10年ぶりにパチンコ台のテレビCMの自粛が解禁。業界に何をもたらすのか

10年ぶりにパチンコ台のテレビCMの自粛が解禁。業界に何をもたらすのか

※写真はイメージです。 photo by mituki / PIXTA(ピクスタ)

◆「パチンコ台」のCM、4月より10年ぶりに復活

 この春、4月からパチンコ遊技機のテレビCMの自粛が解禁される。

 地方局ではパチンコ店のCMが流されていたり、遊技機メーカーでも企業のイメージ向上を図るCMは度々流されたりしてきたが、遊技機のCMは、実は10年の間、一度もテレビで流されていない。

 10年間のブランクを経て解禁される遊技機のテレビCMは、コロナ禍に喘ぐパチンコ業界にとって業況浮上の切掛けになるのか。業界関係者の多くは期待感を露わにするが、一方で不安を隠さない関係者もいる。

 パチンコ遊技機CM解禁の業界事情と、関わる人たちの交錯する想いをレポートする。

◆パチンコCM自粛の背景

 パチンコ遊技機メーカーで構成される日本遊技機工業組合(日工組)が、パチンコ遊技機のテレビCM自粛を終了することを決定した。決定自体は昨年の12月末であったが、満を持して4月1日よりCMが解禁される。

 メーカーが遊技機のCMを自粛していた背景には、2011年3月の東日本大震災がある。

 

 多くの犠牲者を出した未曾有の大災害の状況が連日報道されるなか、テレビのバラエティー番組はもちろん、娯楽に関わる多くのコンテンツが自粛を選択した。パチンコ業界もそれに漏れることは無かった。まして関東全域が極度の電力不足に陥り、輪番停電も実施されるなか、石原慎太郎東京都知事(当時)の発言も相まって、パチンコ店は電力を無駄に消費しているという社会的なバッシングを強く受けた。遊技機関連のCMはあれから10年、テレビで流れる事は無かった。

 その後、政府のIR(≒カジノ)設置に向けた議論が公に報道されるに連れ、ギャンブル依存症に対する世間の関心も高まり、この時もやはりパチンコ業界は社会的なバッシングを受けざるを得なかった。東日本大震災後の自粛ムードが明けても、遊技機メーカーがCM解禁に踏み出せなかったのにはこの辺りの事情も絡んでくるし、業界関係者の中にも、テレビCMの自粛は、ギャンブル等依存症対策の一環であると思い違いしている人が少なからずいる。

 東日本大震災から10年の区切りを迎え、解禁されるテレビCM。

 この10年にパチンコの遊技人口は大きく減少した。店舗数も最盛期の半分にまで減少した。震災時には電力でバッシングされ、ギャンブル依存症の元凶と言われ、コロナ禍でも標的にされたパチンコ業界にとって、今回のテレビCM解禁はどのような意味を持つのか。

◆CMが流れているほうの台がより売れることになる

 テレビCM解禁による業界側のメリットは何なのか。

 

 まずはパチンコ店の視点から。広告宣伝が風営法によって厳しく規制されているパチンコ店にとって、遊技機のテレビCMによる集客効果は捨て難い。漫画やアニメ、ドラマやアイドル等の有力コンテンツを搭載した遊技機のCMは、そのコンテンツのファンをパチンコ店に呼び込む切掛けになるかも知れない。またパチンコ店から遠ざかっているオールドスリープユーザーにまた足を向けてもらう呼び水になるかも知れない。

 何よりもテレビCMを見た人たちが、その遊技機にある種の期待感を抱いてくれることのメリットは大きい。近年、遊技客数が下降線を描くのも、客のパチンコという遊びに対する期待感の減退が大きな理由になっている。テレビCMは、もちろん視聴者にそう見えるように製作するのだろうが、当たりそう、面白そう、という意識を客の中に作ってくれるはずである。

 メーカーにとってのメリットは言わずもがな。テレビCMを利用したプロモーションは、パチンコ店に対する販促に繋がる。

 パチンコ店側もA機とB機で購入に迷ったら、テレビCMが流れているほうを選択するだろう。遊技機の販売台数は年々減少している。CMの自粛が始まった2012年には、パチンコ機だけでも年間254万台も売れていた。それが昨年2020年には95万台の販売である。コロナ禍による業況悪化を受けて、多くの遊技機メーカーが大規模なリストラも始めている。今回のテレビCMの解禁がどれだけ販売台数に影響を及ぼすのか。一番期待感を持っているのは、客ではなくメーカーかも知れない。

◆一方で台価格の異常高騰を招く可能性も

 一方で、テレビCM解禁によるデメリットに言及する業界関係者もいる。

 「テレビCMの解禁がそのまま遊技機の販売価格に影響するのでは無いかと危惧していますよ。10年前は30万を超えることがなかったパチンコの新台が、今では1台50万円を超えています。CM解禁を理由に更に価格が高騰するようなことになれば、今よりもホールの買い控えが起こりますよ」

 こう話すのは都内のパチンコ店店長。彼はまたこうも言う。

 「資金力のある大手ホールと中小零細ホールの格差がより広がるんじゃないですかね。CMによって話題になった遊技機を多台数購入できるホールにお客さんが集まれば、資金力が無くその遊技機を購入できない、購入できても少台数しか導入出来ない中小零細ホールからはお客さんがいなくなります。ホールだけじゃなく、メーカーだってそうでしょう。CMに大金を投入できるメーカーの遊技機が売れ、そんな大枚を叩けない中小メーカーの遊技機は売れない。業界全体でより一層格差は広がるし、淘汰が進むんじゃないですかね」

 満を持して解禁される、パチンコ遊技機のテレビCMが、メーカーとパチンコ店と客のそれぞれにどう影響するのか。メーカーはCMに大金を使い、それに乗せられたパチンコ店が大量にその遊技機を購入し、その費用の回収のため客の財布が痛むようでは、笑うに笑えない。いや、笑うのは大手広告代理店とテレビ局だけか。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

関連記事(外部サイト)