なぜトラックは煙たがられるのか? 運転手経験者がその偏見に反論

なぜトラックは煙たがられるのか? 運転手経験者がその偏見に反論

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◆なぜ「トラックとトラック運転手は迷惑」と言われてしまうのか? 

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてもらいたい“トラックの裏事情”」について書いていると、毎度思い知らされることがある。トラックの肩身の狭さだ。

 同じ道路をタイヤ並べて走り、我々の“生活”を運んでくれている存在である以上、一般ドライバーが知り得ない彼らトラックドライバーの事情は、できる限り知って理解しておいてほしいところなのだが、どんなに現状を訴えても、残念ながら「言い訳するな」、「邪魔な存在であることは変わりない」、「トラックとかマジ要らない」など、問答無用に切り捨てたり、他人事のように扱ったりする声がなかなか消えない。

 

 筆者が現役だった時も、トラックの存在を煙たがる世間の声は、頻繁に耳に入ってきていた。

 正直、そんな声を聞くと、こうした考えを持つ彼らの「生活」を今まさに時間と戦いながら運んでいるトラックドライバーがいるんだと想像しては、「何のために」、「なら自分で運べよ」なる無力感や怒りを覚えたことも多くあった。

 世間がこうしてトラックを煙たがる原因には、大きく分けて3つある。

1.図体が大きい

 長いものだと12m、高さは3.8mにもなるトラック。

 それゆえ、前にいれば「信号を隠す壁」、後ろにいれば「プレッシャーを与える壁」になりやすく、また、横で並走するトラックにおいては、長さゆえに車線変更を阻止する「ディフェンダー」と化すなど、彼らはどこにいても「どけよ」な存在とされてしまいがちだ。

 しかし、前方の信号が見えなくなる現象においては、車間を十分に空けることで解消されるケースも多く、後ろのトラックの車間が狭く感じるのも、目の錯覚である場合がほとんどだ。

 特に、昨今流行っているファミリーカーや軽自動車など、トランクが出っ張っていないタイプのクルマの場合、ルームミラー越しだとクルマのリア(後部)とトラックのバンパー部分の距離は大変近く見えるのだが、実際降りて確認してみると、かなりの距離が保たれているケースが多い。

 さらに、乗用車の車線変更においては、並走するトラックドライバーが気付いていないことが大いにある。トラックには死角が多く、背の低い乗用車のウィンカーを出すタイミングや位置関係などによっては、その点灯はおろか、クルマ自体が全く見えないことも頻繁にあるのだ。

◆速度が遅いのは荷物を確実・安全・定時に届けるため

2.遅い

 高速道路上のトラックは、とりわけ「図体は大きいくせにノロノロと遅い」と言われやすいのだが、彼らは「ノロノロ走っている」のではなく、「ノロノロとしか走れない」のだ。

 たびたび紹介している通り、大型トラックにはスピードリミッターが付いている関係で、どんなにアクセルを踏んでも90km/hしか出ない。それに加え、社速が80km/hと決められているところもあるので、周囲のクルマとの実勢速度の差は40km/hにもなる。

 そんな中、3月1日に始まった高速道路一部区間での最高速度の引き上げでは、周囲が120km/hになる一方、トラックは80km/hに据え置かれた。

 これにより一般車との実勢速度の差は40-50km/hとさらに拡大。こうしたトラックを除いた最高速度引き上げの動きが全国で広がれば、トラックは今まで以上に「邪魔」扱いされる存在となる。

 これに対し、「遅いトラックは左1車線だけを走れば邪魔にならない」という意見も多数あるが、荷主や消費者に時間通り荷物を届けるべく1分1秒を争う彼らには、どうしても2車線以上を使い、他車を追い抜いたり追い抜かせたりする必要が出てくるのだ。

 かたや、一般道でトラックがゆっくり走っているのは、無駄なブレーキを踏むのを避けているがゆえ。

 前のクルマが遅いからといって車間を詰めて頻繁にブレーキを踏むことになれば、後続のクルマにも不要なブレーキを踏ませることになり、結果、渋滞を作る原因にもなることをトラックドライバーは知っているのである。

 それに何より、トラックでブレーキを頻繁に踏むことは、後ろに積んでいる荷物が崩れるリスクが生じる。荷崩れを起こして破損すれば、ドライバー側は「損害の賠償」という重い負担を背負うことになるため、彼らはゆっくり車間を詰めずに急ブレーキを踏まなくていいように走っているのである。

 トラックドライバーの役割は、「トラックの運転」ではなく、「荷物を安全・確実・定時に送り届けること」。トラックがゆっくり走っている理由においては、特に知って理解してほしいところだ。

◆「なぜポイ捨てするのか?」と聞かれることも多い……

3.ドライバーのマナー

 昨今、トラックが煙たがられる理由としてよく聞かれるのが「ドライバーのマナーの悪さ」だ。

 トラックドライバーのマナーに関する事情は、「トラックが路上に停車して休憩する理由」や、「ドライバーがハンドルに足を上げて休憩する理由」、「休憩中エンジンを切らない理由」など、過去にも多く紹介してきたが、昨今これらと同じくらい指摘が多いのが「ポイ捨て」に関するマナー違反である。

「どうしてトラックドライバーはポイ捨てするのか」、「尿の入ったペットボトルを道に捨てるな」という声は、トラックの事情を書くたびに聞かれる。それほどまでに「ゴミのポイ捨て」イメージを強く持たれてしまうっているのが現実だ。

 ただ、1つ強く言いたいのは、「トラックドライバー=マナーが悪い」というのは完全なる偏見だ。

 筆者がこれまで見てきた限り、ほとんどのトラックドライバーは、ゴミ箱へゴミを捨てている。

 それに、ポイ捨ては、なにもトラックドライバーだけの問題ではない。一般ドライバーの中にもタバコやコンビニ弁当の容器をポイ捨てする人は少なからず存在するため、トラックドライバーだからポイ捨てをするという考え方は、全く正しくない。

◆「ゴミ問題」はトラック業界が真剣に考えるべき問題

 しかし、運転を生業にするトラックドライバーは、「道路上の車内」にいる時間が長くなる手前、車内にゴミが溜まりやすく、中央分離帯などにポイ捨てする環境や条件が一般ドライバーよりあるのも事実で、実際筆者も現役時代、ポイ捨てするトラックドライバーを目撃しては、注意して一触即発になりそうになったこともある。

 時間に追われ、渋滞に長時間はまり、停まって休憩する駐車場さえなければ、ペットボトルに用を足す以外術のない状況に陥ることもあるだろうが、これを車外に放り出していいとする理由には全くならない。

 先に挙げた過去記事のように、今まで多くのトラックの事情を紹介し、彼らが致し方なくマナー違反をする事情を取り上げてきたが、ゴミに対するマナー違反はトラックドライバー1人ひとりの意識で解消できる問題だ。

 その点においては、物流・トラック業界が今一度、真剣に考えるべき問題だといえるだろう。

 我々の身の周りのほぼ全ての荷物は、トラックによって運ばれている。国の血液と呼ばれる彼らが止まれば、日本の経済は1日待たずして立ち行かなくなる。

 その存在が邪魔臭く感じるのはよく分かるが、「トラックなど要らぬ」などの言葉は、自給自足の生活をしていない以上、あまりにも無責任すぎる。互いが互いの環境を理解し合い、許容する心を持つのも道路環境改善には重要なことなのだ。

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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