クラスター発生の東京入管。女性被収容者たちが手錠でつながれ移送。現場で何が起きていたか

クラスター発生の東京入管。女性被収容者たちが手錠でつながれ移送。現場で何が起きていたか

クラスター発生の東京入管。女性被収容者たちが手錠でつながれ移送。現場で何が起きていたかの画像

◆部屋に閉じ込められ、毎日新しく別の職員が入ってくる

 2月15日以降、東京入管の職員と被収容者が新型コロナウィルスに感染している。当時105人いた男性のうち半分以上が感染してしまった(3月3日時点で58名)。以下は、被収容者たちの証言をもとにしたリポートである。

 当時27名いた女性被収容者たちは検査の結果、かろうじて感染していなかった。しかしクラスターの起きている同じ建物内で、どこにも逃げ場はない。

 部屋に閉じ込められ、シャワーの時は部屋ごとに使用することができた。しかし十分な換気はなく、あまり時間を置かず次の人に交代する。これで大丈夫なのだろうかと不安が高まる。

 さらに女性ブロックには毎日、新しく別の職員が立ち入ってくる。感染の恐怖感は増すばかりだった。

 長期収容者が多い中で、ストレスで心が擦り切れんばかり。ひたすら解放されることを願って、大声を出す人もいた。弁護士や支援者たちも「陰性者は極力、解放してほしい」と入管に訴えていた。

 面会は禁止され、収容施設内では国際テレホンカードしか使えない。お金のない人は家族や支援者に連絡することもできず、支援者たちはカードのカンパを集めて郵送することしかできなかった。

 去年4月にはコロナ対策で面会禁止にはなったが、そのかわりに外から電話をかけて10分のみは話ができた。しかし本当にクラスター化してしまった今となっては、それすらもできる余裕が入管にはなさそうだ。

◆陽性者は不衛生な部屋に隔離、一部が電話問診のみ

 男性は、基礎疾患がある2名だけは入院できた。残された陽性者は不衛生な部屋に隔離され、自分で掃除をするしかなかった。除菌アルコールすらももらえない。ほとんどの人は、検査はされても治療は受けさせてもらえず、一部の人が医者に電話のみで問診を許されただけ。ほかに市販の風邪薬を渡された人もいるが、まったく何の治療も提供されない人が大部分のようだ。

 電話での問診については「顔色すら分からないのに、どうやって判断できるのか?」

と、被収容者は怒りを抑えることができない。

 陽性者が「入管のせいでコロナにさせられた」と訴えると、職員に「マスクをしっかりしないからいけない」と理不尽な返事が返ってくる。被収容者は外に出たわけでもなく、ずっと収容施設にいるだけだ。被収容者の間から感染が始まったというのは考え難い。

◆突然の仮放免却下、25人の女性たちは手錠でつながれ横浜入管に

 3月3日、女性被収容者たちが横浜入管(東京入管横浜支局)に移送されることになった。ほとんどの人が1日前に、突然告げられた。当然、怒り出す人やパニックを起こす人もいた。職員は、それをビデオカメラに収めていた。

 数人が横浜行きのすぐ前に仮放免を却下され、一人一人別室に呼び出された。そこには女性職員ではなく、大柄で地位の高そうな初老の男性職員がいた。その職員は、矢継ぎ早にどなりつけた。

「仮放免が不許可になったから、国に帰るか裁判をするしかない! 明日から横浜入管だからな!」

「なぜ、そのような喧嘩腰し言い方をするのか?」と問い返しても「終わり!!」と、恐怖感を与える高圧的な態度だったという。通常、仮放免不許可の場合は代理人の弁護士に連絡が行く。「直接告げられたのも、それが男性職員だったのも初めてだった」と、女性たちは納得できない様子だった。

 25人の女性たちは2人ずつ手錠でつながれ、いくつものバスに分かれて乗せられた。職員には「渋滞すると1時間以上かかるから、前もってトイレに行っておいたほうがいい」と告げられた。

 横浜入管では、キレイな部屋に当たった人はまだ良かった。案内された部屋によってはマットレスやドアに、誰かが吐いたような血が飛び散っていた。排泄物のような黄色っぽい塊もあった。

 自分たちで必死に掃除をした後、職員に「消毒液を部屋にまいてほしい」と頼むと拒否された。理由を聞いてもただ「ダメ」と言われるだけだった。

◆長期収容されている女性たちの悲痛な叫び

 収容期間が5年以上といちばん長いタイ国籍のヤマザキさんは、すでに60歳を過ぎている。ただでさえ体が弱っているのに、横浜に移動させられたショックで、筆者が面会した時はずっと頭を抱えていた。

 30年以上連れ添った日本人配偶者はさらに歳上で、介護が必要だ。地方在住で持病があるため、めったに面会に来ることができない。「自分が早く外に出て、1人で暮らしている夫の面倒を見なければならない」と焦りを見せていた。

 フィリピンのマリベスさんも、収容されて3年8か月になる。マリベスさんが収容されているため、日本生まれの娘さんは児童相談所の施設に預けられていて、長い間会うことができていない。

「ママ、どこにいるの? いつも待っているのにこない」と言われてしまう。「必ず迎えにいくからね」と苦しさをにじませながら答えた。

◆急遽横浜への異動を命じられた職員たちも戸惑っている

 今回、女性職員までも急遽、一斉に横浜入管へ異動となった。女性収容者が全員移送ならばそれも当然なのだが、職員たちも急なできごとに心の準備ができてなかったようだ。女性被収容者たちは、以下のように語っている。

「いきなりの異動だから、横浜でのやり方などがわからなくて困っているようだ」

「担当さんたちは20人くらいいるのに、部屋は狭くて“密”状態。何かイライラしている」

「いろいろ片付けなどの作業をしているみたいで、深夜0時くらいまで働いていた」

「さすがに私たちがさらに暴れたら困ると思っているようで、あまり不愉快な行動には出てこない。今のところ低姿勢」

 といった、「職員たちもたいへんだ」という同情の声もいくつかあった。ぜひ職員と被収容者は力を合わせて、入管のやり方に異議を唱えてほしいところだ。

 皮肉ではあるが、横浜入管では面会が可能な点と、食事がまだまともである点では東京入管よりはましなのかもしれない。

 しかし、このままではクラスターが起きた東京入管の二の舞になりかねない。今いちばん必要なことは、女性たちを早期解放することしかない。東京では、男性被収容者たちが面会もできない状態のまま、陽性者も陰性者も取り残されて苦しみ続けている。

 このことについて、入管庁・総務課広報は「マニュアルにそって適切に対応している」と回答した。去年から同じ回答をしているが、いつまで現実から目をそらし、責任を取らないでいるのだろうか。

<文・写真/織田朝日>

【織田朝日】

おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。

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