なぜ彼らは連続企業爆破事件を起こしたのか。東アジア反日武装戦線に迫る『狼をさがして』キム・ミレ監督インタビュー

なぜ彼らは連続企業爆破事件を起こしたのか。東アジア反日武装戦線に迫る『狼をさがして』キム・ミレ監督インタビュー

(C)Gaam Pictures

◆東アジア反日武装戦線に迫った『狼をさがして』

 日本が高度経済成長に浮かれていた1974年、東アジア反日武装戦線の“狼”、“さそり”、“大地の牙”のメンバーたちは、旧財閥系企業や大手ゼネコンを標的として、連続企業爆破事件を起こす。8人が死亡、376人が負傷した三菱重工業本社ビルの爆破を皮切りに、三井物産本社ビル、大成建設本社ビルなどに次々と爆弾を仕掛けていった。

 翌年にはメンバーが一斉に逮捕され、グループの中心にいた大道寺将司は1987年に死刑が確定。2017年に獄中で死亡した。齋藤和は逮捕直後に青酸カリで自殺。大道寺あや子は、収監中に日本赤軍に奪還され、現在も国際指名手配中だ。それ以外にも、未だ収監中の者や全国に指名手配されている者がいる。

 彼らはなぜこのような事件を起こしたのか。事件後、獄中で何を思うのか。韓国人のキム・ミレ監督が、彼らの思想や後半生に迫ったドキュメンタリー『狼をさがして』が3月27日に公開された。今回は、映画を撮り始めたきっかけなどについて、監督に話を伺った。

◆日雇い労働者だった父を追って

 キム監督は、この映画を撮り始めたきっかけについてこう語る。

「父が日雇い労働者だったことがきっかけで、“土方(ノガタ)“について調べていました。すると、植民地時代まで歴史を遡ることになり、日本の釜ヶ崎まで行ってもっと詳しく調べてみようと思ったんです。

 釜ヶ崎で取材していたところ、在日朝鮮人に出会い、彼らの生き方に共感しました。当時、建設業における日雇い労働者たちの労働運動について調べていたのですが、その中で『東アジア反日武装戦線』に出会いました。2006年には支援者たちと集まりを持つこともしました。しかし、当時の私には力量が足りないと思い、東アジア反日武装戦線を題材にすることは一度断念しています。

 しかし2014年にセウォル号沈没事故が起きて、韓国社会はとてつもない衝撃を受けました。私はこの事件の報道に接して、『果たして誰の責任なのだろうか』と考えたり、国家が持っている権力や暴力性について考えたりしました。その後、日本の日雇い労働者を描いた『ノガタ』(2005)の続編にするつもりで撮影を始めたんです」

◆良心とテロリズム

 東アジア反日武装戦線は、三菱重工本社ビルの爆破後、「日帝の侵略企業・植民者に対する攻撃である」と宣言を出す。彼らは、日本の植民地支配と戦争責任を問い直そうとしていたのだ。

 日本の戦争責任を告発するため、当初はA級戦犯刑死者を祀る記念碑などを爆破していた東アジア反日武装戦線。しかし、爆弾テロの矛先を企業に向けたことで、一般人を巻き込んでしまうことになった。

 キム監督は、「こうした一連の行動について評価するのは難しい」と話す。

「私は、東アジア反日武装戦線のメンバーたちが、行動を起こしたことで考え方が変わったのだろうか、そのことについてどのように感じていたのだろうかということに関心を持っていました。そうしたことを映画を通して見つめてみたいと思ったんです。撮影を終えてみて、そこには普遍性があると感じました。

 私自身の20代の頃を振り返ってみると、80年に起きた光州事件について怒りがありましたし、全斗煥(チョンドゥファン)政権に抵抗することは正しいと思っていました。学生運動に直接参加したわけではありませんが、共感していました。

 世の中が変わっていくという希望や夢を持っていたわけですが、そうしたなかで無謀な行為もあったと思います。たとえ正しい意図を持って行ったことであっても、誰かが犠牲になったり、誰かを傷つけたりすることがあるのではないかと年を取ってから考えるようになりました」

◆韓国での反応

 本作は、韓国では2020年に公開されている。監督によると、「『日本でこのような事件があったとは知らなかった』というのが最も大きな反応だった」という。

「韓国国内では、加害者としての日本を問うという事件や動きがあるということがあまり知られていませんでした。そのため、そもそもこの事件をどのように受け止めていいかわからないという反応が少なくありませんでした」

 映画は、日本の加害責任について責めたてるような受け止め方をされないように製作したつもりです。しかし一部には、日本に反省を促すような報道もありました」

 東アジア反日武装戦線は、日本の植民地主義を鋭く問い返そうとした。しかし監督は、日本を責めるような映画にはならないようにしたという。そして「韓国の加害性についても問い直すきっかけになればいいと思っています」と話す。

◆抑制された演出

 「狼をさがして」は、とても“地味”な映画である。「さそり」のメンバーだった宇賀神寿一や2017年に出所した浴田由紀子らの姿を淡々と映し出す。なぜこうした抑制された演出にしたのだろうか。

「この映画は、人生の生き方のジレンマ、善悪のジレンマを描こうとしています。彼らは、目指すものは間違っていなかったとしても、犠牲者を出すという間違いを犯してしまい、取り返しがつかなくなってしまいました。

 私自身、共感はしているけれども、犠牲者がいるのは事実です。過去を振り返れば、日本の戦争や虐殺があり、アジアにたくさんの被害者が生まれました。抑制をきかせて、そうした事件の背景を表現しようというのがありました。

 逮捕されたメンバーたちは、監獄で何度も何度も繰り返し事件を振り返るしかありません。そうした心の動きを表現しようと、抑制をきかせて、派手にはならないようにしました。霧をかけるといった工夫で表現しようとしたのです」

 最後にキム監督は「このような事件がなぜ起きたのか、日本社会でもっと議論が起こればいいと思います」と話した。

<取材・文/HBO編集部>

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