なぜ、トラックはエンジンを切らずに休憩していることが多いのか?

トラックドライバーがエンジン切らずに休憩する背景に『事情』 積み荷を守るためなど

記事まとめ

  • トラックドライバーの休憩方法については「マナー違反だ」などと、厳しい声が絶えない
  • 「なぜエンジンを切らずに休憩するのか」との声もあるが、これには事情があるという
  • 積み荷を守るため切りたくても切れなかったり、夏は暑く冬は寒いことがあげられている

なぜ、トラックはエンジンを切らずに休憩していることが多いのか?

なぜ、トラックはエンジンを切らずに休憩していることが多いのか?

なぜ、トラックはエンジンを切らずに休憩していることが多いのか?の画像

トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズでは、今までに「トラックを路上に停めて休んでいる理由」や「ハンドルに足を上げて休む理由」など、トラックドライバーの「休憩方法」についていくつか紹介してきた。

 彼らの「休憩方法」に対しては、周囲から「邪魔だ」、「格好悪い」、「マナー違反だ」などといった厳しい声が絶えないが、これまでにも度々紹介してきたように、トラックはその図体の大きさゆえに兎角行き場がなく、現状やむを得ないケースが多い。

 それでもやはり、肩身の狭い思いをすることの多いトラックドライバーだが、彼らにはもう1つ、大変よく聞かされる声がある。

「どうしてエンジンを切らずに休憩するのか」だ。

 高速道路のサービスエリアやコンビニの駐車場、路上などでは、エンジンを掛けっぱなしにし、ハンドルに足を上げて休憩しているトラックドライバーをよく目撃するだろう。

 傍からすれば、こうした彼らの存在はただただ邪魔で、エンジン音もうるさく見た目も図々しい。とりわけ、常に出される排気ガスに対しては、「その休み方は理解できない」「無神経だ」とする声はより大きくなる。

 トラックドライバー自身、アイドリングをすることには罪悪感があり、できるならばエンジンは切って休憩したいと思うところではある。

 しかし、それでもトラックドライバーにはエンジンを切れない「事情」があるのだ。

中にはもちろん、「切れる状況にあるのに切らないマナー違反のトラックドライバー」もいることを前提の上で、こうした彼らの事情を紹介しよう。

1.夏は暑く冬は寒い

 他でもない。夏は大変暑く、冬は至極寒いのだ。

 その度合いは乗用車と変わらないため、トラックドライバーでなくとも想像に難くないだろうが、あの温度環境は「我慢して仮眠すればいい」という域を越える。

 地域や状況にもよるが、夏場の車内温度は70度近くにもなり、熱中症による死亡事故は毎夏ニュースで耳にするところだ。

 一般的に長距離トラックドライバーは、朝イチに荷主の元へ向かえるように、夜中に近くまで走ったあと数時間の仮眠を取ることが多い。

 その際の停車場所は先述通り、サービスエリアやコンビニの駐車場、路上などになるのだが、そこにはやはり自分と同じように時間調整をしながら休憩を取るトラックが多く集まっており、排気ガスが車内に入ったり、エンジン音や後述する冷凍機の音がうるさかったりするため、窓を開けて温度調整することも難しい。

 冬は冬で、車内は北国でなくとも白い息が出るほど寒く、手足が冷えて眠れない。

 エンジンを切っても温度調節ができる「車載用暖房機器」も販売されてはいるものの、費用が相当かかるうえ、数時間かけて温めておく必要がある割に使用時間が短かったり、外気温によってはほとんど効果がなかったりと、全面的な解決に繋がるアイテムにはなっていないのが現状だ。

2.積み荷を守るため

 アイドリング状態で休憩するもう1つの「事情」は、「後ろに積んだ荷物を守るため」である。

 以前、「要冷凍のおせちが冷蔵で配達された理由」を紹介した際にも述べたように、トラックには「冷蔵冷凍車」という種類のクルマが存在する。その名の通り、荷台に冷蔵・冷凍機能が付いた、いわゆる「クール便」だ。

 大きく分けるとこの冷蔵冷凍車には「サブエンジン式」と「直結式」という2つの種類があり、サブエンジン式のトラックは、冷凍機の音が大きいものの、クルマのエンジンを切っても荷室を冷やし続けられるのだが、一方の直結式は、トラックのエンジンの動力を使って冷凍機のコンプレッサーを駆動するため、クルマのエンジンを切ると冷蔵冷凍機能も同時に切れてしまうのだ。

 つまりこうしたトラックは、エンジンを切れば、積み荷を痛めることになるため、切りたくても切れないという状況になるのである。

 ドライバー自身も、真下にあるエンジンで常にうるさく小刻みに揺れる運転席の中で、快適に休憩が取れるはずがない。雪国の場合だと、雪がマフラーを塞ぎ一酸化炭素中毒になる恐れすらあるため、こうした意味でもやはりできればエンジンは切って休みたいところだが、エアコンなしで休憩や睡眠を取れば、必然的に眠りは浅くなり、仕事のパフォーマンスが低下することで事故を起こす可能性も高くなるのだ。

◆再配達を減らすことも、アイドリング問題解決に繋がる

 トラックドライバーがこうした「無駄なアイドリング」をし続けなければならない根本的な原因は、「トラックステーションなどの休憩所の少なさ」と、「早着(予定より早く到着すること)を受け入れない荷主第一主義の体制」にある。

 現在、トラックドライバーが心置きなく休憩できる「トラックステーション」は、全国で約30か所しかない。宿泊施設が完備されているところで絞ると、その数はさらに少なくなる。

 そんな状況下、延着(時間に遅れること)だけでなく、早着すら許されずに近場で待機させられれば、行き場のない彼らは、嫌でも路上でアイドリングをしたまま足を上げて休憩せざるを得なくなるのだ。

 一方、アイドリングで出される「排気ガス」をなんとかせねばならないのも事実で、これらの現状を受け、各物流業者側は「デジタルタコグラフ(運行記録計)」でドライバーのアイドリング時間を計測したり、アイドリングストップ機能の付いたトラックを取り入れたりと、ドライバーに不必要なアイドリングをさせないよう努めている。

 国土交通省やトラック協会も「排ガス規制の強化」や「車載用冷暖房機器の購入に対する助成金の交付」など、様々な面からトラックの排気ガス削減に取り組んでいる。

 また、こうしたトラックの排気ガス削減に関しては、我々にもできる部分がある。

「再配達」の発生を減らすことだ。

 同省によると、EC利用の増加に伴い、2017年に国内で配送された荷物の総数は42.5憶個。ドライバー1人が1日で運ぶ荷物の量は150〜200個で、全体の取扱個数のうち2割が再配達だ。

 これは年間9万人のドライバーの労働力に匹敵し、トラックの排気ガスは年間42万トン分に相当する。

 トラックドライバー自身も、できれば人の邪魔になどなりたくないし、無駄なアイドリングもしたくはない。待ち時間くらい足を伸ばせるところで休憩したいのだが、それができないのが、日本の物流の現状なのだ。

 日本の貨物輸送の約9割を担うトラック。

 彼らの存在や行為を問答無用で「邪魔だ」「野蛮だ」とするのは、あまりにも他人行儀すぎると筆者は思う。

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

関連記事(外部サイト)