「コロナは風邪」論者が自らも感染。「地獄」と語る壮絶な闘病生活の果てに感じたこと

「コロナは風邪」論者が自らも感染。「地獄」と語る壮絶な闘病生活の果てに感じたこと

写真はイメージです。photo by shutterstock

 世界各地で再び感染者が増加している新型コロナウイルス。ワクチン摂取が進まないまま、自粛疲れなどで街に繰り出す人々、次々と発生する変異株など、課題は山積みだ。

◆悪寒・激痛・吐き気が急襲

 新型コロナウイルス発生から一年以上たち、全世界では約278万人(3月29日時点)が死亡するなど、脅威は治まる気配がない。

 しかし、こんな状況でもコロナの危険性を訝しがる人は少なくない。海外駐在員として欧州某国で働くKさん(男性・30代)もその一人だった。自らがコロナに感染してしまうまでは……。

 「会社の同僚など、周りにも感染者は出ていましたが、自分が感染するまでは『ちょっとしんどい風邪』ぐらいかと思っていました。『せいぜい、インフルエンザぐらいだろう』と」

 コロナは風邪……。残念ながら、Kさんに限らず、こういった主張は世界中で見られる。だが、一度自分の体調に異変が起きてからは、「風邪」どころか命の危険を感じたという。

 「突然、悪寒と節々の激痛に襲われて、『きたな』と思いました。吐き気もスゴく、すぐにコロナだとわかりました。最初に症状が出始めたのは、夜23時ごろ。その日は寝たのですが、体の怠さが取れず、朝会社にメールを打って休みをいただき、PCR検査の手配をしました」

 すでに、体調は最悪の状態。だが、これは長い苦しみの始まりに過ぎなかった。

◆6日間でまるで改善しない「地獄」

 妻と子どもの3人暮らしのKさんは、外国語での手配が難しいことから、会社の総務に検査を依頼。異国の地で、悪寒や激痛に苦しみながら、検査会場へと向かったという。

 「駐車場に仮設の検査所、コンテナのような施設が設置されているので、家族全員で車に乗って向かいました。その日は、あいにく雪が降っていて……。雪が降りしきるなか外で検査に並んで、地獄でしたね」

 翌日、結果が出るとKさんのみが陽性。こうして10日間の隔離が始まった。

 「こちらでは隔離中の家には警察官がパトロールに来るのですが、感染者が増え過ぎているせいか、私が外国人だからか、ウチには一度も来ませんでした」

 体は激痛に苦しみ、意識は朦朧……。そんな状態で隔離生活を過ごしていたKさんだが、さらなる試練が襲いかかる。

 「最初の6日間は一ミリも症状がよくなりませんでした。熱は37度ぐらいだったんですが、悪寒が取れずに、ずっと寒い。いい兆しがまったくなかったんです」

 「コロナは風邪と同じ、最初を乗り切ればなんとかなる」。そう思っていたKさんだが、現実はそう甘くなかった。

◆「頼むから呼吸だけは」と祈る日々

 部活では全国大会に出場、海外に転勤になってからも、現地の友人とスポーツを続けていたKさんは、30代半ばの働き盛り。一般人と比べれば、むしろ健康的な生活を送っていたぐらいだ。

 だが、一日、また一日と日は過ぎていくが、症状はまるで緩和せず。Kさん自らが「地獄」と語る苦しみは、永遠に続くかのようだった。

 「風邪ならば水分をとって汗をかいたら楽になるはずが、吐き気が尋常じゃなかったんです。仕事のメールも読めない。動いているものを見ると吐き気がするので、テレビやネット動画も見られず、ずっと漫談の音声だけ流していました(苦笑)」

 「コロナは風邪と同じ」が一転、「明日まで生きられるのか」という考えが脳裏をよぎるようになった。

 「何もできないけど、何もしないわけにもいかない。とにかく、呼吸が苦しくなったら、入院しようと決めていました。ただ、言葉も通じないし、そこまでいったら、正直厳しいかもと思っていましたね。会社の同僚に迷惑かかるとか、しんどすぎて考えられませんでした。生きるのに精一杯で、祈るだけでしたね。『頼むから呼吸だけは、明日の朝起きても無事にしていてくれ』と」

 幸い、食事は軽食とはいえ、しっかりとっていたKさん。しかし、日がたつにつれて回復するはずが、状況は悪化するばかりだった。

 「食事に関しては、二週間目からがキツかったです。ようやく悪寒が引いて楽になったと思ったら、その日の晩に足腰の節々や筋肉が痛すぎて寝られませんでした。不眠のまま朝起きたら、今度は腹痛。それも激痛で、丸2日水だけの絶食状態に。ただ、絶食したら、症状はかなりよくなりました。そこからは回復食で5日ぐらい慣らしましたね」

◆コロナを「侮る必要がない」

 こうして、長い長い「地獄」は終わった……はずだった。しかし、現実には長い後遺症にも苦しんでいるという。

 「仕事は一か月ほど半休をもらいました。それでも、今でも体力が戻らず、階段を上がるだけでもしんどいです。絶食の影響で胃が小さくなって、基本的に体調がよくない。体重も5キロぐらい落ちました」

 いまだに完全には回復していないKさん。かつての自分と同じく、「コロナは風邪」と信じている人たちには、「言っても多分、無理(伝わらない)」としつつも、次のようなメッセージを送る。

 「コロナは症状にめちゃくちゃ個人差があります。深刻になるかならないかは、持病の有無などもありますが、人次第なので運です。これといった対策もないので、深刻化したときには精神を強く保っていたほうがいいですよ(苦笑)。身体的にはどうしようもなく、『こうすれば症状がよくなる』という方法もないので、風邪やインフルとはまるで違います。水を沢山飲んで汗をかいたり、解熱剤を飲めばいいというわけじゃないので」

 病は気からというが、コロナの脅威を見くびっていたKさんにとって、吐き気や悪寒、節々の激痛や腹痛と同じく、メンタル面での影響も小さくなかったという。

 「海外に住んでいることもありますが、『入院したら死ぬ』と思っていたので、プレッシャーがスゴかったです。多分、『コロナは風邪』論者に言っても伝わらないと思いますが、想像していたよりもツラい。私も周りで感染した人から話を聞いていたので、そこまで酷くはないだろうと思い込んでいたんです。そのスタート地点が間違っていました。『侮る必要がない』『しんどいと思っていたほうがいい』『心構えはしておいたほうがいい』と伝えたいです」

 インフルエンザのように体温が急上昇するものの、下がれば安心し、治ってきていることを体感できるわけではない。Kさんのように、症状が緩和するどころか悪化し、命の心配をすることになるケースもあるのだ。

 「平熱になってもしんどかったですし、症状がよくなる目安がないんです。人によって、いつしんどくなるかも違うので、気が気じゃありませんでした」

 先行き不透明な東京五輪に向け、自粛解除など再び社会が動き出している日本。「コロナは風邪と同じ」と信じている人がどれだけいるかはわからないが、果たして彼らにKさんの声は届くのか。今後の感染状況に注目だ。

<取材・文/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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