誘に出くわす確率は、悩みがある人も強い人も弱い人も同等だ。

 悩みの有無よりも、「優しくしてくれた相手の期待を裏切りたくない」とか、「当初は宗教勧誘じゃなかったはずだけど、話を聞いてみるといいことを言っている」という考え方をしがちな真面目さの方が、なり行きでカルトに入信させられてしまいやすい要因になることもある。また、悩みというより目的意識が高い人も、カルト勧誘にフィットしやすい。というより、カルトはそういう人にフィットする偽装勧誘もしっかり用意している。

 たとえば前回登場した摂理は、就職活動のための勉強会、ボランティア、国際交流等々、意識高そうなサークルを装った勧誘も行う。浄土真宗親鸞会は、「生きる意味を考える」等と称して、「意識高い系」心をくすぐる。

 真面目さや高い目的意識を持つこと自体は立派なことだ。しかしそういう人は、カルトから見ても、やはり有望な人材なのである。

 多くのカルトは学生から多額のカネを取れるなどとは期待していない。教団の活動に奉仕したり新たな人を勧誘してくれたりする、労働力として期待されている。近年では、学業を捨ててまで教団活動に依存するより、勉強や就職活動もしっかりやって立派な社会人信者として後進を指導したり献金したりしてくれるようになることを期待しているフシもある。

 決して、「自分は大して悩みとかないから大丈夫」「弱い人間ではないから大丈夫」などとは考えないでほしい。むしろそういう人たちには、「悩みを抱えている弱い人」とはまた違った「つけ入る隙」がある。

◆政治セクトにも要注意

 大学には宗教だけではなく政治セクトもいる。一般的には過激派をイメージする人が多いかもしれないが、左翼もいれば右翼もいれば過激派も穏健派もある。大雑把に「大学内で活動する政治集団(特に組織性が強いもの)」くらいに考えておけばいいのではないだろうか。

 カルト宗教同様、政治セクトの中にも、団体の素性や目的を隠して勧誘する団体がある。

 その1つが、日本共産党の青年組織「民主青年同盟」だ。「民青」とか「みんせい」といった名前で活動し、大学の中で勧誘活動も行う。民青は公式には日本共産党を「相談相手」と称して別団体を装っているが、元民青の活動家に聞くと、大学内で学生を勧誘するためのビラ撒きに共産党職員を動員するといったこともしており、実質的に共産党の下部組織だ。

 統一教会が「原理研究会(CARP)」などの別組織を名乗って勧誘する手法とよく似ている。

 共産党は、実は「カルト問題」に対して極めて良識的な問題意識も備えていたりする。統一教会に対しては昔から批判的だったし、機関誌である『しんぶん赤旗』には、一般紙が報じないような貴重なカルト問題の記事が載ることもある。大学におけるカルトの偽装勧誘を批判していたりもする。

 ところが、たとえば東京大学では民青が、民青であることを隠した別団体を名乗って、統一教会や革マル派(共産党とは別の政治セクト)による偽装勧誘を批判し、学生に注意を呼びかける活動もしている。共産党は、偽装団体を作って他団体の偽装勧誘を批判するという、二枚舌を行っているのだ。

 日本共産党自体やその政治思想が悪いものかと言えばそうとは限らない。共産党とわかった上で賛同して民青のメンバーになる分には、構わないだろう。統一教会と違って、霊感商法等で生活を困難にするほどの金銭を巻き上げられるわけでもないだろう。

 あくまでも勧誘方法の問題だ。しかし組織の背景を誤魔化したり隠したりすることで勧誘する団体を信頼すべきかどうかは、よく考えたほうがいい。そういう不誠実な組織に関われば、当然、組織の不誠実さゆえのハラスメント等にあう可能性も高い。

◆「有能な学生」だけを狙う少数精鋭の新左翼セクト

 これと別に、「東大人権問題研究会」「Moving Beyond Hate(MBH)」(以上東京大学)、「ARIC」(一橋大学)、「SABEMOS」(都立大学)、「POSSE」(中央大学)といった名前で活動する政治セクトもある。しょっちゅう名称を変えるので、この春はまた違う団体名を名乗るかもしれないが、いずれも同じ1つの新左翼セクトのフロントサークル、もしくは事実上の関連団体だ。

 政治団体であることを隠し、人権問題・差別問題、あるいはそれ以外も含めた社会問題全般について学ぶ勉強会サークルを装って勧誘する。秘密結社めいたセクトで、正式名称は不明だ。活動家たちはセクト内では自分たちのことすら「○(マル)」という符丁で呼ぶ。

 このセクトの元活動家に話を聞くと、春の勧誘時にフロントサークルで勧誘した新入メンバーには1年近く、バックにあるセクトの存在を知らせないという。そのままサークルの勉強会で発表をさせられたり、関連のNPO法人や労働運動団体(NPO法人POSSE、その関連のユニオン等)の手伝いなどで「負荷をかけ」ながら鍛える。やがて、その負荷に耐えて従順にしっかり活動できる有望株と見なされたメンバーだけが、セクトの存在を告げられ加入を求められる。

 上で、カルトも有能な人材を求めているということを書いた。このセクトは、その点で徹底しているわけだ。

 共産党と比べると、勧誘方法以外についても問題と実害がある。元活動家はかなり前にセクトを離れた立場なので現状は不明だが、在籍当時は「毎月2〜3万円」という、学生にとってはかなり高額なカンパを払わされていたという。「親から20万円引っ張ってこい」というセクト内での指示に従い、実際に親を騙して20万円を出させセクトに上納したと語る活動家もいる。複数のフロントサークルを掛け持ちさせられ、留年したり精神の健康を害してしまったりする活動家もいたという。

 社会問題に興味を持つこと自体は、いいことだ。政治に関心を持つことも政治活動をすることも、内容によりけりとは言え、やはり悪いことではない。

 しかし、そのために大学生活を犠牲にしたり、他の学生を騙して勧誘したりすることは、もともと本当に自分がやりたかったことなのか? 他人を騙さなければ、政治を学んだり政治活動をしたりできないのか? その点は常に立ち止まって考えるようにしてほしい。

◆「親に言わないように」は要注意

 この政治セクトでは、メンバーに対して「親に言わないように」と指導する。親の干渉によってメンバーの活動が制限されたり、セクトの情報が漏れたりするのを防ぐためだろう。セクト内では「親対(親対策)」などという用語まである。

 カルト宗教でも往々にしてあることだ。特に前出の摂理はその点が露骨で、勧誘対象に対していかに自然に口止めするかという話術まで、教団内部で指導されている。

 摂理は、2006年頃から全国の大学がカルト対策に乗り出すきっかけとなった宗教団体だ(前回記事参照)。勧誘されている学生が親に話せば、親が学校に相談し摂理の勧誘が学校側に捕捉されることになるのは、目に見えている。摂理では、これを「迫害」と呼び、勧誘対象への口止めを「迫害対策」と呼んでいる。

 マルチ商法や投資・起業関係の勧誘でも、団体によっては同じことをしているケースがあるかもしれない。勧誘される側は、言われるがままになっていると、誰にも相談できず団体側からの情報や説明だけで物事を考えなければならなくなる。普通に学校生活を送りつつも、情報面では外界から隔絶されがちになる。

 これは非常に危険な状態だ。

 前回の記事で、当初の勧誘時の説明と違う実態が見えた時点で連絡を断つのが理想であることを書いた。親や友人に相談することを(たとえ優しい口調であっても)思いとどまらせようとするという点も、重要な判断基準だ。そういう団体だとわかった時点で、問答無用で関わりを断つべきだろう。

◆大学で問題化するマルチ商法

 マルチ商法の中にも、ボードゲーム会、街コン、Zoom飲み会などを通じて勧誘するケースがある。たとえばライターの雨宮純氏が PRESIDENT Online で、その類のマルチ商法についてリポートしている。(参照1,2)

 この「環境」という団体は、メンバーをシェアハウスに住まわせたり、別会社が運営する自己啓発セミナーに送り込んでやる気を出させたりという、かなり無茶をする、ほとんどカルト宗教と変わらない危険な団体だ。この団体が過去に「ワンダーランド」という別名称で活動していた頃、自己啓発セミナーを受講させられたメンバーが死亡する事故もあった。

 私もこの団体の元メンバーに話を聞いたことがあるが、「基本的には30歳前後の社会人をターゲットにしていた」という。社会人経験をある程度積み、多少の貯金があったり借金が可能だったり、転職や起業のような新展開を夢見ていたりする層を狙っているようだ。他のマルチ商法会社でも「学生への勧誘は禁止」としているケースを聞くこともあり、学生は必ずしも主要ターゲットとは言えない。

 しかし主要ターゲットではなくても、いま全国の大学でマルチ商法やそれに類する悪徳商法の被害は問題化している。都内のある私立大学の関係者は、「勧誘されたという学生からの相談の件数で言えば、カルト宗教だとハッキリわかる勧誘よりマルチ商法の方が多い」と語る。

 近年では特に、USBメモリに入れた情報商材(投資マニュアルと称するもの)を数十万円で販売するマルチ商法式の「USB商法」が大学生の間に広まり問題化している。

 団体名や目的を偽る偽装勧誘に限らず、業者名や勧誘目的であることを明示してくる場合も含めて、マルチ商法は多額の金銭被害につながる。マルチ商法やそれに類するものの勧誘だとわかった時点で、カルト宗教や政治セクトの勧誘同様、スッパリと連絡を絶って逃げるのが得策だ。

◆マルチ商法はなぜダメなのか

 マルチ商法は法律上「連鎖販売取引」と呼ばれる。販売員が、自分自身と自分の傘下の販売員の売上からマージンを受け取る仕組みのビジネスだ。傘下とする販売員の人数や売上が多いほど上位の販売員の儲けが増える仕組みであるため、販売員は商品の販売をするだけではなく新たな販売員の勧誘にもやっきになる。

 法律で規制対象となっているが、全てが禁止されているわけではない。扱う商品は化粧品でも台所用品でも健康食品でも金儲けマニュアルでも、何でもあり。業者ごとに違う。しかし商品が介在せず金銭投資だけのやりとりは「ネズミ講」と呼ばれ違法とされる。

 マルチ商法に関わる人々は、自分たちでは「マルチ商法」とは言わない。「ネットワーク・ビジネス」「MLM」(マルチ・レベル・マーケティング=つまりマルチ商法なのだが)と自称したり、あるいは販売方式はマルチ商法でも「金儲けマニュアル」的なものを売る場合は「情報商材ビジネス」と称したり、様々だ。場合によっては「マルチ商法ではない」と言い張るマルチ商法関係者もいる。

 だから勧誘された時は、これらの言葉の違いに振り回されず、上記の「マルチ商法(連鎖販売取引)」の定義に当てはまるかどうかをしっかり見定める必要がある。

 マルチ商法は、自分自身が商品を買うことから始まる。自分で商品を売るには、売るための商品を仕入れなければならない。初期投資がかかるため、学生ローンなどでの借金を進められる場合もある。一般的にマルチ商法は、マルチ商法である時点で「怪しい」と思われている。初期投資が数十万円規模である場合もあるので、そうそう売れるものではない。始めた際に支払った金額を超えて儲かるケースは稀だと思っておいた方がいい。

 販売員ピラミッド構造の中で、上位が下位の販売員の売上からマージンを取る仕組みである以上、上位に食い込まなければ儲からない。上位に行くには、自分が大して儲からないうちでも売上を増やしていくしかない。売上を増やすには、多く仕入れ、寝食を惜しんででも勧誘に精を出すしかない。

 しかし、そのマルチ商法を始めた人間やそれに近い人々は別だ。最初からピラミッドの上にいる。下っ端が勧誘に精を出し組織が広がれば広がるほど、儲かるのは彼らだ。マルチ商法では、初期段階から関わっていなければ「成功」しにくい。

 彼らは「こうやれば儲かる」「ポジティブになって頑張ればできる」といった類の精神論や自己実現的な理屈で販売員を煽る。しかしそもそも精神論でどうにかなる仕組みではないのだ。

 だから自分でマルチ商法を始めた方がいいと言っているのではない。自分が儲かるとしたら、それだけ傘下のメンバーから搾取しているということ。自分友人を誘うとしたら、どんな綺麗事を並べた所で、それはその友人を搾取するためだ。友人が自分を誘ってきたとしたら、その友人があなたから搾取するためだ。

 当たり前だが多くの友人を失う。そこまでしてもたいがいは儲からない。フリージャーナリストより儲からない。

 カルト宗教や政治セクトと違って、マルチ商法や投資・起業ビジネスは特定商取引法や消費者契約法といった消費者保護のための法律の対象だ。無条件での契約解約(クーリングオフ)できる場合もあるし、勧誘方法や契約内容が違法だったりすればクーリングオフとは別に契約を取り消すことができる場合もある。未成年である場合は、保護者の同意がない高額な契約を取り消すことができる(民法の未成年者契約の規定)。ただし民法改正により2022年以降は成人年齢が18歳となる。

 ちなみに占いやスピリチュアル、霊感商法の類も、場合によっては消費者契約法の対象だ。同法では、「霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見」として不安を煽られ契約を結んだ場合についても、契約を取り消すことができると定めている。

 契約してしまった場合は消費生活センター等に相談し、契約していなくでも大学内や大学の知人から勧誘された場合は大学の学生課等の窓口に報告しよう。宗教勧誘と同じで、第三者の介入がありうることを相手が知れば、それ以上しつこく勧誘されなくなるというメリットもある。

<取材・文/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

関連記事(外部サイト)