ビジネス至上主義図書館へのアンチテーゼ。福島県矢祭町「子ども図書館司書」の挑戦

ビジネス至上主義図書館へのアンチテーゼ。福島県矢祭町「子ども図書館司書」の挑戦

ビジネス至上主義図書館へのアンチテーゼ。福島県矢祭町「子ども図書館司書」の挑戦の画像

「司書の仕事では、本を一さつ一さつていねいに、じょきんしたり、機械に入れたりして、こんなにすごい管理をしているんだなと初めて知りました。(略)本のかし出しでは、バーコードを読み取ることが楽しくなってしまい、連続でやってみたいなと思いました。またきかいがあったら、司書の仕事をやってみたいです。一年間お世話になりました。ありがとうございました」(「子ども司書の思い出」 矢祭小学校4年 古市さん)

◆全国で養成講座が行われている「子ども司書」、その発祥は矢祭町

「子ども司書」をご存じだろうか。図書館法に基づく司書の資格ではないものの、図書館の仕事を主体的に学ぶ試みだ。今年度は、文部科学省において「第四次 子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」のなかで、「子供の読書への関心を高める取組」として位置付けられており、「子ども司書推進プロジェクト」という全国的な組織も結成され、現在は全国200か所以上で養成講座が行われている。

 その発祥の地は、実は福島県矢祭町の「もったいない図書館」だ。矢祭町といえば、根本良一名物町長のもと、2001年の、「合併しない矢祭町宣言」を全国に先駆けて全会一致で議決した。その後も、2004年には1日3万円の議員報酬日当制などの試みが話題になった。

 そうした流れのなかで、「もったいない図書館」は2007年、全国から45万冊の本が寄贈されて設立された。「子ども読書の街」づくり推進委員会を設立、事業の取り組みとして開催されたのが「子ども司書講座」なのだ。

◆10年間で107人の「矢祭子ども司書」が誕生

「子ども司書講座」は図書の分類や配架、保管・修理、検索、貸出・返却、読み聞かせ、選書など1年間のカリキュラムを学ぶ。修了すると「子ども司書」に認定され、「読書推進リーダー」として活躍するという仕組みだ。「もったいない図書館」では「読書推進リーダー」である子供たちがカウンターで貸出登録を行うこともあるのだ。

「子ども司書講座」は2009年から開催されて今年で10年目となり、この2月には第10期の「矢祭子ども司書」講座認定式を開催した。今回は小学4年生5人が認定され、10年間の認定総数は107人にもなる。

「矢祭読書の街」応援団長のノンフィクション作家・柳田邦男氏は、「大事なことは皆さん一人ひとりが、本の種類の多さと広がりに驚き、本に対する親しみと愛着心が強くなったに違いないということです。それは、これから成長していくうえで、大きな心の財産になったと言えます」といったコメントを認定式によせた。

◆人口減少に悩む自治体の「子どもの読書離れ」への挑戦

 なお、後半ではビブリオバトル(知的書評合戦)も行われた。『感動のどうぶつ物語』『ジュニア空想科学読本2』『戦国武将大事典』『でんしゃがきた』『レントゲン』などといった本が次々と子供たちによって紹介されていく光景は、読書との距離が近い証左だろう。

 短期的ではなく長期的な教育の視点が効果を生み出しつつある。なお、筆者はビブリオバトル普及委員としてこの試みに参加している。ビブリオバトルも文部科学省において「第四次 子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」のなかで、「子供の読書への関心を高める取組」として位置づけられている。

 矢祭町は少子化の影響、人口流出の影響を受け、人口は6000人を切っている(5789人)。もったいない図書館の「子ども司書」講座は「読書離れ」への挑戦であり、ビジネス至上主義の「TSUTAYA図書館」の動きへの強烈なアンチテーゼとなるものではないだろうか。

<文/松井克明(八戸学院大学講師)>

関連記事(外部サイト)